看護職の労働時間・勤務環境の改善に向けた調査研究

文献情報

文献番号
201922047A
報告書区分
総括
研究課題名
看護職の労働時間・勤務環境の改善に向けた調査研究
課題番号
19IA2017
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
武村 雪絵(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 木田 亮平(東京大学大学院医学系研究科看護管理学分野)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,170,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、看護職員の労働時間・勤務環境の実態を把握し、それらの要因と就業継続意思・勤務割り振りへの満足度・心身の健康状態との関連を検討すること、および看護職員の労働時間・勤務環境の改善に対し先駆的に取り組んでいる医療施設において、その取り組みの実態を把握することを目的とした。
研究方法
1.看護職員調査
 令和2年1月~2月、機縁法または施設規模ごとに無作為抽出した施設の交代制勤務者を対象に、無記名自記式のweb調査を行った。調査項目は、基本属性、過去1か月間の勤務日数や休日、勤務の実態、勤務環境、就業継続意思、心身の健康度等を含めた。

2.医療施設調査
 令和元年11月~令和3年3月、公開情報から看護職員の労働時間や勤務環境改善のための取り組みを組織的に行っている施設の看護部門責任者等を対象に半構造化面接を行った。調査内容は、施設の概要と施設が抱えていた労働時間・勤務環境に関する課題、施設が行った取り組みやその影響、ガイドラインの遵守状況等を尋ねた。
結果と考察
1.看護職員調査
 410名から回答があり、新任者等を除く394名を分析対象とした。分析の結果、交代制の種類によらず、勤務表1クール(約1月)に夜勤は平均7~8日、休日は平均9~10日であった。2交代制では13時間を超える長時間夜勤を行っており、3交代制では6割以上が11時間未満のインターバルでの勤務や6日以上の連続勤務を行っていたことから、交代制の種類によって課題が異なることが明らかとなった。交代制の種類によらず、現在の労働条件で働き続けたいと思う者は4割で、働き続けられるのは3年以下だと回答した者が5割以上を占めた。今後も交代制勤務を継続するためには、夜勤手当の増額や完全オフ日の確保・増加、連続休暇の確保・増加が非常に重要だと回答した者が5割以上を占め、疲労回復のために月に平均2日程度の休日増が必要だとした。従って交代制勤務者の労働環境改善のためには、十分な休息を確保する必要性が示唆された。11時間未満のインターバルでの勤務は情緒的消耗感および身体愁訴と、4時間以上の時間外勤務や6日以上の連続勤務は情緒的消耗感および脱人格化と有意な正の相関があった。また、休暇の希望を言えないことや、希望日に休暇が取れないこと、勤務表の希望の締め切りが早いこと、勤務表の提示時期が遅いこと、長期の連続休暇の予定を立てることができないこと、自分の体調不良時に急な休みの取得が難しいこと、家族の病気や事故など急な事情があるときに休みの取得が難しいことは、情緒的消耗感、脱人格化、身体愁訴と有意な正の相関があった。従って、労働状況の改善に加え、個別性に配慮した勤務割り振りや柔軟性のある勤務マネジメントと、それらを実現する十分な人員配置が重要であることが示唆された。

2.医療施設調査
 調査に参加した7施設は、さまざまな地域、病床規模、設置主体、病院機能であった。各施設とも日本看護協会が平成25年にとりまとめた「看護職の夜勤・交替制勤務に関するガイドライン」の11項目については多くの項目を遵守していた。「勤務の拘束時間」等遵守が難しい項目があったが、スタッフの意見を汲み取ったり、施設の役割や機能、スタッフの背景に合わせたりしながら柔軟に勤務環境改善のための方策を講じていた。看護職員の勤務環境改善のためには、制度の導入のみならず各施設が置かれた背景や職員の状況を適切に把握し、データを活用しながら各施設に合った取り組みを組織的に行う必要性が示唆された。共通点として、業務負担の軽減や労働時間および勤務形態の適正化に向けた取り組みといった労働状況を改善するための取り組みと、看護職員がやりがいを持ってその施設で働き続けられる仕組みづくりや定着を目指した人材採用戦略の検討といった、人員を確保するための取り組みの両者を並行して行う重要性が示された。
結論
 本研究によって、看護職員の労働環境改善にむけた具体的な課題とその方策についての示唆を得ることができた。労働環境に関する課題として、長時間の拘束時間や勤務間インターバル確保を含む休息の確保等が明らかとなった。それらの改善にむけた方策として、長時間勤務の短縮化や十分な休日付与を前提とした人員を確保すること、業務量に見合った人員を配置し労働時間を短縮すること、管理者が勤務表作成前から運用中まで職員の個別性に配慮し柔軟に対応することが重要である。

公開日・更新日

公開日
2021-09-06
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-09-06
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201922047C

収支報告書

文献番号
201922047Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,821,000円
(2)補助金確定額
2,649,000円
差引額 [(1)-(2)]
172,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 372,201円
人件費・謝金 0円
旅費 403,540円
その他 1,222,622円
間接経費 651,000円
合計 2,649,363円

備考

備考
医療施設の看護管理者にインタビューを実施するため旅費を計上していたが、新型コロナウイルス感染症流行拡大を考慮し、7件中2件はオンラインでの実施に変更した。

公開日・更新日

公開日
2021-11-17
更新日
-