職場における酸欠リスクの実態把握と酸欠災害の防止対策についての研究

文献情報

文献番号
201923013A
報告書区分
総括
研究課題名
職場における酸欠リスクの実態把握と酸欠災害の防止対策についての研究
課題番号
H30-労働-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 宏之(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 人間工学研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 板垣 晴彦(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ)
  • 萩原 正義(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 作業環境研究グループ )
  • 中村 憲司(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 作業環境研究グループ )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,289,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
酸素欠乏症は酸素濃度が低下した状況において発生する災害であり,罹災した場合には死亡の危険性が非常に高く,深刻な労働災害の原因となっている。また,硫化水素中毒についても酸素欠乏症と同様に死亡災害の危険性が高く,かつ発生原因や防止対策が酸素欠乏症に近いことから,我が国ではこれらをあわせて「酸素欠乏症等」と称している。酸素欠乏症等の原因は主として生物の呼吸や金属の酸化による酸素消費,他のガスの噴出による酸素濃度低下などであり,我が国では酸素欠乏症等による労働災害を防ぐため,酸素欠乏症等防止規則(以下酸欠則という。)が規定されている。酸欠則では,規制対象となる酸素欠乏危険場所を労働安全衛生法施行令(以下安衛法施行令という。)の別表第6において列挙し,酸素濃度(硫化水素濃度)測定や保護具の使用,安全帯の使用等を定めている他,特に必要な作業については「特殊な作業における防止措置」として措置を求めている。しかしながら,実際の酸素欠乏症等による労働災害は必ずしもこれらに列挙された場所でのみ発生しているわけではなく,列挙されていない場所における事故も発生しているケースが見受けられる。このことから,過去の事故事例を詳細に調査することにより,現状の酸素欠乏場所に該当しない事例があるのであれば,必要に応じて再検討を行うことが必要であると考えられる。本研究は,厚生労働省がWebサイトにて公開している労働災害データベースならびに酸素欠乏症等の事例から酸素欠乏症ならびに硫化水素中毒(合わせて酸素欠乏症等という)の死亡災害例ならびにその疑いのある事例を抽出し,類型別に分類・精査することにより,現状の酸素欠乏危険場所に該当しない事例についての情報を提示することにより,より効果的な酸欠労働災害の防止対策に資することを目的とする。
研究方法
昨年度実施した,死亡災害データベース4)から抽出した,酸素欠乏症等(酸素欠乏症および硫化水素中毒)が疑われる事例(平成3年~28年)ならびに厚生労働省が毎年公開している酸素欠乏症等のについて,その発生場所が酸素欠乏危険場所(安衛法施行令の別表6)のいずれに該当するか推定し,類型化を行った。その上で酸素欠乏危険場所に当てはまらない事例の特定を行い,各々についてどの部分が当てはまらないのかの検討を行った。その上で,さらに酸素欠乏症等による労働災害を有効に防止するために必要な措置についての検討を行った。
結果と考察
 酸素欠乏症等を防止するために,我が国では酸素欠乏症危険場所を安衛法施行令に明示し,酸素濃度(硫化水素濃度)の測定や,保護具の着用等を求めている。しかしながら,過去の死亡事故の事例を精査した結果,酸素欠乏症危険場所として明示されている場所以外における事故も発生していることが明らかとなった。過去の酸素欠乏症等による死亡事故事例の中には,現状の酸素欠乏危険場所に該当しないか,漏れてしまうケースが存在することが明らかとなった。実際に安衛法施行令の別表6を改定する必要があるかどうかの判断はできないが,既存の規定で十分であるかどうかの検討を行う必要はあると思われる。
結論
 立入禁止や作業環境測定,作業主任者の選任など,酸素欠乏症等を防止するため措置が義務付けられている酸素欠乏危険場所以外の場所においても,酸素欠乏症等による労働災害が発生している事例が散見されることが判明した。酸素欠乏症等による災害は,一度発生すると死亡や重篤な災害に直結しかねないものであるため,今後,酸素欠乏症等による労働災害防止を徹底するためには,酸素欠乏危険場所以外であっても,作業場所(特に,酸素欠乏危険場所の近傍など)の状況や作業の内容,使用する原材料や機械設備等に応じて,リスクアセスメント及びそれに基づく措置の実施を図っていく必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201923013B
報告書区分
総合
研究課題名
職場における酸欠リスクの実態把握と酸欠災害の防止対策についての研究
課題番号
H30-労働-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
齊藤 宏之(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 人間工学研究グループ)
研究分担者(所属機関)
  • 板垣 晴彦(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 化学安全研究グループ)
  • 萩原 正義(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 作業環境研究グループ)
  • 中村 憲司(独立行政法人労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所 作業環境研究グループ)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 労働安全衛生総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
酸素欠乏症は酸素濃度が低下した状況において発生する災害であり,罹災した場合には死亡の危険性が非常に高く,深刻な労働災害の原因となっている。酸素欠乏の原因は主として生物の呼吸や金属の酸化による酸素消費,他のガスの噴出による酸素濃度低下などであり,我が国では酸素欠乏症による労働災害を防ぐため,酸素欠乏症等防止規則が規定されており,規制対象となる酸素欠乏危険場所が労働安全衛生法施行令の別表第6において列挙している。しかしながら,実際の酸欠事故は必ずしも列挙された場所でのみ発生しているわけではなく,列挙されていない場所における酸欠事故も発生している状況である。酸素欠乏症等を有効に防止するためには,現在規制対象となっていない職場における酸欠リスクの実態の調査や,酸欠災害の発生状況,発生原因の調査を行うことにより,適切なリスク評価を行うことが必要であり,その上で必要に応じて規制対象の再検討を行うことが求められている。本研究では,労働災害データベースから酸欠事故例ならびにその疑いのある事例を抽出し,類型別に分類した上で,該当する事故例の存在を明らかにすること,さらに当該作業の酸欠リスクがどの程度あるのかについてのリスク評価を行うことを目的とする。
研究方法
1. 死亡災害データベースの解析
酸素欠乏症ならびにその疑いのある労働災害の事例を抽出するために,厚生労働省が「職場のあんぜんサイト」にて公開している死亡災害データベースを用いた解析を実施した。

2. 酸素欠乏症の事故事例の類型化
死亡災害データベースから抽出した,酸素欠乏症等(酸素欠乏症および硫化水素中毒)が疑われる事例ならびに厚生労働省が毎年公開している酸素欠乏症等の事例について,その発生場所が酸素欠乏危険場所(安衛法施行令の別表6)のいずれに該当するか推定し,類型化を行った。

3. 酸素欠乏危険場所に当てはまらない事例の特定
前項で類型化を行った事例のうち,酸素欠乏危険場所に当てはまらない事例の特定を行い,各々についてどの部分が当てはまらないのかの検討を行った。その上で,さらに酸素欠乏症等による労働災害を有効に防止するために必要な措置についての検討を行った。
結果と考察
酸素欠乏症等を防止するために,我が国では酸素欠乏症危険場所を安衛法施行令に明示し,酸素濃度(硫化水素濃度)の測定や,保護具の着用等を求めている。しかしながら,過去の酸素欠乏症等による死亡事故事例の中には,現状の酸素欠乏危険場所に該当しないか,漏れてしまうケースが存在することが明らかとなった。実際に安衛法施行令の別表6を改定する必要があるかどうかの判断はできないが,既存の規定で十分であるかどうかの検討を行う必要はあると思われる。
結論
立入禁止や作業環境測定,作業主任者の選任など,酸素欠乏症等を防止するため措置が義務付けられている酸素欠乏危険場所以外の場所においても,酸素欠乏症等による労働災害が発生している事例が散見されることが判明した。酸素欠乏症等による災害は,一度発生すると死亡や重篤な災害に直結しかねないものであるため,今後,酸素欠乏症等による労働災害防止を徹底するためには,酸素欠乏危険場所以外であっても,作業場所(特に,酸素欠乏危険場所の近傍など)の状況や作業の内容,使用する原材料や機械設備等に応じて,リスクアセスメント及びそれに基づく措置の実施を図っていく必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201923013C

収支報告書

文献番号
201923013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,966,000円
(2)補助金確定額
1,158,000円
差引額 [(1)-(2)]
1,808,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 474,293円
人件費・謝金 0円
旅費 0円
その他 7,348円
間接経費 677,000円
合計 1,158,641円

備考

備考
端数641円(超過分)は自己資金支払いとしています。

公開日・更新日

公開日
2020-11-19
更新日
-