テトロドトキシンのリスク管理のための研究

文献情報

文献番号
201924011A
報告書区分
総括
研究課題名
テトロドトキシンのリスク管理のための研究
課題番号
H30-食品-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
鈴木 敏之(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 及川 寛(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター )
  • 松嶋 良次(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター )
  • 渡邊 龍一(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター )
  • 内田 肇(国立研究開発法人水産研究・教育機構 中央水産研究所 水産物応用開発研究センター )
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 毒性部)
  • 山下 まり (四津 まり)(東北大学 大学院農学研究科)
  • 此木 敬一 (東北大学 大学院農学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
16,771,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、(1)qNMRによるTTXやTTX類縁体の正確な定量法を開発し(H30)、(2)正確に定量したTTXを用いて、TTX濃度を合わせた上で、この溶解液と、マウス検定法で使用されるTTXを含むフグ粗毒原液(肝、卵巣、筋肉由来)由来の調整液との急性毒性のハザード(毒力)を、マウス毒性試験(腹腔内投与及び経口毒性)により比較し明らかにする。(R1, 2)。(3)TTX類縁体の毒性評価については、qNMRなどで正確に値付けした類縁体を用いて、ナトリウムチャンネル阻害試験などにより、TTXに対する比毒性を評価する(R1, 2)。(4)TTXを対象としたLC/MS/MS法を用いてフグ糠漬けに含まれるTTXやTTX類縁体含量を定量して、わが国のフグに係る規制の妥当性を確認する(R1, 2)。(5)以上の知見に基づき、フグ卵巣の糠漬けなど長期間塩蔵処理することにより人の健康を損なうおそれがないと認められるフグの部位を対象とした10MU/gの基準値の妥当性について検証する(R2)。
研究方法
本研究で調製した正確に定量したTTX調整液(溶媒:0.1%酢酸液)並びに、食品衛生検査指針・マウス検定法で使用されるフグ粗毒原液を用いて、両者のTTX濃度を一致させるよう調整した上で、食品衛生検査指針「マウス毒性試験」(腹腔内投与)を行い、両者のマウスユニット(MU)を求めた。
TTX類縁体の毒性評価は、各種クロマトグラフィーにより精製したTTX類縁体を本研究課題で開発したqNMRにより正確に定量した。これらのTTX類縁体を電位依存性ナトリウムチャネル(Nav)阻害試験(Neuro2A細胞を用いた比色法)並びに電位依存性ナトリウムチャネル阻害試験(電気生理実験)で測定し、阻害率を調べた。
二枚貝に対して妥当性確認のとれたUHPLC/MS/MS分析法について、フグの子糠漬け製品に対する妥当性を確認するため、フグの子糠漬け試料を用いてTTX添加回収試験を実施し、妥当性を確認した。フグの子糠漬け資料は1%酢酸溶液により抽出し、グラファイトカーボンを充填した固相抽出カートリッジにより前処理を行った。毒性等価係数(TEF)は、過去に得られたTTX類縁体のマウス比毒性値に基づいて、TTXを1として暫定的に設定した。なお、マウス比毒性値のない類縁体については類似する構造から外挿した。
結果と考察
正確に定量したTTX標準液と濃度を一致させたコモンフグ抽出物は、TTX標準液と比較し、マウス腹腔内毒性において、82%の毒力であることが明らかとなり、コモンフグマトリクスの影響は比較的少ないことが推察された。
11-oxoTTX、4-epiTTX、11-norTTX-6(S)-olをフグやイモリ、および化学反応生成物から高度に精製し、活性測定に十分な純度の類縁体を調製した。定量NMRにより濃度を定量したTTX類縁体を用いて、電位依存性ナトリウムチャンネル阻害活性を評価するため、マウス神経芽細胞腫Neuro 2Aを用いた比色法と、同細胞を用いたホールセルパッチクランプ法での評価について検討した。
国内の6つの異なる業者により製造されたフグの子糠漬け試料を購入し、UHPLC/MS/MS法によりTTX含量・毒力を調べ、毒性等価係数(TEF)から毒力を換算した。その結果、いずれの製品も換算した毒力は国内で無毒と見なされる10MU/g以下であることを確認した。一方、国内で無毒と見なされる10 MU/g 以下の毒力に対し、EFSAでは二枚貝に含まれるTTXの基準値を44 µg TTX eq./kg tissue (400 g 消費した場合のヒトに対して可逆的な効果を生じない濃度として)と定めている。これをフグの子糠漬け製品に適用した場合、最も少ないTTX含量を示した製品でも流通できないことも明らかになった。フグの子糠漬け製品は塩蔵・嗜好品であり、一回に食する量は二枚貝と比べて非常に少ないことから、EFSAの基準値をフグの子糠漬け製品にそのまま適用するのは妥当ではないと思われる。
結論
フグの子糠漬け製品は、いずれの製品もLC/MS/MSによる定量により、毒力は国内で無毒と見なされる10MU/g以下であることを確認した。

公開日・更新日

公開日
2020-07-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-07-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201924011Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
20,000,000円
(2)補助金確定額
20,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 11,713,065円
人件費・謝金 4,078,512円
旅費 857,642円
その他 121,781円
間接経費 3,229,000円
合計 20,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2020-07-03
更新日
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