地域医療構想の達成のための病院管理者向け組織マネジメント研修プログラムの開発研究

文献情報

文献番号
201922020A
報告書区分
総括
研究課題名
地域医療構想の達成のための病院管理者向け組織マネジメント研修プログラムの開発研究
課題番号
19IA1006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
福田 敬(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 種田 憲一郎(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
  • 小林 健一(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 佐藤 大介(千葉大学医学部附属病院)
  • 柿沼 倫弘(国立保健医療科学院 医療・福祉サービス研究部)
  • 橋本 廸生(公益財団法人日本医療機能評価機構)
  • 筧 淳夫(工学院大学)
  • 渋谷 明隆(北里大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究は、昨今の医療政策における重要課題の1つである「地域医療構想の達成」に資する病院管理者向け人材育成プログラムを開発・評価することを目的として実施した。
研究方法
 本研究では、
(1)医療機関の再編統合事例に関する現地調査
(2)病院の再編統合に関する計量テキスト分析
(3)ケースメソッド法による医療機関の再編統合事例の教材開発
(4)病院幹部職員の人材育成プログラムのあり方
(5)地域医療構想の達成のための病院管理者向け研修の企画と評価
の各分担研究を実施した。
結果と考察
(結果)
(1)医療機関の再編統合事例に関する現地調査
 本研究では佐賀県、山形県米沢市、千葉県においてヒアリング調査を実施した。ヒアリング先においては、統合病院の病院長同士と首長がキーパーソンとなっていた。また、当該地域の医師会と良好な関係性を築けていることにより、統合が順調に前進しているケースもあった。また再編統合のきっかけの一つとして、病院の老朽化による建替えが挙げられた。
(2)病院の再編統合に関する計量テキスト分析
 インタビュー調査から得られたテキストデータを用いて計量テキスト分析を実施した。3つの事例で共通して多く出現した語は、「病院」であった。病院の再編統合が決定している事例同士では、「入る」、「考える」が共通する語であった。インタビュー対象が病院関係者同士の事例では、医師派遣大学、医師会、医師、患者が出現回数として共通して多い特徴がみられた。共起関係をみると、インタビュー対象により県としての役割が分類として抽出された点、病院の再編統合が決まっている場合では医師会との関係性、病院の再編統合に至っていない場合では財源が共起関係の群として抽出されたと解釈可能であった。
(3)ケースメソッド法による医療機関の再編統合事例の教材開発
 本研究で開発する教材では、学習目標を、①ガバナンス・組織行動、②地域分析と財務分析、③ステークホルダーとの連携・交渉、④人的資源管理、⑤その他ワークフロー・システムおよび医療の質、の5つに定め、ケースメソッド法で用いる研修用教材を開発した。
(4)病院幹部職員の人材育成プログラムのあり方
 成人を対象とした研修プログラムとして、本邦において国レベルで開発され実践されている「医師臨床研修制度における指導ガイドライン」、グローバルなレベルで開発された「WHO患者安全カリキュラムガイド(多職種版)」、そして、米国連邦政府が開発し、米国を含む複数の国々で推進されているチームトレーニングプログラムである「チームSTEPPS」をレビューした。
(5)地域医療構想の達成のための病院管理者向け研修の企画と評価
 上記の分担研究1〜4から得られた成果を踏まえて、①病院の再編統合、②医師の働き方改革、の2つを重点テーマとした病院幹部職員向け研修プログラムを開発し、国立保健医療科学院において実際に研修を実施することにより、地域医療構想の達成のために必要な病院管理者向け研修の企画と評価を行った。

(考察)
 地域医療構想の達成に向けて、病院管理者が学習すべきテーマは、自院が存続すればよしとするような経営哲学ではなく、地域全体を持続可能とする考え方が求められている。この考え方は、これまでの病院管理研修での優先課題とは異なるものであり、今日的な課題であると思われる。
 また医療機関の再編統合をテーマとしたケースメソッド教材の開発では、学識経験者らの意見として、これからの病院管理者には、地域の医療需要の的確なデータと将来予測、経営学的な知識、医師の働き方に関する労務管理の知識など、医師の専門性とは異なる事項が求められることが指摘された。さらに、これらの事項を効率的に思考・学習するための方法として、ケースメソッドは有効なものであり、唯一の正解ではなく多様な意見について議論することの重要性が指摘された。
結論
 医療政策にはさまざまな課題があるが、自治体職員だけでなく実際に医療サービスを提供する病院等の医療機関が、当該医療政策の意義やねらいについて正しく理解し、実践する必要がある。とくにトップである病院長が、政策の推進に向けて具体的な検討・意思決定を行うことが、地域医療構想の達成、医師の働き方改革の推進において欠かせないものと思われる。医療政策の理念をどのように具体的な行動へ落とし込むかは、重要かつ難しい課題であり、研修内容・実施方法についてPDCAサイクルを継続して改善を図ることが重要と考える。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201922020Z