文献情報
文献番号
201922022A
報告書区分
総括
研究課題名
大学病院で勤務する医師に高いストレスを及ぼすイベントの現状把握
研究課題名(英字)
-
課題番号
19IA1008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
櫻井 順子(順天堂大学 医療看護学部)
研究分担者(所属機関)
- 小林 弘幸(順天堂大学 医学部)
- 川崎 志保理(順天堂大学 医学部)
- 山本 宗孝(順天堂大学 医学部)
- 鈴木 麻衣(順天堂大学 医学部)
- 桑原 博道(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,924,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
医師に対するストレス評価の研究は、アンケート等による主観的な評価が多く、人事や匿名性の担保に対する不安等、個人の主観に影響する場合が考慮されることから、客観的で簡便な評価方法が求められている。
医師のストレス状況を把握し、客観的な評価指標を作成することは、今後の勤務環境の改善に貢献できるだけでなく、医療従事者を監督する病院側が、組織として働きやすい環境を整備する取り組みを遂行する一助となると考えている。日本全体が「働き方改革」に大きな注目を向けている中、医療従事者の働きやすい環境を整備することは、そこで働く専門職を惹きつける要因となり、人材の確保・定着による「医療の質の向上」及び「経営の安定化」につながると考えられている(厚生労働省HP「医療従事者の勤務環境の改善」について)。本研究は、自院の勤務環境改善マネジメントシステムの構築が前進するという点で、大きな意義を持つ。
医師のストレス状況を把握し、客観的な評価指標を作成することは、今後の勤務環境の改善に貢献できるだけでなく、医療従事者を監督する病院側が、組織として働きやすい環境を整備する取り組みを遂行する一助となると考えている。日本全体が「働き方改革」に大きな注目を向けている中、医療従事者の働きやすい環境を整備することは、そこで働く専門職を惹きつける要因となり、人材の確保・定着による「医療の質の向上」及び「経営の安定化」につながると考えられている(厚生労働省HP「医療従事者の勤務環境の改善」について)。本研究は、自院の勤務環境改善マネジメントシステムの構築が前進するという点で、大きな意義を持つ。
研究方法
研究対象者全員へ午前8時/午後6時に自律神経測定および唾液採取を行い、午前8時に研究対象者全員へ「年齢」「性別」、研究対象者のうち医師へ「勤続年数」「連続勤務日数」「スケジュール」をヒアリングした。
脳神経外科医師および心臓血管外科医師を外科系医師群、総合診療科医師を内科系医師群、医師以外の職員をコントロール群とした。
3群における唾液成分、自律神経活動の朝・夕の差を比較、勤務中の医師の業務別および連続勤務日数別による相関を調査した。
3群における朝・夕別の差を比較するために、一元配置分散分析および多重比較により解析した。日内変動のない測定項目の朝・夕の差を比較するために、一対のt検定により解析した。
脳神経外科医師および心臓血管外科医師を外科系医師群、総合診療科医師を内科系医師群、医師以外の職員をコントロール群とした。
3群における唾液成分、自律神経活動の朝・夕の差を比較、勤務中の医師の業務別および連続勤務日数別による相関を調査した。
3群における朝・夕別の差を比較するために、一元配置分散分析および多重比較により解析した。日内変動のない測定項目の朝・夕の差を比較するために、一対のt検定により解析した。
結果と考察
朝測定における職種別の比較では、ChromograninA(蛋白補正)が外科系医師群よりコントロール群の数値が高く、自律神経バランス(LF/HF比)がコントロール群より、外科系医師群および内科系医師群の数値が有意に高かった。夕測定項目における職種別の比較では、Oxytocin がントロール群より外科系医師群の数値が有意に高かく、自律神経バランス(LF/HF比)が朝測定値と同様にコントロール群より、外科系医師群および内科系医師群の数値が有意に高かった。職種別の朝・夕の比較では、コントロール群のOxytocinのみ有意に朝より夕の数値が低かった。医師の連続勤務日数と分析した項目における相関は朝、夕いずれの数値でもみられなかった。
研究の結果、いくつかの群では有意な差はみられたものの、外科群と内科群での比較では有意な差はみられなかった。また、連続勤務日数と測定した数値で分析を行ったが、その数値に有意な差はみられなかった。母数が少ないことによる可能性もあるが、医師に関しては連続勤務日数が生化学的なストレスの数値に影響を及ぼさない可能性が示唆された。また、コントロール群との比較においても、診療科にかかわらず医師のストレス指標のデータの方が低値であった。必ずしも業務がストレスとなっているとはいえない可能性がある。本質的な「医療従事者の働き方改革」のためには、勤務日数や業務時間の削減による疲労の解消だけでなく、その他の職種とは異なる独自の着眼点が必要である可能性が示唆された。
研究の結果、いくつかの群では有意な差はみられたものの、外科群と内科群での比較では有意な差はみられなかった。また、連続勤務日数と測定した数値で分析を行ったが、その数値に有意な差はみられなかった。母数が少ないことによる可能性もあるが、医師に関しては連続勤務日数が生化学的なストレスの数値に影響を及ぼさない可能性が示唆された。また、コントロール群との比較においても、診療科にかかわらず医師のストレス指標のデータの方が低値であった。必ずしも業務がストレスとなっているとはいえない可能性がある。本質的な「医療従事者の働き方改革」のためには、勤務日数や業務時間の削減による疲労の解消だけでなく、その他の職種とは異なる独自の着眼点が必要である可能性が示唆された。
結論
医師は、医療機関勤務の他職種と比較して、ストレスや自律神経の乱れが連続勤務日数や就業時間の影響を受けにくいことが明らかとなった。医師の働き方改革を推進する際には、就業時間制限のみに固執することは注意が必要である。
公開日・更新日
公開日
2021-11-16
更新日
-