香料等の遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の開発と、その標準的安全性評価法の確立に関する研究

文献情報

文献番号
201924009A
報告書区分
総括
研究課題名
香料等の遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験法の開発と、その標準的安全性評価法の確立に関する研究
課題番号
H30-食品-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 石井 雄二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 高須 伸二(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター病理部)
  • 安井 学(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター変異遺伝部)
  • 増村 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター変異遺伝部)
  • 今井 俊夫(国立がん研究センター・研究所)
  • 落合 雅子(国立がん研究センター・研究所)
  • 戸塚 ゆ加里(国立がん研究センター・研究所)
  • 三好 規之(静岡県立大学・食品栄養科学部)
  • 筆宝 義隆(千葉県がんセンター・研究所)
  • 平田 暁大(岐阜大学・研究推進・社会連携機構)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
27,672,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
I.香料化学物質の安全性をin silico、in vitro、in vivoで階層的に評価する評価系を構築する。QSAR(in silico)、Ames試験、TK6試験(in vitro)、一般毒性・遺伝毒性・発がん性短期包括試験法(in vivo)を階層的に組み合わせることにより遺伝毒性及び発がん性を包括的に評価する。遺伝毒性が疑われる香料についてin vivo試験(一般毒性・遺伝毒性・発がん性短期包括試験)や肝臓または腎臓を標的とする遺伝毒性・発がん性中期包括試験による評価を行う。II.マウスオルガノイド系を用いる遺伝毒性・発がん性短中期試験法の確立を目指す。胃由来のオルガノイドに対する化学物質の反応性解析法の確立を目的とした技術基盤を構築する。
研究方法
I. QSAR予測が困難と考えられるフラン類、チオエーテル類、チオール類についてAmes試験を実施した。Ames試験結果がQSAR結果と異なる化合物についてヒト培養細胞を用いたチミジンキナーゼ遺伝子(TK)変異試験を実施した。アクリルアミドを投与したgpt deltaマウス組織の突然変異体頻度を測定した。レポーター遺伝子の回収効率を高めた新規gpt deltaラットの評価を行った。gpt deltaラットを用いたacetamideの包括的評価を実施した。3-acetyl-2,5-dimethylfuranの遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験を実施するため用量設定試験を実施した。
II. 遺伝毒性についてはgpt deltaマウス由来の肺オルガノイドに対し、低濃度・高濃度のアクリルアミド(AA)で処置した。発がん性についてはrasH2とnon-Tgマウス由来の肺および肝臓(胆管)からオルガノイドを調製し、メタンスルホン酸エチル(EMS)、AAおよびジエチルニトロソアミン(DEN)、陰性対照として安息香酸ナトリウム(SB)で処置し、ヌードマウス皮下に移植して評価した。胃については、Pik3ca活性化変異/Trp53欠失、Apc欠失/Trp53欠失などの影響を解析した。
結果と考察
I.新規のAmes試験結果を取り込んだ香料Ames試験データベースを作成した。TK変異試験は、精度が良く信頼性の高い試験であることが分かった。AA投与マウスの肝臓において遺伝子突然変異頻度は高用量域で頭打ちの用量反応性を示した。新規gpt deltaラットは既存の系統と比較して数倍高いレポーター遺伝子回収効率を示した。acetamideの包括的評価において無毒性量は0.625%(394 mg/kg体重/日に相当)と考えられた。遺伝毒性評価の結果、acetamideのラット肝発がんにおける突然変異誘発性の関与は乏しいと考えられた。3-acetyl-2,5-dimethylfuranについては用量設定試験を実施し、本試験の最高用量を300 mg/kg/dayに設定した。
II. マウスオルガノイド系を用いる発がん性試験法としての条件設定に関してマウス系統差があることが示された。ヌードマウスに移植する前のオルガノイドの形態変化をエンドポイントとした発がん性評価の可能性を示した。引続き、従来の動物モデルでは検出が難しいとされる胃発がんなどを含めて遺伝毒性・発がん性が検出可能な短中期試験法としての検討を継続する。
結論
I. QSARによる予測が困難であったフラン類、チオエーテル類、チオール類についてAmes試験を実施し、新規香料エームス試験データベースを完成させた。Ames試験結果がQSAR結果と異なる3物質についてTK変異試験を実施した。AAを投与したgpt deltaマウス肝臓で突然変異体頻度が有意に増加したが用量依存性は明確でなかった。レポーター遺伝子の回収効率が高い新規gpt deltaラット系統の評価を実施した。F344 gpt deltaラットにacetamideを13週間混餌投与した結果、無毒性量は0.625%(394 mg/kg体重/日に相当)であった。acetamideの肝発がんに突然変異誘発性の関与は乏しいことが示唆された。3-acetyl-2,5-dimethylfuranの遺伝毒性・発がん性短・中期包括的試験を実施するための本試験の最高用量を設定した。
II. オルガノイドは常温輸送が可能なことを確認し、遺伝毒性については、陽性対照物質の濃度に対応したgpt遺伝子の変異頻度上昇傾向を認めた。発がん性についてはマウス系統差を検討し、陽性対照物質への感受性がrasH2マウス由来オルガノイドに比しTrp53 ヘテロノックアウトマウスあるいはLSL-KrasG12Dマウス由来オルガノイドで高いことが示された。胃発がんについては、Pik3ca活性化変異とTrp53欠失の組合せによるオルガノイドの造腫瘍性を確認した。

公開日・更新日

公開日
2020-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

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倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-06-10
更新日
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収支報告書

文献番号
201924009Z