医療の質評価の全国展開を目指した調査研究

文献情報

文献番号
201922043A
報告書区分
総括
研究課題名
医療の質評価の全国展開を目指した調査研究
課題番号
19IA2013
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
福井 次矢(聖路加国際大学 聖路加国際病院)
研究分担者(所属機関)
  • 猪飼 宏(京都府立医科大学 大学院医学研究科)
  • 今中 雄一(京都大学 医学研究科)
  • 今村 知明(奈良県立医科大学 医学部)
  • 嶋田 元(聖路加国際大学 情報システムセンター)
  • 高橋 理(聖路加国際大学 公衆衛生大学院)
  • 伏見 清秀(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
  • 松田 晋哉(産業医科大学 公衆衛生学教室)
  • 大出 幸子(聖路加国際大学 公衆衛生大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
2,687,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 猪飼 宏  山口大学医学部附属病院(平成31年4月1日~令和元年7月31日)  京都府立医科大学大学院医学研究科(令和元年8月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
医療の質を継続的に改善するためには、医療の質知ることのできる指標(質指標Quality Indicator:QI)を測定することが不可欠である。
厚生労働省では、平成22年(2010年)度開始の「医療の質の評価・公表等推進事業」を介して、毎年複数の病院団体によるQIの測定・公表を推進し、その事業をさらに全国展開する目的で、平成28年(2016年)度厚生労働行政推進調査事業費補助金による研究班によって「共通QIセット」が提唱され、平成29年(2017年)度以降の「医療の質の評価・公表等推進事業」では、「共通QIセット」の測定を求めてきたところである。
本研究の目的は、今後、全国の病院でQI測定を行うための基盤構築の一環として、「共通QIセット」に含まれているQIの定義の見直しや海外で開発された指標の導入、そして「共通QIセット」測定に伴う課題抽出と測定推進、について調査・研究を行うことである。
研究方法
本研究では、2年間で3つの調査・研究を行う。
1)HCHAPS(Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)の日本語版作成と妥当性評価
HCHAPSは、患者の視点から医療サービスの質を評価するために、米国のAHRQ(The Agency for Healthcare Research and Quality)が開発した患者満足度調査票である。AHRQと連絡を取り、日本語に翻訳する正式な研究チームと認めてもらったうえで、AHRQが求めるプロトコルに則ってHCHAPSの翻訳を行う。その後、日本語訳HCAHPSの妥当性評価を行い、近い将来、「共通QIセット」に組み入れることの妥当性や可能性について検討する。
2)患者アウトカム尺度の一つであるEQ-5Dを用いたQOLの測定と効用値の算出
EQ-5Dは5項目からなる質問票であり、患者の視点からQOLを測定し、効用値を算出できる。聖路加国際病院の電子カルテに組み込み、患者に応用してその適切性などを評価した後、近い将来、「共通QIセット」に組み入れることの妥当性や可能性について検討する。
3)「共通QIセット」測定に伴う課題抽出と測定推進
「共通QIセット」の測定を開始した病院において、QIのデータ収集や分析のプロセスと工夫、必要な人材とスキル、実労働時間など、さまざまな課題を知る目的でアンケート調査を行う。
結果と考察
1)日本語版HCAHPS を、AHRQが求める手順に則って作成した。そのうえで、日本語版HCAHPSの内容妥当性、表面妥当性の確認、日本語版HCAHPSの構成概念の妥当性を検証するためのデータ収集を完了した。正式な手順での日本語版HCAHPSの作成に想定以上に時間を要したため、収集したデータを用いた妥当性検証のための分析は次年度に行うこととなった。
2)日本語版EQ-5D-5Lを用いて、2020年1月より、聖路加国際病院外科系診療科に予定入院した患者を対象に、入院前、退院後約1か月時点、約6か月時点でのデータ取得を開始した。約3か月の間に日本語版EQ-5D-5Lが発行された件数は799件であり、そのうち入院前と入院後約1か月時点でのデータが得られたのは145件であった。その145件について、入院前後の効用値を比較すると、退院後約1か月時点での効用値は入院前に比べて低くなる傾向が認められた。次年度は、退院後約6か月時点での効用値を測定し、退院後約1か月時点での傾向が継続するか否かを検討する。
3)「共通QIセット」測定に係るアンケート調査の事前調査として、日本病院会における「共通QIセット」に関するデータの解析を行ったところ、「共通QIセット」の中には、継続するうえで見直しが必要な指標があること、QI業務を担当する人材に関する調査では、全国の病院でQIを測定するためには、各病院で医療情報を扱うスタッフの配置が必要であること等が示唆された。
結論
1)日本語訳HCAHPSを作成し、妥当性評価のデータ収集を行った。次年度は妥当性評価の分析結果を踏まえ、近い将来、「共通QIセット」に組み入れることの妥当性や可能性について検討する。
2)日本語版EQ-5D-5Lを用いたQOLの測定と効用値の算出を開始した。術後約1か月時点での効用値は低下する傾向にあった。次年度は、術後6か月時点でのデータを加え、その適切性など評価したうえで、「共通QIセット」に組み入れることの妥当性や可能性について検討する。
3)「共通QIセット」測定に伴う課題抽出と測定推進については、事前調査の結果を踏まえ、次年度は、QIのデータ収集や分析のプロセスと工夫、必要な人材とスキル、実労働時間等、さまざまな課題を知るためのアンケート調査票を作成し調査を実施する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201922043Z