食品衛生検査を実施する試験所における品質保証システムに関する研究

文献情報

文献番号
201924004A
報告書区分
総括
研究課題名
食品衛生検査を実施する試験所における品質保証システムに関する研究
課題番号
H29-食品-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター 秦野研究所 公益事業部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
23,100,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分析値の品質保証に関する取組みの指針となる業務管理要領を改訂し、品質保証に組み込まれる要素である新たな技能試験プログラムを開発することを目的とした。
研究方法
国際整合性を踏まえた業務管理要領案の開発に関する研究では、開発した一般ガイドライン案を拡張するために、微生物分野における具体的な取り組みの例示案を開発した。地方自治体試験所へのISO/IEC 17025に準拠した業務管理導入に関する研究では、ISO/IEC 17025 導入にあたっての課題等について、さらに、地研の現状に合わせた考察を加えると共に解決策等を検討した。既存技能試験プログラムの改善及び新規技能試験プログラムの導入に関する研究では、スプレードライヤで作製したコメの重金属技能試験用試料を実行スケールで作製し、パイロットスタディを実施した。新規技能試験プログラムの開発及び統計学的評価に関する研究では、魚加工品中のヒスタミン分析技能試験及び一般生菌数試験技能試験のパイロットスタディを実施した。新規技能試験プログラム用試料の開発に関する研究では、魚加工品をマトリクスとしたヒスタミン試料の開発と一般生菌数技能試験試料の安定性と輸送条件を検討した。
結果と考察
国際整合性を踏まえた業務管理要領案の開発に関する研究では、我が国の試験所が整合すべき内部品質管理の一般を示す国際的な標準文書として、Codexガイドライン(CXG 65; Codex guidelines [Harmonized Guidelines for Internal Quality Control in Analytical Chemistry Laboratories])及びその実効文書(Pure&Appl. Chem., vol. 67, 649-666, 1995) を特定し、より具体的かつ限定的とならない内容で、内部品質管理の一般ガイドライン案を開発した。これに加え、ISO 7218等を基本として微生物分析分野における内部品質管理として実施すべき要点をまとめ、その具体例を検討した。地方自治体試験所へのISO/IEC 17025に準拠した業務管理導入に関する研究では、地方衛生研究所の現状を把握し、導入にあたっての課題や問題点をさらに考察し、解決策等の意見をまとめた。内部監査員養成に必要な研修会の内容を検討し、ISO/IEC 17025 研修機関講師の協力を得て、研修会を開催した。その実施結果を検証し、有効な研修内容を検討した。既存技能試験プログラムの改善及び新規技能試験プログラムの導入に関する研究では、スプレードライヤを用いた玄米粉の重金属技能試験用試料を技能試験実施スケール(30 kg)で作製し、パイロットスタディを実施した。いずれの機関も適正な定量値を報告した。これまでの作製法に替わる方法であるスプレードライヤで試料作製することで、簡便で安定した試料が大量に作製でき、新しい手法として有用であることが示された。一方、特定原材料検査(アレルギー物質(小麦)検査)のパイロットスタディを実施し、小麦が外部精度管理調査試料として使用可能であることが分かった。新規技能試験プログラムの開発及び統計学的評価に関する研究では、課題5で作成された魚加工品を缶詰とした均質・安定なヒスタミン試料を使用した。ヒスタミン技能試験のパイロットスタディには95か所の試験所が参加した。室間標準偏差はHorwitz式から予想される値よりも大きく、分析値の品質保証が十分ではない状態と考えられた。一般生菌数技能試験パイロットスタディは130か所の試験所が参加した。試料送付時にデータロガーを同梱し、発送から試験開始までの温度変化の影響を考察するとともに、室内での菌数測定の変動のデータを取得した。新規技能試験プログラム用試料の開発に関する研究では、魚加工品をマトリクスとしたヒスタミン技能試験用試料を開発した。さらに、食品の衛生管理の指標となる一般生菌数の技能試験試料を開発し、輸送時の温度モニタリングも含めた技能試験スキームを検討した。
結論
業務管理要領の改定案については、食品衛生法に基づく検査を実施する試験所における活動の実際も踏まえ、より具体的かつ限定的とならない内容で、内部品質管理の一般ガイドライン案を開発し、微生物分析分野における取組を追加するとともに全体を点検し、更新した。また、技能試験プログラムの開発においては、スプレードライヤで作製したコメの重金属技能試験用試料は、実行スケールの作製においても均質であり、パイロットスタディに供した。一方、新規技能試験プログラムの開発においては、魚加工品を基材としたヒスタミン及び一般生菌数試験技能試験パイロットスタディを実施し、一般細菌数試験においては、菌数の安定条件、輸送条件の知見が得られた。

公開日・更新日

公開日
2020-06-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201924004B
報告書区分
総合
研究課題名
食品衛生検査を実施する試験所における品質保証システムに関する研究
課題番号
H29-食品-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渡辺 卓穂(一般財団法人食品薬品安全センター 秦野研究所 公益事業部)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分析値の品質保証に関する取組みの指針となる業務管理要領を改訂し、品質保証に組み込まれる要素である新たな技能試験プログラムを開発することを目的とした。
研究方法
国際整合性を踏まえた業務管理要領案の開発に関する研究では、我が国の試験所による品質保証を含む取組の指針となる業務管理要領案を国際整合性を踏まえ開発すると共に、付属文書とすることを想定した内部精度管理の一般ガイドライン案を開発した。ISO/IEC 17025認定取得に向けた試験所の検討に関する研究では、ISO/IEC17025に準拠した業務管理要領案が地方自治体に導入される場合、どのような課題があるかを抽出し、その解決策等について検討した。既存技能試験プログラムの改善及び新規技能試験プログラムの導入に関する研究では、残留農薬の技能試験プログラム用試料の安定性と均質性の改善を目標に、玄米とえだまめを基材とした試料の妥当性を検討し、パイロットスタディを実施した。また、安定性と均質性の向上を期待し、スプレードライヤを用いたコメの重金属PT試料を実行スケールで作製した。新規技能試験プログラムの開発及び統計学的評価に関する研究では、実際に薬品を投与した動物から作製した試料を用いた技能試験及びオカダ酸分析、ヒスタミン分析等の技能試験のパイロットスタディを実施した。新規技能試験プログラム用試料の開発に関する研究では、均質性、安定性に加えて可能な限り自然汚染した食品を用いた技能試験用試料を開発の目的に、ホタテガイ中のオカダ酸、豚中の動物用医薬品及び魚加工品中のヒスタミン等検査用の試料開発をした。
結果と考察
国際整合性を踏まえた業務管理要領案の開発に関する研究では、我が国の試験所がその取り組みを国際的に整合させる上で基礎となすべき文書としてISO/IEC17025を特定し、ガイドライン案の本文を開発した。また、整合すべき内部品質管理の一般を示す国際的な標準文書として、Codexガイドライン及びその実行文書を特定したが、本文書は必ずしも食品分野において実行可能とは言えないため、食品衛生法に基づく検査を実施する試験所における活動の実際も踏まえ、より具体的かつ限定的とならない内容で、内部品質管理の一般ガイドライン案を開発した。ISO/IEC 17025認定取得に向けた試験所の検討に関する研究では、地方衛生研究所の現状を把握し、導入にあたっての課題や問題点をさらに考察し、解決策等の意見をまとめた。また、業務管理要領改定により必要となるマニュアル等の案を作成した。内部監査員養成に必要な研修会の内容を検討し、ISO/IEC 17025 研修機関講師の協力を得て、研修会を開催した。その実施結果を検証し、有効な研修内容を検討した。さらに、検査施設を横断した要員育成のための研修プログラムを作成した。既存技能試験プログラムの改善及び新規技能試験プログラムの導入に関する研究では、スプレードライヤを用いた玄米粉の重金属技能試験用試料を技能試験実施スケール(30 kg)で作製し、パイロットスタディを実施した。いずれの機関も適正な定量値を報告したことよりスプレードライヤを用いた試料作成方法が有用であることが示された。また、パイロットスタディから残留農薬検査用基材としてえだまめペーストが使用可能であった。新規技能試験プログラムの開発及び統計学的評価に関する研究では、ホタテガイを基材としたオカダ酸群の新規技能試験プログラムのパイロットスタディで、少数のデータからの参加者の技能を評価する方法を適用した。また、課題5で作成された魚加工品を缶詰とした均質・安定なヒスタミン試料を使用し、パイロットスタディには95か所の試験所が参加した。室間標準偏差はHorwitz式から予想される値よりも大きく、分析値の品質保証が十分ではない状態と考えられた。新規技能試験プログラム用試料の開発に関する研究では、豚に動物用医薬品を投与した試料を作製すると共に、魚加工品と基材としたヒスタミン及び一般生菌数試料の作製も行った。
結論
業務管理要領の改定案については、国際的に整合させる文書としてISO/IEC17025を基本としガイドライン案の本文を開発し、食品衛生法に基づく検査を実施する試験所における活動の実際も踏まえ、より具体的かつ限定的とならない内容で、内部品質管理の一般ガイドライン案を開発した。また、技能試験プログラムの開発においては、スプレードライヤで作製したコメの重金属PT試料は、実行スケールの作製においても均質な試料ができ、パイロットスタディにおいて有用性が実証された。一方、新規技能試験プログラムの開発においては、ホタテガイを基材としたオカダ酸群のパイロットスタディで、少数のデータからの参加者の技能を評価する方法が適用できた。

公開日・更新日

公開日
2020-06-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201924004C

成果

専門的・学術的観点からの成果
新規技能試験プログラムの導入により、より多くの検査項目の品質保証が可能となった。また、新規技能試験プログラムの開発の一部でもある試料開発の成果には、高い学術的価値が期待され、この成果から、新たな技能試験プログラムの開発ができた。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
開発した業務管理要領案はISO/IEC17025に基づく品質保証への取り組みを、各試験所が着実に実行するための指針となった。これにより、適切な分析値に基づく健康危害リスク管理がより堅実になり、輸出入国間での検査を原因とする係争の回避に直結するため、厚生労働省の施策に沿った有益な成果が期待できた。
その他のインパクト
令和4年度食品衛生検査施設信頼性確保部門責任者等研修会(厚労省)
食品衛生検査施設の適正業務管理基準(GLP)に関する検査部門研修会(群馬県健康福祉部)
令和3年度食品衛生検査施設信頼性確保部門責任者等研修会(厚労省)
JRA畜産振興事業家畜感染症における精度管理体制確立のための基盤整備事業精度管理研修会(一般財団法人生物科学安全研究所)
令和2年度業務管理研修会(食品衛生登録検査機関協会)
令和元年度業務管理研修会(食品衛生登録検査機関協会)


発表件数

原著論文(和文)
4件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
講演1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Yarita T., Otake T., Aoyagi Y., et al.
Comparison of assigned values from participants’ results, spiked concentrations of test samples, and isotope dilution mass spectrometric results in proficiency testing for pesticide residue analysis
Journal of AOAC int. , 101 (4) , 1199-1204  (2018)
原著論文2
Yoshimitsu M, Akutsu K, Kitagawa Y, et al.
Enhancement of pesticide peak response in GC-MS in the presence of multiple co-existing reference pesticides
Food Hyg. Saf. Sci. , 59 (3) , 146-150  (2018)
原著論文3
Yamazaki T, Miyake S, Sato N, et al.
Development of Enzyme-Linked Immunosorbent Assay for Analysis of Total Aflatoxins Based on Monoclonal Antibody Reactive with Aflatoxins B1, B2, G1 and G2
Food Hyg. Saf. Sci. , 59 (5) , 200-205  (2018)
原著論文4
竹林純、高坂典子、鈴木一平他
食品中の栄養成分検査の技能試験(2017-2018)
食品衛生学雑誌 , 61 (2) , 63-71  (2020)
原著論文5
千葉雄介、金井美樹、藤原茜、et al
E.coliおよび黄色ブドウ球菌定性試験法における検出下限値の推定
日本食品微生物学会雑誌 , 34  (2022)
原著論文6
T. Yarita, S. Inagaki
Characterization of diarrhetic shellfish toxins in the Mizuhopecten yessoensis (Scallop) midgut gland by high-performance liquid chromatography-tandem mass spectrometry (HPLC-MS/MS)
Analytical Letters  (2022)
原著論文7
K. Nakamura, T. Otake, N. Hanari
Quantitative determination of organophosphorus, pyrethroid, and dithiolane pesticides residues in brown rice by using supercritical fluid extraction
Journal of AOAC International  (2023)

公開日・更新日

公開日
2020-06-19
更新日
2023-08-14

収支報告書

文献番号
201924004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
30,000,000円
(2)補助金確定額
30,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,526,749円
人件費・謝金 7,800円
旅費 361,681円
その他 8,203,807円
間接経費 6,900,000円
合計 30,000,037円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2021-10-12
更新日
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