文献情報
文献番号
201922042A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療支援病院等の医療提供体制上の位置づけに関する研究
課題番号
19IA2012
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
伏見 清秀(国立大学法人東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医療政策情報学)
研究分担者(所属機関)
- 清水 沙友里(医療経済研究機構 研究部)
- 新城 大輔(国立成育医療研究センター 情報管理部情報解 析室)
- 佐方 信夫(医療経済研究機構 研究部)
- 石川 ベンジャミン光一(国際医療福祉大学 大学院医学研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者 佐方信夫
所属機関名(平成27年4月1日~令和元年9月30日)→所属機関名(令和元年10月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、地域医療支援病院・地域医療支援病院の承認業務を担当する自治体・郡市区医師会の質問紙調査を通して、承認要件の見直し検討に資する基礎データを入手し、地域医療支援病院のあり方・地域医療において期待されている役割等を把握することを目的とした。
研究方法
地域医療支援病院に関するグッド・プラクティスの事例収集と、ステークホルダーへのインタビューを兼ねて、ヒアリング調査を実施した。
調査対象は、平成30年度の厚生労働科学研究 研究班(地域医療支援病院等の医療提供体制上の位置づけに関する研究)で実施した、地域医療支援病院に対する質問紙調査の回答施設等から、地域医療支援病院の偏在(過密・過疎)が生じている地域を中心に選択した。
グッド・プラクティス事例の収集・ヒアリング調査の方法
1. 地域医療支援病院・郡市区医師会におけるグッド・プラクティス事例の収集と都道府県自治体へのヒアリングに関する調査項目設計を行った。
2. ヒアリング調査実施に伴う調査対象の選定等の調整を行い、訪問調査を実施した。
3. 調査実施後は、回答者からの質疑応答対応、データ化作業、集計、分析を行った。
調査対象は、平成30年度の厚生労働科学研究 研究班(地域医療支援病院等の医療提供体制上の位置づけに関する研究)で実施した、地域医療支援病院に対する質問紙調査の回答施設等から、地域医療支援病院の偏在(過密・過疎)が生じている地域を中心に選択した。
グッド・プラクティス事例の収集・ヒアリング調査の方法
1. 地域医療支援病院・郡市区医師会におけるグッド・プラクティス事例の収集と都道府県自治体へのヒアリングに関する調査項目設計を行った。
2. ヒアリング調査実施に伴う調査対象の選定等の調整を行い、訪問調査を実施した。
3. 調査実施後は、回答者からの質疑応答対応、データ化作業、集計、分析を行った。
結果と考察
令和元年9月から10月にかけて、地域医療支援病院(8施設)、当該地域医療支援病院が位置する郡市区医師会(8医師会)都道府県の承認を担当する部局(6自治体)にヒアリング調査を実施した。
(1)都道府県向けの調査
各都道府県ともに、地域医療支援病院に期待する役割として、急性期機能については、現時点で十分な役割を果たしているとの認識だった。地域医療支援病院に関連する各種業務に関しては、現行の承認作業の範囲で対応しており、独自要件の評価を検討しているという声は一部を除き見られなかった。各地域における医療環境が異なるため、今後地域医療支援病院が担うべき役割に対する認識は、地域による特性を反映した結果となった。
(2)郡市区医師会向けの調査
各医師会ともに、当該地域の地域医療支援病院が「地域の医療機関を支援する」機能を有していることは、医師会員も十分把握しているとの認識であった。また地域の医療機関と地域医療支援病院の連携は、頻度高く行われている様子が伺えた。特に地域医療支援病院の救急受け入れ体制については、高く評価されていた。一方で、医療機器等の共同利用は、ほとんど行われておらず、制度上利用がしにくいという声が多く聞かれた。また、地域の医師会会員の高齢化から、地域の救急の輪番体制の維持については、今後を不安視する声もあった。加えて、地域医療支援病院の連携調整会議が年4回実施されることについては、会議体や地域での顔合わせが他にも頻回に実施されており、その多くは会議参加者もほぼ変わらないことから、会議の重要性は認識されているものの、開催回数を削減してはどうか、という提案も多くあった。
(3)地域医療支援病院の調査
各医療機関ともに、地域医療支援病院の承認に伴い、救急の受け入れや、紹介・逆紹介の推進に関連した、院内の新たな支援体制を構築し、人的配置を行うなどの取り組みがなされていた。これらで増員された地域医療支援の担当者や部局が、診療所や他病院との連携や情報交換の手段について、様々な工夫を行い、地域のニーズの把握や、よりよい連携手段を模索している様子が伺えた。具体的には、合同カンファレンスや研修会の実施、診療科とのホットラインの設置、診療所への訪問、広報資料の作成等が積極的に行われていた。一方で、地域医療支援病院と医師会会員の間での、ICTを利用した医療情報の共有については、継続的な利用や利用の拡大が困難であるという回答が多かった。紹介・逆紹介の推進という観点からは、院外の医師のみならず、院内の医師への働きかけが重要であったとの声が多かった。また、同様に患者や地域住民に対する周知活動も積極的に行われていた。最も懸念されていたのは、将来的な医療者の確保や、働き方改革が人事に与える影響についてだった。今後さらに人的資源の確保が困難になるのではという強い懸念が示された。在宅や医師派遣については、地域の事情を反映したヒアリング結果となった。また、連絡調整会議については、医師会の回答と同様に、実施回数が多いのではとの声が多く、共同利用についても、利用体制の構築はなされているものの、実際の利用に結びつかないという声が散見された。
(1)都道府県向けの調査
各都道府県ともに、地域医療支援病院に期待する役割として、急性期機能については、現時点で十分な役割を果たしているとの認識だった。地域医療支援病院に関連する各種業務に関しては、現行の承認作業の範囲で対応しており、独自要件の評価を検討しているという声は一部を除き見られなかった。各地域における医療環境が異なるため、今後地域医療支援病院が担うべき役割に対する認識は、地域による特性を反映した結果となった。
(2)郡市区医師会向けの調査
各医師会ともに、当該地域の地域医療支援病院が「地域の医療機関を支援する」機能を有していることは、医師会員も十分把握しているとの認識であった。また地域の医療機関と地域医療支援病院の連携は、頻度高く行われている様子が伺えた。特に地域医療支援病院の救急受け入れ体制については、高く評価されていた。一方で、医療機器等の共同利用は、ほとんど行われておらず、制度上利用がしにくいという声が多く聞かれた。また、地域の医師会会員の高齢化から、地域の救急の輪番体制の維持については、今後を不安視する声もあった。加えて、地域医療支援病院の連携調整会議が年4回実施されることについては、会議体や地域での顔合わせが他にも頻回に実施されており、その多くは会議参加者もほぼ変わらないことから、会議の重要性は認識されているものの、開催回数を削減してはどうか、という提案も多くあった。
(3)地域医療支援病院の調査
各医療機関ともに、地域医療支援病院の承認に伴い、救急の受け入れや、紹介・逆紹介の推進に関連した、院内の新たな支援体制を構築し、人的配置を行うなどの取り組みがなされていた。これらで増員された地域医療支援の担当者や部局が、診療所や他病院との連携や情報交換の手段について、様々な工夫を行い、地域のニーズの把握や、よりよい連携手段を模索している様子が伺えた。具体的には、合同カンファレンスや研修会の実施、診療科とのホットラインの設置、診療所への訪問、広報資料の作成等が積極的に行われていた。一方で、地域医療支援病院と医師会会員の間での、ICTを利用した医療情報の共有については、継続的な利用や利用の拡大が困難であるという回答が多かった。紹介・逆紹介の推進という観点からは、院外の医師のみならず、院内の医師への働きかけが重要であったとの声が多かった。また、同様に患者や地域住民に対する周知活動も積極的に行われていた。最も懸念されていたのは、将来的な医療者の確保や、働き方改革が人事に与える影響についてだった。今後さらに人的資源の確保が困難になるのではという強い懸念が示された。在宅や医師派遣については、地域の事情を反映したヒアリング結果となった。また、連絡調整会議については、医師会の回答と同様に、実施回数が多いのではとの声が多く、共同利用についても、利用体制の構築はなされているものの、実際の利用に結びつかないという声が散見された。
結論
地域医療の支援のあり方は地域の実情を色濃く反映するものであり、それらのニーズに合わせた地域医療支援機能の評価を行うことの必要性が示唆された。本研究結果は、地域医療支援病院の役割やあり方の検討を進める際の基礎資料の一つになると考えられる。
ヒアリング調査にご協力頂いた皆様に深く御礼を申し上げます。
ヒアリング調査にご協力頂いた皆様に深く御礼を申し上げます。
公開日・更新日
公開日
2021-11-16
更新日
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