日本国内流通食品に検出される新興カビ毒の安全性確保に関する研究

文献情報

文献番号
201924020A
報告書区分
総括
研究課題名
日本国内流通食品に検出される新興カビ毒の安全性確保に関する研究
課題番号
19KA1004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
吉成 知也(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部第四室)
研究分担者(所属機関)
  • 小西 良子(東京農業大学 応用生物科学部 栄養科学科)
  • 渋谷 淳(国立大学法人東京農工大学大学院 農学研究院動物生命科学部門)
  • 渡辺 麻衣子(国立医薬品食品衛生研究所 衛生微生物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、タイプAトリコテセン系化合物、ステリグマトシスチン(STC)及びエンニアチン類(ENs)の3群のカビ毒を研究対象とする。T-2トキシン、HT-2トキシン及び4,15-ジアセトキシスシルペノール(4,15-DAS)の3種のタイプAトリコテセン系化合物については、2017年に公表されたJECFAの評価結果においてグループPMTDIが設定され、国際的な関心が高まっている。STCはアフラトキシンと類似構造を有する発がん性物質であり、これまでの厚生労働科学研究により、日本に流通する小麦などの主要食品で汚染が生じていることが明らかになった。ENsは新興カビ毒として近年関心が高まっており、毒性や食品における汚染実態の情報の取得の必要性がある。このような背景を踏まえ、2019年度には、①多機関共同試験により、タイプAトリコテセン系化合物3種の一斉分析法とENs 5種の一斉分析法の妥当性の評価、②ENs、STC及びタイプAトリコテセン系化合物の汚染調査の予備検討、③ステリグマトシスチンの迅速簡易測定法の開発、④毒性試験に用いるためのエンニアチンBの大量調製、⑤マウスを用いたエンニアチン複合体の毒性試験を実施した。
研究方法
カビ毒の汚染調査の研究方法について、タイプAトリコテセン系化合物は検体から4倍量の85%アセトニトリル水溶液で抽出を行い、多機能カラムで精製後、LC-MS/MSで定量した。STCも同様に4倍量の85%アセトニトリル水溶液で抽出を行い、イムノアフィニティーカラムで精製後、LC-MS/MSで定量した。ENsについては、10倍量の85%アセトニトリル水溶液で抽出を行い、C18カートリッジで精製後、LC-MS/MSで定量した。分析法の妥当性確認のための多機関共同試験は、国内の8分析機関で行った。タイプAトリコテセン系化合物については、3種のカビ毒の最終サンプル濃度が5又は50 ug/kgとなるよう調製した小麦粉を用いた。ENsについては、5種のカビ毒の最終サンプル濃度が25、100又は500 ug/kgとなるよう調製した小麦玄麦と自然汚染小麦粉2種の分析を実施した。
結果と考察
3種のタイプAトリコテセン系カビ毒について、妥当性が検証された分析法を用いて5食品目計148検体の調査を行った。その結果、3種のカビ毒の同時汚染がハト麦加工品、コーンフラワー及び小麦粉(国産)で認められた。ビューベリシンとエンニアチンA、A1、B及びB1については、妥当性が検証された分析法を用いて8食品目208検体の調査を行った。ビューベリシンはハト麦加工品、コーンフラワー、小麦粉(海外)で主に検出された。4種のエンニアチンのうち、エンニアチンBの汚染レベルがいずれの検体においても最も高く、ライ麦粉と小麦粉(国産)で主に検出された。STCについては、米と小麦加工品を対象に5食品目144検体の調査を行った。その結果、米と小麦粉(国産)、小麦粉(海外)、乾そば、クッキー及びパン粉からSTCが検出された。STCの分析を迅速かつ低コストで行うために、ELISAによるスクリーニング法を開発した。0.59~13.34 ng/mlの範囲のSTCにおいて良好な直線性が認められ、かつ添加回収試験の結果も良好であったことから、食品を対象とした応用の可能性が示唆された。ENsについての毒性情報を得る為、ENs混合物のマウスを用いた28日間反復経口投与毒性試験を実施した。最高用量を20 mg/kg、公比5、溶媒対照群を含む4用量群を設定し、一般状態観察、体重、摂餌量測定、病理組織学検査などを実施したが、高用量群の雌雄の摂餌量に若干の低値がみられたのみでその他の検査項目にENsの影響と考えられる変化は認められず、無毒性量を求めるに至る結果を得ることはできなかった。今後はF. avenaceum菌培養物より単離精製したエンニアチンB単体を用い、投与量等を再考し、28日間反復経口投与毒性試験の再試験を実施する。
結論
小麦中に含まれる3種のタイプAトリコテセン系化合物とENsについて、分析法の妥当性を確認するために多機関共同試験を行い、良好な結果が得られた。タイプAトリコテセン系化合物、ENsはライ麦粉と小麦粉などの麦類を中心に汚染が認められた。STCは小麦粉のみならず、クッキーなどの加工品においても汚染が認められた。簡易試験法については、米を対象としたELISA法を確立した。今後はカビ毒汚染調査で用いる検体について、LC-MS/MS法とELISA法の両方でSTCを測定し、定量値の相関を調べ、簡易試験法としての有効性を評価する必要がある。マウスを用いた毒性試験については、ヨーロッパで実施された試験で認められた変化は認めらなかった。次年度は精製したエンニアチンBをより高濃度で投与し、毒性を評価する。

公開日・更新日

公開日
2021-10-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-10-29
更新日
2021-11-26

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924020Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,000,000円
(2)補助金確定額
11,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 7,098,905円
人件費・謝金 405,640円
旅費 484,866円
その他 3,010,589円
間接経費 0円
合計 11,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-08-27
更新日
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