文献情報
文献番号
201924003A
報告書区分
総括
研究課題名
食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理に関する研究
課題番号
H29-食品-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
堀内 基広(北海道大学 大学院獣医学研究院)
研究分担者(所属機関)
- 新 竜一郎(宮崎大学 医学部)
- 柴田 宏昭(学校法人自治医科医大学 先端医療技術開発センター)
- 萩原 健一(国立感染症研究所 細胞生化学部)
- 飛梅 実(国立感染症研究所 感染病理部)
- 古岡 秀文(帯広畜産大学 畜産学部)
- 松浦 裕一(農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門)
- 山崎 剛士(北海道大 学大学院獣医学研究院)
- 鎌田 洋一(甲子園大学 栄養学部)
- 壁谷 英則(日本大学 生物資源科学部)
- 森田 幸雄(東京家政大学 家政学部)
- 保富 康宏(医薬基盤・健康・栄養研究所 霊長類医科学研究センター)
- 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所 食品衛生管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
32,387,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
非定型BSEおよびその他の動物プリオン病のヒトへの感染リスクに対する不安は依然払拭されていない。そこで、非定型BSEを接種したサルの解析、非定型BSE感染牛の可食部に存在するプリオンの定量化などから、ヒトへの感染リスクの推定に資する研究を進め、今後の管理措置の見直し等に必要な科学的知見を得る。我が国のと畜場・食鳥処理場へのHACCP導入義務化をふまえ、と畜・解体工程における衛生管理を総合的に評価するための採材ポイント、頻度、および手法を、検体の輸送・保管方法を含めて検討し、国内の施設でも技術・コスト面で実施可能な「と畜場・食鳥処理施設HACCPシステムの妥当性検証法プロトコール」を作成する。以上の2つの研究から、食品を介する家畜・家禽疾病のリスク管理の向上に資することを目的とする。
研究方法
・酸化鉄磁性ビーズでPrPScを濃縮する方法を利用して、非定型BSEを検出するRT-QuIC法の改良を行った。
・昨年度に続き、RT-QuICとウシプリオンタンパクを発現するTgマウスを用いるバイオアッセにより、H-およびL-BSE感染牛のプリオン体内分布の定量データーをまとめた。
・RT-QuIC法を改良して、L-BSEカニクイザルのPrPSc検出法の構築を進めた。
・H-BSEを脳内または経口接種したカニクイザルの経過観察、高次脳機能試験を実施した。
・TSE確認検査の精度検証を実施した。
・平成29、30年度の本研究の成果から改定した「と畜場・食鳥処理場HACCPシステムの妥当性検証試験令和元年度実施依頼プロトコール」の実証試験を、と畜場(牛: 8施設、豚: 12施設)並びに大規模食鳥処理場(12施設)で実施した。
・採材面積の縮小の可能性ならびに新規採材部位の検討: 25 cm2と100 cm2の切除法における一般細数及び腸内細菌科菌群数を測定した。採材部位としてウシの胸部を検討するため、本冷蔵庫搬入前に、ともばら、頸部、および胸部を5 cm x 5 cm(25 cm2)から切除法により採材した。
・実証試験の結果を参考に基準値の設定を検討した。
・昨年度に続き、RT-QuICとウシプリオンタンパクを発現するTgマウスを用いるバイオアッセにより、H-およびL-BSE感染牛のプリオン体内分布の定量データーをまとめた。
・RT-QuIC法を改良して、L-BSEカニクイザルのPrPSc検出法の構築を進めた。
・H-BSEを脳内または経口接種したカニクイザルの経過観察、高次脳機能試験を実施した。
・TSE確認検査の精度検証を実施した。
・平成29、30年度の本研究の成果から改定した「と畜場・食鳥処理場HACCPシステムの妥当性検証試験令和元年度実施依頼プロトコール」の実証試験を、と畜場(牛: 8施設、豚: 12施設)並びに大規模食鳥処理場(12施設)で実施した。
・採材面積の縮小の可能性ならびに新規採材部位の検討: 25 cm2と100 cm2の切除法における一般細数及び腸内細菌科菌群数を測定した。採材部位としてウシの胸部を検討するため、本冷蔵庫搬入前に、ともばら、頸部、および胸部を5 cm x 5 cm(25 cm2)から切除法により採材した。
・実証試験の結果を参考に基準値の設定を検討した。
結果と考察
・酸化鉄ビース存在下でRT-QuICを行うことで、横紋筋と消化管(平滑筋)では検出感度が向上したが、同法を用いても、H-およびL-BSE感染ウシの主要な骨格筋からプリオンは検出されなかった。一方、バイオアッセイにより、H-BSE感染牛の迷走神経と副腎で中枢神経系組織の1/3,000程度、最長筋、大腿四頭筋、および半腱様筋で1/20,000程度のプリオンが存在することが明らかとなった。
・H-BSEを脳内接種または経口投与したサルは共に投与後4年5ヶ月を経過したが、異常行動や神経・精神症状を呈しておらず、発症は見られなかった。L-BSEと比較してH-BSEプリオンは霊長類への伝達性が低いと考えられた。
・L-BSEを経口接種後未発症のカニクイザル由来の脳組織中から、RT-QuICによりプリオンが検出され、L-BSEが経口ルートでサルに不顕性感染することが示唆された。本知見はL-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を示す重要な知見である。
・TSE確認検査の検査精度は良好に維持されていることが確認できた。
・と畜場(牛: 8施設、豚: 12施設)並びに大規模食鳥処理場(12施設)で実施した実証試験の結果から、本研究班で作成した「と畜場・食鳥処理施設HACCPシステムの妥当性検証法プロトコール」は、HACCP導入施設におけるHACCP検証手法として実施可能であることが確認できた。
・採材面積および採材部位として、牛枝肉及び豚枝肉では25 cm2の切除法でも評価でき、牛においては、「ともばら」、「頸部」に加え、「胸部」を採材部位として選択しても支障がないと考えられた。
・実証試験の結果を参考に基準値の設定を検討した。EU基準に比べて米国参考基準が厳しく、また、EU基準および米国参考基準に比べ、「平均値+2 SD」がより厳しい基準値設定に至ることが推察された。合格判定の暫定基準を提示したが、さらに全国的な成績を収集し我が国の実情に合った基準値を設定する必要があると考えられる。
・H-BSEを脳内接種または経口投与したサルは共に投与後4年5ヶ月を経過したが、異常行動や神経・精神症状を呈しておらず、発症は見られなかった。L-BSEと比較してH-BSEプリオンは霊長類への伝達性が低いと考えられた。
・L-BSEを経口接種後未発症のカニクイザル由来の脳組織中から、RT-QuICによりプリオンが検出され、L-BSEが経口ルートでサルに不顕性感染することが示唆された。本知見はL-BSEが経口ルートでヒトに感染する可能性を示す重要な知見である。
・TSE確認検査の検査精度は良好に維持されていることが確認できた。
・と畜場(牛: 8施設、豚: 12施設)並びに大規模食鳥処理場(12施設)で実施した実証試験の結果から、本研究班で作成した「と畜場・食鳥処理施設HACCPシステムの妥当性検証法プロトコール」は、HACCP導入施設におけるHACCP検証手法として実施可能であることが確認できた。
・採材面積および採材部位として、牛枝肉及び豚枝肉では25 cm2の切除法でも評価でき、牛においては、「ともばら」、「頸部」に加え、「胸部」を採材部位として選択しても支障がないと考えられた。
・実証試験の結果を参考に基準値の設定を検討した。EU基準に比べて米国参考基準が厳しく、また、EU基準および米国参考基準に比べ、「平均値+2 SD」がより厳しい基準値設定に至ることが推察された。合格判定の暫定基準を提示したが、さらに全国的な成績を収集し我が国の実情に合った基準値を設定する必要があると考えられる。
結論
・非定型BSE感染ウシの可食部には中枢神経系組織と比較して1/1,000のプリオンが存在する可能性を明らかにした。
・H-BSEは、C-およびL-BSEと比較してヒトへの感染リスクは低いと考えられた。
・L-BSEが経口ルートでヒトに不顕性感染する可能性を見いだした。
・HACCP導入施設における微生物学的なHACCP検証手法とし「と畜場・食鳥処理設HACCPシステムの妥当性検証法プロトコール」を作成し、実証試験により、実用可能であることを明らかにした。
・H-BSEは、C-およびL-BSEと比較してヒトへの感染リスクは低いと考えられた。
・L-BSEが経口ルートでヒトに不顕性感染する可能性を見いだした。
・HACCP導入施設における微生物学的なHACCP検証手法とし「と畜場・食鳥処理設HACCPシステムの妥当性検証法プロトコール」を作成し、実証試験により、実用可能であることを明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2020-10-08
更新日
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