国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の衛生管理及び試験法確立のための研究

文献情報

文献番号
201924015A
報告書区分
総括
研究課題名
国際的な動向を踏まえた乳及び乳製品の衛生管理及び試験法確立のための研究
課題番号
H30-食品-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 )
  • 中山 達哉(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 )
  • 窪田 邦宏(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 )
  • 山崎 栄樹(帯広畜産大学 動物・食品検査診断センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
8,954,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
わが国の乳及び乳製品については、昭和26年に発令された「乳および乳製品の成分規格等に関する省令」(乳等省令)に基づき、細菌数と大腸菌群が微生物規格に設定されているが、EU等では牛乳の製造工程管理をHACCPで行うと共に、腸内細菌科菌群を衛生指標として製品等の検査が実施されている。本研究では、乳および乳製品の微生物規格及び衛生管理の実態について、国際動向を把握すると共に、現行規格の妥当性を科学的に評価すること及び迅速試験法の妥当性の評価を行うことを目的とし、令和元年度はアイスクリーム類を対象として検討した。
研究方法
諸外国における乳製品による健康被害実態、食品汚染実態、定められた微生物規格基準とそのサンプリングプラン、試験法の運用実態等に関する情報収集を行うと共に、EUにおける製造工程での衛生管理の実態について、デンマークのアイスクリーム工場等を視察し、情報を収集した。また、国内でアイスクリーム類を製造する大・中及び小規模施設の協力を得て、各製品の製造工程実態について衛生試験を通じた検討を行い把握することとした。更に、市販のアイスクリーム類127検体における細菌数、腸内細菌科菌群、大腸菌群、黄色ブドウ球菌及び大腸菌の検出状況について、公定法、ISO法並びに簡易培地を用いた検討を行った。
結果と考察
欧米諸国において市販アイスクリームの喫食に起因する食中毒報告や、回収汚染情報データベースにアイスクリームの微生物汚染に関連した情報が少なく、事例が限られていることが文献調査から確認された。現地調査により、デンマークの大規模製造施設では自社基準の設定や、施設内の日常検査と異常発生時の外部検査機関への詳細な検査依頼、行政機関による指導等も効果的に行われていることが確認された。小規模施設においては全ての検査を外部検査会社に依頼し、行政機関の定期的な監視指導により食品の安全を確保していた。検査会社ではEU規則を遵守しつつ、認証取得済みの迅速検査法を活用していた。国内の大及び中規模の製造施設各1施設における調査の結果、アイスクリーム製造段階における製造基準は適切に遵守されていた。小規模製造施設の調査から、細菌学的汚染度の異なる複数のフレーバーを小ロットで製造している実態が明らかとなり、各施設において簡易検査法を利用した迅速な日常検査導入の重要性が示唆された。簡易検査法を用いた試験の結果に試験設備条件が与える影響について検討した結果、恒温槽等を用いた精確な温度管理が難しい試験条件下においても試験条件の大まかなコントロールにより、適切な結果が得られることが明らかとなった。公定法、ISO法及び第三者認証取得済みの簡易培地を用いて、市販のアイスクリーム類127検体を対象とした衛生指標菌調査を行ったところ、供試製品検体に微生物規格違反は見られず、衛生状態は概ね良好であった。細菌数試験法間の成績比較を通じ、アイスクリーム類では簡易培地の製品によって、公定法と結果の差が見られたものがあり、また、ISO法の表面塗抹法は混釈培養法より有意に低い結果を示した。
結論
市販のアイスクリームに起因する微生物食中毒アウトブレイクの発生件数は米国でも少なく、製品回収や汚染事例も米国、EU共に多くないことが確認された。デンマークではHACCPに基づき、アイスクリーム製造工場における衛生管理が適切に行われていることが確認された。大及び中規模のアイスクリーム製造事業者での実態調査の結果、国内のアイスクリーム製造段階における製造基準は適切に遵守されている状況を確認できた。一方、製造基準や成分規格の試験項目として乳等省令に基づいた大腸菌群を糞便汚染指標とすることの適切性については、国際動向を踏まえた上で、原料、中間・最終製品中での挙動に関する知見を集積・整理することが必要と思われた。小規模アイスクリーム製造施設の調査から、小規模施設では細菌学的汚染度の異なる複数のフレーバーを小ロットで製造している実態が明らかとなり、各施設での迅速な日常検査導入の重要性が示唆された。簡易検査法を用いた試験の結果に設備条件が与える影響を検討した結果、精確な温度管理が難しい条件下においても試験条件の大まかなコントロールにより、簡易検査法を用いて適切な結果が得られることが明らかとなり、小規模製造施設の日常検査における簡易検査法の有用性が示された。公定法、ISO法及び第三者認証取得済みの簡易培地を用いて、市販のアイスクリーム類127検体を対象とした衛生指標菌調査を行ったところ、供試製品検体に微生物規格違反検体は見られず、衛生状態は概ね良好であった。アイスクリーム類では簡易培地の製品によって公定法と差が見られるものがあったことから、代替試験法については製品によって導入検証が必要であることが示された。

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,300,000円
(2)補助金確定額
9,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 6,411,339円
人件費・謝金 889,200円
旅費 1,178,991円
その他 474,470円
間接経費 346,000円
合計 9,300,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
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更新日
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