食品微生物試験法の国際調和に関する研究

文献情報

文献番号
201924005A
報告書区分
総括
研究課題名
食品微生物試験法の国際調和に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 五十君 静信(東京農業大学  応用生物科学部)
  • 松岡 英明(東京農工大学大学院 工学研究院)
  • 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部 )
  • 倉園 久生(徳島大学 産学官連携センター)
  • 泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,985,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者倉園久生博士については、令和元年9月末日に帯広畜産大学を転出し、同年10月より徳島大学に着任した。

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、“食品からの微生物標準試験法検討委員会”を活動の軸に置きつつ、国内の食品微生物試験法を国際調和の取れた形へと導くための科学的根拠を創出することを目的として、食品微生物試験法の国際調和に向けて、(1)衛生指標菌試験法に関する研究、(2)食品微生物試験法の国際動向及び妥当性確認に関する研究、(3)ボツリヌス試験法に関する研究、(4)遺伝子検査法に関する研究、の4つに区分し、それぞれの分担研究項目に係る知見の収集にあたった。
研究方法
1)衛生指標菌試験法に関する研究:作業部会を開催し腸内細菌科菌群、リステリアの試験法の改訂、カンピロバクター定量試験法の作成、試験法表記規則の作成等について検討した。
2)食品微生物試験法の国際動向及び妥当性評価に関する研究:イタリア国ミラノ市で開催されたISO/TC34/SC9年次総会に参加し、国際動向に関する情報収集と現在策定中のISO試験法の議論に積極的に加わった。CEN/TC275/WG6年次会議への参画を通じ、妥当性確認のためのISO16140:2016で修正すべき点を指摘した。また生乳受入れ時の総菌数試験法で用いる染色液の妥当性を統計学的に検討した。
3)ボツリヌス菌試験法に関する研究:作業部会での議論及び実験室内評価を通じ、コラボスタディに向けたプロトコール原案の作成及びST2案修正を行った。
4)遺伝子検査法に関する研究:PCR法を食品微生物試験法に採用する際の留意点を作業部会活動として取り纏め、検討委員会での審議を経て、作成を完了させた。
結果と考察
1)衛生指標菌試験法に関する研究:通知法の基礎として用いられたNIHSJ法(腸内細菌科菌群試験法、リステリア試験法)について、国際整合性及び科学的妥当性を踏まえた検討を行い、結果判定までの時間を短縮する試験法として改訂を行った。また、食肉・食鳥肉由来食中毒起因菌として制御が求められているカンピロバクターの定量試験法の作成を開始し、本年度中にST2に至った。次年度以降、コラボスタディを通じた妥当性確認を行う予定である。このほか、NIHSJ法文書の表示に関する規定を新たに設定し、試験法間の記述的整合を通じた利用者の利便性向上を図った。
2)国際動向及び妥当性確認に関する研究では、2019年7月に開催されたISO/TC34/SC9総会に参加し、関連情報について収集すると共に意見交換を行った。我が国が対応すべき試験法及び関連項目が抽出されたほか、妥当性確認に関する作業部会への積極的関与を通じ、ISO 16140ガイドラインにおいて修正すべき事項を提言し承諾された。また、生乳受入れ時の直接鏡検法で用いられるニューマン染色液が規制強化により代替染色液が求められる状況を鑑み、国際的なガイドラインでも示されるβ-ETIを指標とした統計解析を行い、ブロードハースト・パーレイ改良染色液(BPV2)の代替染色液としての妥当性を示すことができた。
3)ボツリヌス試験法に関する研究では、ボツリヌス試験法作業部会を開催し、同試験法ST2案及びコラボスタディ実施計画案について、法的規制の大きな当該病原体等の性質を踏まえた修正を行った。
4)遺伝子検査法に関する研究では、微生物性状の多様化により、遺伝子検査法を微生物試験法に積極的に採用する近年の動向を踏まえ、食品微生物試験にPCR法を取り入れる際の留意点を取り纏め、技術文書として作成した。
結論
食品衛生法の一部を改正する法律の施行を間近に控える中、また食品の輸出拡大が求められる中にあっては、食品安全にかかわる微生物試験法の国際調和は必要不可欠な課題である。本研究では国際標準的な試験法を作成するISOの動向及びこれへの参画を通じ、我が国の食品微生物試験法作成の在り方を国際調和させるべく検討を進めた。多くの結果は実行可能性に富み、国際調和を加速化させる上で重要な知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201924005B
報告書区分
総合
研究課題名
食品微生物試験法の国際調和に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 五十君 静信(東京農業大学 応用生物科学部)
  • 松岡 英明(東京農工大学大学院 工学研究院)
  • 岡田 由美子(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
  • 倉園 久生(帯広畜産大学 グローバルアグロメディシン研究センター(令和元年9月1日以降、徳島大学 研究支援・産官学連携センター))
  • 泉谷 秀昌(国立感染症研究所 細菌第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 倉園久生 帯広畜産大学(平成29年4月1日~令和元年8月31日)→徳島大学(令和元年9月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、“食品からの微生物標準試験法検討委員会”を活動の軸に置きつつ、国内の食品微生物試験法を国際調和の取れた形へと導くための科学的根拠を創出することを目的として、食品微生物試験法の国際調和に向けて、(1)衛生指標菌試験法に関する研究、(2)食品微生物試験法の国際動向及び妥当性確認に関する研究、(3)ボツリヌス試験法に関する研究、(4)遺伝子検査法に関する研究、の4つに区分し、それぞれの分担研究項目に係る知見の収集にあたった。
研究方法
食品からの微生物標準検討委員会(以下、委員会)に、衛生指標菌作業部会、バリデーション作業部会、ボツリヌス試験法作業部会、遺伝子検査法作業部会、カンピロバクター試験法作業部会を設置し、各作業部会で原案作成を行い、委員会で討議し、必要に応じ、提言等を行いつつ、各種試験法の作成或いは改訂について検討を進めた。また、国際動向及び妥当性評価に関する情報収集にあたっては、ISO/TC34/C9及びSC9下に設置されたWG2/3に参画し、対応を行った。平成29年度には国内では初めてISO/TC34/SC9総会を日本で開催することとなり、五十君教授を委員長とする国内委員会が対応を行った。
結果と考察
(1)衛生指標菌試験法に関する研究では、衛生指標菌作業部会を新たに設置し、低温殺菌牛乳製品における微生物汚染実態に関する調査を行った上で、乳・乳製品の製造工程管理や成分規格に関する提言を取り纏めた。これを受け、「食品からの微生物標準試験法検討委員会」では、腸内細菌科菌群定性試験法NIHSJ-15を改訂し、国際調和を図ると共に、同定量試験法を作成した。また、サルモネラ試験法、カンピロバクター定性試験法、並びにリステリア定性・定量試験法についても国際調和のために改訂を行った。更に、カンピロバクター定量試験法の作成を開始しST2に至った。(2)国際動向及び妥当性確認に関する研究では、2017年に我が国で初めてISO/TC34/SC9総会を主催したほか、その後もISO/TC34/ SC9総会に発言権を有するPメンバーとして参画し、国際動向調査及び意見発信等を行った。微生物試験法に関する用語集を作成すると共に、バリデーション作業部会を多数開催し、各試験法の妥当性確認に関する技術的助言を行った。その中では乳等省令で規定される生乳中の総菌数試験法(ブリード法)に関する成績をβ-ETiを指標として用いることで科学的に評価し、これまでのニューマン染色液以外の代替染色液を利用することも妥当であるとの結論に至った。(3)ボツリヌス試験法に関する研究では、ボツリヌス試験法作業部会を新たに設置し、試験法原案の作成を通じ、ST2に至った。とりわけ、予備検討を進める中で、特定2種病原体に位置づけられる当該微生物試験法のコラボスタディを行う際のさきがけ的な方法論の確立を行うことができた。(4)遺伝子検査法に関する研究では、近年遺伝子検査法の発展や微生物性状の多様化により、遺伝子検査法を微生物試験法に取り入れる動きがある状況を踏まえ、ISO及びBAM試験法において採用される遺伝子検査法に関する情報を整理した上で、遺伝子検査法作業部会を組織化し、食品からの微生物試験法にPCR法を採用する上で求められる事項の整理を行い、ガイドライン案として食品からの微生物試験法検討委員会において概ね承認された。
結論
以上のように、平成29年度から令和元年度にかけて、食品微生物試験法の国際調和に向けた基盤整備並びに試験法改訂等の作業を進めることができた。今後、国際調和のための検討を更に進め、継続的に応用展開を図ることが微生物リスクを踏まえた食品の安全性確保に向けた試験法の整備に必要な事項と解される。

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-13
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201924005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
ISO/TC34/SC9への参画を通じた国際動向の把握を行った上で、「食品からの微生物標準試験法検討委員会」を活動母体として、令和元年度はリステリア・モノサイトゲネス及び腸内細菌科菌群試験法(定性及び定量)について、より実効性の高い改訂版を作成した。また、カンピロバクター定量試験法及びボツリヌス毒素遺伝子試験法について、共にステージ2へ進めた。
臨床的観点からの成果
ボツリヌス症は公衆衛生上、極めて高い危害性を有するが、食品を介した同症の発生を未然に防止するため、或いは二次被害の防止に努めるため、食品におけるボツリヌス検査を迅速に行えるボツリヌス毒素遺伝子試験法の整備は有用と思われる。なお、本法ではマウスを用いずに最終結果判定を行えるため、動物愛護の観点からも有用性が高いと考えられる。
ガイドライン等の開発
最新の国際動向を把握しつつ、国内における食品微生物試験法の妥当性確認のためのガイドラインの検討を開始した。また、近年の微生物性状の多様化により、遺伝子検査法を微生物試験法に積極的に採用する動向を踏まえ、食品微生物試験にPCR法を取り入れる際の留意点を取り纏め、技術文書として作成を行った。
その他行政的観点からの成果
牛乳製造施設で生乳受入れの際に実施される直接鏡検法(総菌数試験法)で用いられるニューマン染色液が使用規制強化により代替染色液が求められる状況を鑑み、国際的なガイドラインでも示されるβ-ETIを指標とした統計解析を行い、ブロードハースト・パーレイ改良染色液の代替染色液としての妥当性を示すことができた。
その他のインパクト
国際調和を主眼においた、食品微生物標準試験法の発展は、我が国における食品安全の確保のみならず、輸出拡大にも寄与することが期待される。

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
鎌田洋一、藤田和弘、福沢栄太、佐藤信彦、佐野勇気、橘田規、高橋洋武、大城直樹、岡田由美子、五十君靜信、白藤由紀子、山﨑朗子、梶田弘子、上田成子、志賀俊人.
LC-MS/MSによる米飯およびチャーハン中のセレウス菌嘔吐毒、セレウリド試験法.
日本防菌防黴学会誌 , 48 (2) , 49-56  (2020)
原著論文2
泉谷秀昌
広域散発事例探知に向けた取り組み
日本食品微生物学会雑誌 , 36 (1) , 10-12  (2019)
原著論文3
Yahiro K, Ogura K, Terasaki Y, Satoh M, Miyagi S, Terasaki M, Yamasaki E, Moss J.
Cholix toxin, an eukaryotic elongation factor 2 ADP- ribosyltransferase, interacts with Prohibitins and induces apoptosis with mitochondrial dysfunction in human hepatocytes.
Cell Microbiol. , 21 , e13033-  (2019)

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201924005Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
15,135,000円
(2)補助金確定額
15,135,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 9,435,015円
人件費・謝金 1,039,800円
旅費 1,799,238円
その他 1,710,947円
間接経費 1,150,000円
合計 15,135,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-08-27
更新日
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