NCDを活用した医療提供体制の構築に関する研究

文献情報

文献番号
201922027A
報告書区分
総括
研究課題名
NCDを活用した医療提供体制の構築に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 裕章(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
  • 後藤 満一 (大阪急性期・総合医療センター)
  • 瀬戸 泰之 (東京大学 医学部附属病院)
  • 丸橋 繁(福島県立医科大学)
  • 掛地 吉弘(神戸大学)
  • 上田 裕一(奈良県立病院機構奈良県総合医療センター)
  • 高本 眞一(東京大学 医学部附属病院)
  • 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 徳田 裕(東海大学)
  • 遠藤 俊輔(自治医科大学)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学)
  • 隈丸 拓(東京大学 医学部附属病院)
  • 一原 直昭(東京大学 医学部附属病院)
  • 高橋 新(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,239,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の医療提供は,専門医の配置や診療科や地域における医療提供体制など,偏在問題で多くの課題が示されており,これらを解決するための取り組みが重要視されている.医師の配置数で考えると,人口10万人あたりの医師数は都道府県間で最大2倍の格差があるとされている.しかし実際には,需供ニーズの視点から考えた場合に,その地域における対象疾患数での評価が重要となってくる.これまでにも同様な課題は存在していたが,各診療分野においてどのような品質の医療が提供されているのか具体的に把握されていなかった.本研究はNational Clinical Dartabase(NCD)の活用によって,日本における地域毎の医療提供体制の実態を実臨床データを用いて把握し,よりよい医療提供が可能となる指標を確立し,地域課題の要因分析をするものである.
研究方法
本年度の研究では,昨年度までに整えられた、NCDに登録されている2011年から2017年手術症例データを用いて,地域における医療機関の連携体制を評価可能な指標案の検討および医療連携のモデル地域における医療提供体制の実態把握を行い,地域医療における医療の質向上につながる要因を検討した.先行研究を参考に,リスク調整可能な術式を対象として1施設あたりの年間手術症例数からカットオフ値を算出し「Low-volume施設」として定義を設定した.また,データから再編統合が進んだと考えられる地域をモデル地域として抽出し,モデル地域における経年的な手術実施体制と治療成績について比較を行った.
結果と考察
年間に少数の実績のみを有する施設での治療を控えることで地域として治療成績の向上が期待できることが示唆された.Volume-outcomeという考え方についてはこれまでにもいくつもの研究が行われており、医療技術の進歩がある中でも有効な手段であることが報告されている.本研究では、高難度がん手術を対象として集約化の基準を先行研究とデータを参考に設定した.これは、集約化の度合いを考えた際に、地域医療提供体制への影響を可能な限り抑えつつ治療成績には効果があると考えられるものである.集約化が進められた地域においては、経年的に治療成績の改善が確認された.
本研究で扱った分析結果についてはいくつかの限界があり,①手術難易度に応じた検討の必要性,②緊急症例の扱い,③地域特性(地理的要因)などを十分に考慮する必要があるものである.また,技術集積性については,症例数が多ければ多いほど治療成績が向上するものでは無いことにも注意が必要である.再編統合の程度を上げると(例えば、年間20例以上の治療実績がある医療機関への統合など),その基準をクリアする医療機関が地域には存在せず、2次医療圏や3次医療圏を越えた統合モデルの検討が必要となる.またその場合には、患者の地理的な移動距離増加に伴う負担の増加が発生することとなる.一方で,集約化については既にがんや心臓領域など多くの領域で検討され,医療の質向上に繋がることが示されている.再編統合の方法を現実的にとらえた場合,“無理に治療を行うのではなく,当該治療を得意とする近隣医療機関への紹介”という体制が重要となる.そのため,地域における医療機関の連携や再編統合は,医療機関を無くすことではなく,連携体制強化によって地域全体で患者を支える仕組みが重要であると考える.
結論
NCDにおける2011年から2016年手術症例データを用いて高難度がん手術Aにおける再編統合の実態把握を行なった.地域における集約や再編統合による影響を経年で評価することが可能であり,高難度がん手術Aについては既に集約化が自然に進められており,集約化に伴って医療の質が担保されている状況であった.大規模データベースを用いることで再編統合よる日本の治療成績の実態を捉えることが可能であった.一方で,再編統合など地域医療連携については一つのモデルが全てに対応できるものでは無いため,地域特性や治療方法など実態を十分に理解したうえで検討することが必要である.

公開日・更新日

公開日
2021-05-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201922027B
報告書区分
総合
研究課題名
NCDを活用した医療提供体制の構築に関する研究
課題番号
H29-医療-指定-008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 裕章(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
  • 岩中 督(東京大学 医学部附属病院)
  • 後藤 満一(大阪急性期・総合医療センター)
  • 瀬戸 泰之(東京大学 医学部附属病院)
  • 丸橋 繁(福島県立医科大学)
  • 掛地 吉弘(神戸大学)
  • 上田 裕一(奈良県立病院機構奈良県総合医療センター)
  • 高本 眞一(東京大学 医学部附属病院)
  • 本村 昇(東邦大学医療センター佐倉病院)
  • 徳田 裕(東海大学)
  • 遠藤 俊輔(自治医科大学)
  • 岡本 高宏(東京女子医科大学)
  • 隈丸 拓(東京大学 医学部附属病院)
  • 一原 直昭(東京大学 医学部附属病院)
  • 高橋 新(慶應義塾大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
日本の医療提供は,専門医の配置や診療科や地域における医療提供体制など,偏在問題で多くの課題が示されており,これらを解決するための取り組みが重要視されている.医師の配置数で考えると,人口10万人あたりの医師数は都道府県間で最大2倍の格差があるとされている.しかし実際には,需供ニーズの視点から考えた場合に,その地域における対象疾患数での評価が重要となってくる.これまでにも同様な課題は存在していたが,各診療分野においてどのような品質の医療が提供されているのか具体的に把握されていなかった.本研究はNational Clinical Dartabase(NCD)の活用によって,日本における地域毎の医療提供体制の実態を実臨床データを用いて把握し,よりよい医療提供が可能となる指標を確立し,地域課題の要因分析をするものである.
研究方法
本研究は,NCDデータから一般外科における手術や疾患別などの症例数を都道府県単位で記述統計などを用いて可視化する.現状では具体的に把握されていない地域毎の受入症例数や疾患分布ついて可視化することが可能となり,今後の適切な医療の機能分化に資する指標を確立する事が可能となるものである.
本研究では、①手術症例数,②消化器,乳腺,呼吸器,心臓,末梢血管,内分泌外科,小児外科領域の手術症例数,2011年から2017年手術症例データを用いて,③領域ごとの主なNCD術式別の手術件数を分析した.また,④都道府県単位での基礎統計,⑤医療機関の連携体制を評価可能な指標案を検討し標準化死亡比との比較を行った.さらに⑥医療連携のモデル地域における医療提供体制の変化について比較した.また,地域における医療機関の連携体制を評価可能な指標案の検討および医療連携のモデル地域における医療提供体制の実態把握を行い,地域医療における医療の質向上につながる要因を検討した.


結果と考察
本研究により,NCDにおける2016年および2017年手術症例について,外科専門医制度上で認められた手術を登録した施設の都道府県別の分布,7領域別の手術症例数が明らかとなった.また,経年的な手術数の推移について,年齢構成,性別,緊急手術,麻酔の有無,患者の流入流出について比較することが可能であった.
機能連携評価では,症例の集約と治療成績について影響を評価した.指標として検討した機能連携の割合が高い都道府県では,機能連携の指標と都道府県の標準化死亡比には一定程度の相関が認められた.年間に少数の実績のみを有する施設での治療を控えることで地域として治療成績の向上が期待できることが示唆された.本研究では、高難度がん手術を対象として集約化の基準を先行研究とデータを参考に設定した.集約化が進められた地域においては、経年的に治療成績の改善が確認された.
尚、本研究にはいくつかの限界があり,①手術難易度に応じた検討の必要性,②緊急症例の扱い,③地域特性などを十分に考慮する必要がある.また,技術集積性については,症例数が多ければ多いほど治療成績が向上するものでは無いことにも注意が必要である.再編統合の程度を上げると(例えば、年間20例以上の治療実績がある医療機関への統合など),その基準をクリアする医療機関が地域には存在せず、2次医療圏や3次医療圏を越えた統合モデルの検討が必要となる.その場合には、患者の移動距離増加など負担が発生することとなる.一方で,集約化については既にがんや心臓領域など多くの領域で検討され,医療の質向上に繋がることが示されている.再編統合の方法を現実的にとらえた場合,“無理に治療を行うのではなく,当該治療を得意とする近隣医療機関への紹介”という体制が重要となる.そのため,地域における医療機関の連携や再編統合は,医療機関を無くすことではなく,連携体制強化によって地域全体で患者を支える仕組みが重要であると考える.
結論
本研究により,NCDにおける7つの領域別の手術症例数および各領域の主な手術に対する手術件数が明らかとなった.2011年から2017年の手術データを活用することは地域における集約や再編統合による影響を経年で評価することが可能と考えられ,地域医療体制の検討に資するデータ提供が可能となるものである.機能連携について各都道府県の地域医療構想の達成に向けた取組状況を参考に,実際に大規模データ用いて解析を行うと,効果的に再編統合を果たしている地域が確認された.再編統合によって医療の質向上にとって重要な技術集積性を担保することが可能となり,治療成績が改善している地域を確認することができた.一方で,再編統合など地域医療連携については一つのモデルが全てに対応できるものでは無いため,地域特性や治療方法など実態を十分に考慮したうえで検討することが必要である.

公開日・更新日

公開日
2021-05-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201922027C

成果

専門的・学術的観点からの成果
悉皆性の高い大規模臨床データベース(NCD)を用いた研究であり,地域における医療提供体制とアウトカム指標を比較し症例数の多い地域においては医療の質が高いことを示した.症例数が少ない施設が無理に治療を行うのではなく,医療機関の連携体制構築によって地域での効率的かつ高品質な医療を提供できることが期待できる.
臨床的観点からの成果
症例数の大きい地域における医療の質に関するアウトカムが少ない地域におけるアウトカムよりも良い結果であることが示された.症例数とアウトカムの関連はこれまでにも多くの研究で影響が示されており,今後,より詳細な地域(二次医療圏など)での分析を進めることで,効果的かつ実現可能な地域医療提供体制のあり方を検討することが期待できる.
ガイドライン等の開発
特記事項なし
その他行政的観点からの成果
特記事項なし
その他のインパクト
特記事項なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
第78回日本公衆衛生学会総会
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2021-05-10
更新日
-

収支報告書

文献番号
201922027Z