ドクターヘリの適正利用および安全運航に関する研究

文献情報

文献番号
201922029A
報告書区分
総括
研究課題名
ドクターヘリの適正利用および安全運航に関する研究
課題番号
H30-医療-指定-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
猪口 貞樹(東海大学 医学部医学科)
研究分担者(所属機関)
  • 荻野 隆光 (川崎医科大学 医学部)
  • 高山 隼人(長崎大学病院 地域医療支援センター)
  • 北村 伸哉(君津中央病院 救命救急センター)
  • 早川 達也(聖隷三方原病院 高度救命救急センター)
  • 中川 雄公(大阪大学医学部附属病院 高度救命救急センター)
  • 土谷 飛鳥(独立行政法人国立病院機構水戸医療センター 救急科)
  • 野田 龍也(奈良県立医科大学 公衆衛生学講座)
  • 辻 友篤(東海大学 医学部)
  • 田中 健一(慶應義塾大学 理工学部)
  • 高嶋 隆太(東京理科大学 理工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,110,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、ドクターヘリの安全かつ効果的な運用体制を提言することである。併せて、ドクターヘリの安全かつ効果的な運用を継続的に検証するための症例登録システムおよびインシデント・アクシデント収集システムを整備する。
本年度は3年計画の2年目である。
研究方法
①現状分析に関する研究:昨年度に引き続き日本航空医療学会ドクターヘリレジストリに登録された症例を対象に、急性冠症候群、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血に対するドクターヘリの効果を分析した。 
②運用方式(システム)の研究:昨年度の研究から各地域における運用方式に多様性のあることが判明したため、今年度は、②-2)救急隊現場到着前要請(以下覚知要請)に対するアンケート調査、を実施のうえ、この結果を踏まえて、②-3)オペレーションズ・リサーチによる効果的な運用方法の検証、に用いるドクターヘリの数理モデルを検討した。
③全国症例登録システムに関する研究:昨年度の素案に基づきドクターヘリ全国症例登録システム(JSAS-R)を構築した。
④インシデント・アクシデント収集システムに関する研究:各基地病院で収集されたインシデント/アクシデントとそれに対する予防策を、全国の基地病院間で共有するシステムを構築した。
⑤遠隔地航空搬送の研究:これまで本研究で調査した僻地・離島医療3か所の現状を踏まえ、本邦における遠隔地航空搬送の在り方を検討した。
結果と考察
①現状分析に関する研究:ドクターヘリは、意識の比較的良好なACSおよび脳梗塞全般の転帰改善に有効と考えられた。脳出血、くも膜下出血に対する効果は明らかでなく、さらに分析を継続する。
②運用方法(システム)の研究:②-2)覚知要請に関するアンケート調査:各ドクターヘリ運用体制(以下HEMS)の推奨する要請タイミングは異なっており、現場出動時の各場面毎の重複要請への対応にもHEMS間で大きな相違が見られた。現場出動の10.9%で重複要請が発生、うち73.8%が対応不能であり、覚知要請が増えると、対応不能重複要請件数が増加することが判明した。一方、重複要請に対応する他のドクターヘリや他機関、ドクターカー等との連携体制が構築されていた。②-3) オペレーションズ・リサーチによる効果的な運用方法の検証:出動要請が確率的に生じ、要請への対応が一定時間で完了するという条件下で、対応完了までが一定時間以内であれば要請を受諾するという想定のもと、不応需の発生率、要請から現場到着までの所要時間の分布を分析した。次年度、この数理モデルを検証のうえ効果的なドクターヘリの運用方法について検討する。
③全国症例登録システムに関する研究:ドクターヘリ活動の質を継続的に評価するための品質管理(QI)項目、運航時間情報の全国的な収集を行う項目を追加のうえ、JSAS-Rを構築した。次年度より登録を開始し、ドクターヘリ活動の詳細を把握・解析する。
④インシデント・アクシデント収集システムに関する研究:インシデント・アクシデント収集データーベースを構築し、JSAS-Rとも連動させて試用運用を行った。次年度より全国基地病院で運用する。
⑤遠隔地航空搬送の研究:調査結果から、遠隔地航空搬送では、1)双発エンジン、2)空中衝突防止装置の設置、③搭乗医師・看護師への保険の付保、④2つ以上の天候情報による判断、を推奨する。
結論
①ドクターヘリは、意識の比較的良好なACSおよび脳梗塞全般の転帰改善に有効と考えられた。
②出動要請のタイミングや現場出動時の各場面毎の重複要請への対応には、各地域で大きな相違が見られた。このため出動中の重複要請に対し、対応完了までの時間が一定以内であれば要請を受諾する、という想定で新しい数理モデルを作成した。次年度、このモデルを検証のうえ効果的なドクターヘリの運用方法について検討する。
③全国症例登録システム(JSAS-R)、④インシデント・アクシデント収集データーベースをそれぞれ構築し、両者を連動させて試用運用を行った。次年度は全国運用を行い、ドクターヘリ活動の詳細を把握・解析する。
⑤本邦の遠隔地航空搬送では、1)双発エンジン、2)空中衝突防止装置の設置、3)搭乗医師・看護師への保険の付保、4)2つ以上の天候情報による判断、を推奨する。
⑥次年度は、これまでの本研究結果および次年度の結果を踏まえ、ドクターヘリの安全かつ効果的な運用体制を提言のうえ、安全管理基準を改訂する予定である。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201922029Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,040,000円
(2)補助金確定額
4,040,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 833,088円
人件費・謝金 0円
旅費 563,510円
その他 1,713,402円
間接経費 930,000円
合計 4,040,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-05-23
更新日
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