食中毒原因ウイルスの不活化および高感度検出法に関する研究

文献情報

文献番号
201924022A
報告書区分
総括
研究課題名
食中毒原因ウイルスの不活化および高感度検出法に関する研究
課題番号
19KA1006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 亮介(国立感染症研究所 ウイルス第二部 第五室)
研究分担者(所属機関)
  • 四宮 博人(愛媛県立衛生環境研究所)
  • 片山 浩之(東京大学 大学院工学系研究科)
  • 佐々木 潤(藤田医科大学 医学部)
  • 藤井 克樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
  • 村上 耕介(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
15,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食中毒の原因と疑われる食材からのウイルス検出は、汚染ウイルス量が少ない事や、食品に含まれる夾雑物が検出を妨げる事などから困難であり、原因食品や汚染経路の特定に至らず、効果的な対策を取る為の知見も不足している。本研究では、各食中毒の原因ウイルスを迅速・確実に検出するために、食材やその洗浄水からのウイルス濃縮/精製法および高感度検出法を開発する。
研究方法
(1) E型肝炎ウイルスを含む培養上清から、抗体を用いて濃縮可能な試薬および界面活性剤の条件検討を行った。またリアルタイムPCRの反応条件の検討も合わせて行なった。
(2) アイチウイルスのリアルタイムRT-PCR法について検出感度を検討した。
(3) ロタウイルスのリアルタイムPCR法について、2種類のプライマー・プローブセットについて比較検証を行なった。
(4) ノロウイルスの不活化条件を検討するため、モデル食品として、微細量のノロウイルスを針でスパイクした汚染シジミを透明化してノロウイルスの存在部位を視覚的に解析する。
(5) 野菜表面のウイルス測定のためのふき取り材の選定を目的として、基礎的検討を行った。
(6) ウイルスの汚染が疑われる食材や環境水の収集と提供および食中毒事例や関連情報の収集と情報提供に関する地衛研の状況を把握するため、アンケートを実施した。
結果と考察
(1) E型肝炎ウイルスを含む培養上清からの抗体を用いた濃縮は、プロテインA磁気ビーズよりもパンソルビンを用いる方が濃縮効率が良く、またNP-40の添加により数十倍のウイルス濃縮が可能となった。リアルタイムPCRの反応条件の検討を行ない、数コピーのゲノムを検出した。
(2) アイチウイルス検出リアルタイムPCR既報3方法の検出感度を比較し、DNAが鋳型の場合、最も感度の良い方法で101オーダーを検出した。RNAから逆転写後リアルタイムPCRを行った場合、DNAより5倍程度かそれ以上感度が低くなる傾向がみられた。一方、高感度検出のために逆転写の条件検討の必要性が明らかとなった。
(3) ロタウイルスの検出法に関しては、Freemanらが使用しているプローブはバックグラウンドが高く検出に支障があった。ダブルクエンチャープローブによりバックグラウンドを低く抑えることに成功した。2種類のプライマー・プローブセットの増幅効率はほぼ同等であったが、T3型に関してはJothikumarらのプライマー・プローブセットでは検出できなかったため、Freemanらのプライマー・プローブセットの方が優れていると考えられた。
(4) シジミ組織の大部分が透明化されたが、中腸腺を含む腸管は内容物の存在のため透明化が不十分であった。一定期間シジミを飼育することで腸管内容物が減少することが考えられたため、1週間程度まで飼育するための情報収拾を行なった。また、市販のディスポーザブルホモジナイザー(バイオマッシャー、Nippi)が中腸腺の破砕に有効であった。
(5) ガラスウールを用い、酸洗浄後にビーフエキスを用いる方法により、多くのウイルスが効率的に回収できることが分かった。今後は、野菜表面のウイルス量と、それを洗浄した場合の水中に含まれるウイルスの比率を得るため、測定方法の最適化を引き続き行う。
(6) ウイルスの汚染が疑われる食材や環境水の収集と提供および食中毒事例や関連情報の収集と情報提供に関する情報が得られた。これを基に、食中毒に関する検体や情報の収集の促進が見込まれる。
結論
(1) E型肝炎ウイルスの抗体を用いた濃縮条件を決定した。十分な感度のリアルタイムPCRの反応条件を確認した。
(2) 既報と同程度で高感度にアイチウイルスcDNAを検出することができた。
(3) ロタウイルスのリアルタイムPCRによる検出法としては、Freemanらが設計したプライマー・プローブセットを用いるのが適当であると考えられた。
(4) 二枚貝の透明化は行われたことがなかったが、今回おおよその効果が認められた。
(5) 水中のMS2測定にはガラスウールに吸着させ、硫酸による酸洗浄の後に3%ビーフエキスによって2分の誘出を行う方法が適しているとわかった。また、幅広いウイルス濃度を反映できることが示された。
(6) 当分担班は、食材・食品や環境水の収集と提供及び食中毒事例に関する情報の収集と提供に関する地衛研の現状を把握するための調査を行った。今後の食中毒原因ウイルスの感染制御に向け、地衛研からの貢献において有益な基盤を提供するものと期待される。

公開日・更新日

公開日
2021-10-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924022Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,600,000円
(2)補助金確定額
15,600,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 13,743,818円
人件費・謝金 612,782円
旅費 602,136円
その他 41,264円
間接経費 600,000円
合計 15,600,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-10-13
更新日
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