中小企業等における治療と仕事の両立支援の取り組み促進のための研究

文献情報

文献番号
201923018A
報告書区分
総括
研究課題名
中小企業等における治療と仕事の両立支援の取り組み促進のための研究
課題番号
19JA1004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
立石 清一郎(産業医科大学 保健センター)
研究分担者(所属機関)
  • 森 晃爾(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 永田 昌子(産業医科大学 産業生態科学研究所)
  • 宮内 文久(愛媛労災病院 院長)
  • 白土 博樹(北海道大学大学院医学研究院医理工学院長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
3,280,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
労災疾病臨床研究ではこれまで数多くの両立支援に関する研究が取り上げられている。企業と医療機関の連携手法や、産業医の標準的考え方に関する検討(立石班H28-30)、医療機関の立場で事業者に適切な就業上の意見を述べる手法(中村班H29-31)、地域連携モデルの構築など様々なツールが提案されてきている。しかしながら、企業側の関心はやや低調の状況が続いている。中小企業のヘルスリテラシーを向上させるためには、中小企業の側からの良好事例を発表しても経営者の理解度や業務内容などからできる企業だけが対応していると思われがちであるため、医療機関を受診した労働者の対応事例を示すことで、些細なことであっても労働者にとって両立支援となっていることを実感できるようなデータを集積・公表することが重要で、中小企業にとって有益であることを示し中小企業のモチベーションを上げていくことが求められている。
研究方法
令和元年度の分担研究として、以下を行った。
【研究1】両立支援に関する医療機関及び企業へのコンサルティング部門の設立
【研究2】医療機関モデルの構築(産業医大モデル)
【研究3】医療機関モデルの構築(大学病院モデル)
【研究4】医療機関モデルの構築(労災病院モデル)
【研究5】小規模事業場の経営者・管理職に求められる「治療と仕事の両立支援」に関する知識・能力
結果と考察
コンサルティング部門を創設し広く相談を受けられる体制を構築した。医療機関は行政からの要請で両立支援を実施することが必要であること、目の前の患者が希望するなどから、先行しており全国的にも周知の広がりやすく相談しやすいのではないかと推察された。事業場からの相談あまりない理由は、大企業は自社リソースが充分であるためわざわざ相談しなくても自身で対応できること、中小企業は事例が発生するまで当事者意識がないことが主因と推定された。医療機関の取り組みを確認すると重要な要素は、スタッフ間の共通認識が進む取り組みを行うこと、スタッフの負担が過大にならないよう工夫すること、両立支援チームは組織横断的に構成されること、スタッフのコミットメントを高めるために事業者が両立支援を行うことを表明すること、院内で両立支援の仕組みを整えること、などが挙げられた。これらは産業保健の現場で実践されている労働安全衛生マネジメントシステムの考え方とほぼ合致している。PDCAを回しながらより質の高い両立支援が行われるような視座が必要である。 中小企業での展開については、中小事業者にとって必要な知識・技能が整理された。中小事業者は自らが人事、管理職、上司のすべての役割を担う必要があり中小事業者にとって両立支援が、人件費だけでない負担であることが推定された。このようなことを解決するためには外部リソースをうまく使うことが必要であるが、前述の通り産業医大で実施したコンサルティングについては広報が容易でなく相談につながらないため地域産業保健総合支援センターなどが中心となり対応し難しいケースは産業医大のコンサルティング部門に地域産業保健総合支援センターから相談できる体制を構築することが本研究課題に合致する対応であることが推定された。今後の展望について、中小事業場が両立支援を実践することが容易でないことが判明したので、、業種ごと、事業場規模ごとに対応の優先度などを示すことも有用ではないかと考えられる。
結論
中小企業における両立支援を展開するために、医療機関向けのアプローチとして医療機関で実践可能な両立支援モデルを提示すること、事業場向けとして業種ごと事業場規模ごとの対応の優先度を示すことが有用である可能性がある。また、職場復帰が難しい労働者を同定するために、困りごとに着目し介入を行っているが次年度以降に収集されたデータの分析がなされることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201923018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,237,000円
(2)補助金確定額
3,617,729円
差引額 [(1)-(2)]
619,271円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 317,778円
人件費・謝金 253,252円
旅費 1,588,970円
その他 500,729円
間接経費 957,000円
合計 3,617,729円

備考

備考
新型コロナウイスる感染症の流行により予定していた学会、調査などが中止になったため。

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-