特定行為研修の修了者の活用に際しての方策に関する研究

文献情報

文献番号
201922018A
報告書区分
総括
研究課題名
特定行為研修の修了者の活用に際しての方策に関する研究
課題番号
19IA1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
真田 弘美(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 春山 早苗(自治医科大学 看護学部)
  • 須釜 淳子(金沢大学 新学術創成研究機構)
  • 康永 秀生(東京大学 大学院医学系研究科)
  • 磯部 陽(東京医療センター)
  • 太田 秀樹(医療法人アスムス)
  • 吉田 美香子(東北大学 大学院医学系研究科)
  • 仲上 豪二朗(東京大学 大学院医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
8,030,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、特定行為の実施が患者、医療者ならびに医療システムに与える影響を、定量可能かつ全国共通で恒久的に指標を用いて示すことである。この目的を達成するために、今年度は研究1-1「アウトカム指標を明確化する調査枠組み策定」、研究1-2「医師―看護師間の協働評価スケールの開発」、研究2「特定行為研修修了者の活動実態と活動に関連する要因」、を実施した。
研究方法
研究1-1では、国内外の文献レビューおよび特定行為研修修了者らへのヒアリングからアウトカム指標を網羅した。海外の文献レビューからは30件のシステマティックレビューから抽出された134件の文献が対象となった。国内の文献については、原著論文4件、会議録31件が対象となった。次に、33名の特定行為研修修了者および診療看護師、14名の協働する医師、2名の施設管理者、3名の米国ナースプラクティショナーへのヒアリングと5名の専門家の間での討論を経て、妥当性と実施可能性があるアウトカム指標候補を絞り込み、概念化した。
研究1-2では、文献検索により、医師―看護師間の協働を評価する既存尺度の使用可能性について検討した。
研究2では、2019年3月末までに特定行為に係る研修を修了した1,685名を対象に、Web上で質問票調査を実施し、574名(回答率34.1%)の回答を解析対象とした。
結果と考察
研究1-1では、アウトカム指標候補は特定行為の内容の側面から、患者QOL、安全性、労働環境、コストに関するアウトカムの4つに分類されることが明らかとなった。患者QOLに関するアウトカムについては、【QOLの改善】、【身体機能の回復】、【急性期病院からの退院率上昇】、【疾患コントロール改善】、【介護者の負担軽減】に分類が可能であった。さらに、【QOLの改善】は〈客観的アウトカム向上〉と〈主観的アウトカム向上〉に、【身体機能の回復】は〈回復度向上〉と〈治療時間短縮〉に、【疾患コントロール改善】は、〈精神症状改善〉、〈セルフケア行動改善〉、〈生活習慣病・慢性疾患・栄養状態改善〉、〈薬剤使用減少〉、〈薬剤使用状況改善〉に分類することが可能であった。安全性に関しては、【予期せぬトラブルの減少】、【想定し得るトラブルの減少】に分類することが可能であった。労働時間に関するアウトカムは、【呼び出し件数の減少】【労働時間の短縮】、【医師の時間外の対応減少】、【看護師の職務満足度の向上】に分類することが可能であった。【労働時間の短縮】は〈勤務時間の短縮〉、〈医師の処置時間短縮〉に分類が可能であった。【医師の時間外の対応の減少】は〈時間外のPICC挿入減少〉、〈時間外の輸液オーダー減少〉、〈時間外のドレーン抜去減少〉に分類が可能であった。コストに関するアウトカムは、【物件費の削減】、【収益増加】、【人件費の削減】に分類することが可能であった。
研究1-2では、 医師―看護師間の協働を評価する既存尺度の使用可能性について、病院で働く医師―看護師間の協働を評価する尺度について1件の論文が抽出され、その内容妥当性を再検討した結果、既存尺度Collaborative Practice Scales 日本語版の表現を一部修正することにより、特定行為実施の効果指標として採用することを可能にした。
研究2では、調査対象は、一般看護師191名、認定/専門看護師277名、診療看護師106名であった。過去1か月間に特定行為を1回以上実施していた者の割合は、一般看護師では70.3%、認定/専門看護師57.5%、診療看護師86.2%であった。月100回以上特定行為を実施するハイパフォーマーは、一般看護師、認定/専門看護師、診療看護師のすべてに存在した。特定行為のハイパフォーマーであることの操作的定義は、特定行為の実施回数が多いことはもちろんのこと、実施回数が多いことに関連する要因として、診療看護師であること、施設内での特定行為研修修了者間の役割分担があること、包括指示により実施できていることが挙げられた。
結論
特定行為研修修了者の効果を評価するアウトカム指標候補を抽出し、調査枠組みを明確化するとともに、特定行為のハイパフォーマーであることの定義を明らかにした。次年度は、まず研究3「アウトカム指標の選定のためのプレテスト」として、研究2で明らかにしたハイパフォーマーの定義を用いて対象者を抽出し、研究1-1で提案した指標を精選する予定である。次々年度は、研究4「全国調査用プロトコルの作成と効果検証」として、前向きコホート研究を実施する。この全国調査において特定行為研修修了者の所属する施設である曝露群と所属しない対照群で有意差がみられた項目が、今後特定行為の効果をみるために恒久的に評価すべき項目であるとされ、効果検証のためのプロトコルが策定できると期待する。

公開日・更新日

公開日
2021-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-11-10
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201922018Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
10,438,000円
(2)補助金確定額
10,438,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,836,662円
人件費・謝金 577,611円
旅費 2,640,396円
その他 2,986,721円
間接経費 2,408,000円
合計 10,449,390円

備考

備考
その他の収入として自己資金11389円と預金利息1円を含むため。

公開日・更新日

公開日
2023-06-19
更新日
-