食品添加物の安全性確保に資する研究

文献情報

文献番号
201924017A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物の安全性確保に資する研究
課題番号
19KA1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 恭子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究分担者(所属機関)
  • 久保田 浩樹 (国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 多田 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
  • 北村 陽二(金沢大学 学際科学実験センター )
  • 建部 千絵(佐々木 千絵)(国立医薬品食品衛生研究所 食品添加物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
9,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
食品添加物の安全性確保には、適正な使用が重要であるため、1)生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究、2)香料使用量に関わる調査研究(天然香料使用量の国際比較)、3)マーケットバスケット(MB)方式による低揮発性香料の摂取量調査を行った。また、18 項目の類又は誘導体として指定されている香料(18類香料)の品質の確保に資する研究として4)香料化合物規格の国際整合化に関わる調査研究を行うとともに、食品添加物の規格試験法(一般試験法)の向上のため、5)食品添加物公定書一般試験法の改良に関する調査研究、6)赤外スペクトル(IR)測定法に関する研究並びに7)残留溶媒試験法に関する研究を行った。
研究方法
1)食品添加物製造・輸入業者を対象に、指定添加物及び既存添加物の国内流通量等を調査し、品目別一日摂取量を求めた。2)天然香料の2015年の日本と欧米の使用量調査結果を比較、考察した。3)低揮発性エステル系香料を対象にQuEChERS法をガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)と組み合わせ、MB試料を分析し、摂取量を求めた。4)FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)の香料化合物規格の検証のため、これまで未調査であった香料化合物規格の試験表成績表等の調査及び実測値調査を行い、規格に問題を持つ可能性のある品目を抽出し、問題点を整理した。5)JECFAのステビオール配糖体規格の定量法の条件を参照し、液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)と液体クロマトグラフィー紫外吸光光度検出(LC/UV)による分析結果を比較した。6)液膜法及び減衰全反射法(ATR法)により、赤外スペクトル測定を行った。7)JECFAの残留溶媒試験法及び米国食品化学物質規格集の残留溶媒試験法(オレオレジン)並びに公定書及び国際規格における成分規格各条の調査を行った。
結果と考察
1)指定添加物の摂取量調査では、前回までと同様に、許容一日摂取量(ADI)との比較において、一人一日摂取量で問題となる品目は無かった。既存添加物の製造・輸入量調査では、参考までに、製造量と輸入量の合計値を食品への使用量とみなし、人が摂取する量を計算した。2)使用量調査リスト収載品目数は日本が最も少ないこと、年間総使用量は、人口比を考慮しても米国がかなり多くの天然香料を使用していること等が明らかとなったが、日米欧の香料の定義の違いにより、単純に今回の結果の数値を比較することはできないものもあった。3)MB方式により調査した低揮発性エステル系香料のうち、JECFAでADIが設定されている香料についてADIに対する一日摂取量の割合(対ADI比)を求めたところ、最大でも0.08%と十分に低く、現状において、安全性上の特段の問題はないと考えられた。4)未調査であった香料化合物181品目の試験表成績表等調査、及びこれまでの調査でJECFA規格との整合性が判断できなかった香料化合物45品目の更なる実測値調査を行い、結果の精査を行った。5)LC/MSは、選択性が高くS/N比も良好であったが、測定値のばらつきが大きく、また、検出限界や定量下限はσ値を基にして求める方が良いものと考えられた。6)ATR法と液膜法のスペクトルは異なることから、品目毎に測定法を定める必要があると考えられた。また、異性体混合物ではいずれの測定法においても異性体含有率によりスペクトルが異なるため、その限度なども規定することが必要であると考えられた。7)国際規格や公定書で共通に使用される残留溶媒試験法としては、蒸留-ガスクロマトグラフィー水素炎イオン化検出(GC/FID)、ヘッドスペース-GC/FIDなどがあり、また、定量では、標準液による定量法、内標準を用いた定量法、標準添加法による定量法などが多く設定されていた。
結論
生産量統計調査を基にした食品添加物摂取量の推定に関わる研究、天然香料使用量の国際比較、MB方式による低揮発性香料の摂取量調査により、食品添加物の適正な使用に関わる知見が得られ、これらの結果は食品の安全の確保に資すると考えられる。香料化合物規格については、JECFA規格の確認、修正を行うことができた。食品添加物公定書一般試験法の改良に関する研究では、LC/MSとLC/UVでの精度について確認することにより、LC/MSの課題についての知見が得られた。IR測定法に関する調査研究では、確認試験にATR法を取り入れる場合は、同一条件での測定を前提とした標準品との比較を行うか、測定試料の特徴も考慮した上で、品目毎にATR法での参照スペクトルとの比較、あるいは波数規定を定めていく必要があると考えられた。残留溶媒試験法に関する研究では、一般試験法として国際規格や公定書で共通に使用されている試験法を設定することが必要であると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2020-11-09
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-09
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,900,000円
(2)補助金確定額
9,900,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,341,696円
人件費・謝金 62,400円
旅費 382,688円
その他 3,113,216円
間接経費 0円
合計 9,900,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-08-27
更新日
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