医療安全管理体制の可視化と人材育成のための研究

文献情報

文献番号
201922008A
報告書区分
総括
研究課題名
医療安全管理体制の可視化と人材育成のための研究
課題番号
H30-医療-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 能雅(名古屋大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠山信幸(自治医科大学医学部一般・消化器外科)
  • 南須原康行(北海道大学医学部附属病院医療安全管理学)
  • 兼児敏浩(三重大学医学部附属病院医療安全・感染管理学)
  • 浦松雅史(東京医科大学医学部医療の質・安全管理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,557,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
法令等の整備に伴い、医療安全管理部門への医師の配置は徐々に進められているが、これらが有効に機能しているかどうかの測定方法の開発は十分でなく、施設間の比較もできる状況にない。したがって専従・専任医師の役割や、スキル、コンピテンシーなどを定めにくく、教育方法やプログラムの見直しも進んでいない。そこで本研究では、①医療安全管理体制の評価指標・評価方法とその応用方法の開発、②医療安全管理部門に従事する者に求められるスキル・コンピテンシーの特定、③医療安全管理者の教育方法(プログラム)の検討、という三つの課題に取り組んだ。
研究方法
1年目の研究において、組織のインシデントレポートから組織のリスクを測る各種(過失、重症、リスク、インパクト)スコア・偏差(図 2)を開発した。これらを用いることで、施設別のリスクスコアの比較(図 3)、部署のリスクスコアの推移の把握(図 4)、報告量の多寡を補正したリスク偏差の比較(図 5)が可能である。また、これらの各種スコア・偏差を、名古屋大学以外の各施設でも算出できるように図 6のプログラムを開発した。2年目の教育プログラムの効果測定、プログラムの改訂において、これらの各種スコア・偏差、算出プログラムを用いる。
平成27・28年度厚労科研の成果である医療安全活動のループ図 1に基づき、医師対象の教育プログラムを作成する。受講期間は半年間とし総授業時間数は150時間とする。いくつかのカテゴリーごとに到達目標SBOs(Specific Behavioral Objectives)を定め、受講前と受講後の到達レベルを4段階で評価する。また授業ごとに到達目標を定め、受講前と受講後の到達レベルをVASスケールで自己評価する。そのほか、授業ごとにいくつかのアンケートを実施し、また受講生の施設に関するアンケートを実施する。これらの評価結果を施設のリスク量測定結果と関連して解析し、教育プログラムの改訂を行う(図 56)。
結果と考察
結果、以下の3点を達成した。
1. 機械学習技術を用いてインシデントレポートを分析することによる、医療集団に潜在するリスク量の算出・比較方法(リスク指標)の開発と応用(図 2~図 6)。
2. 医療の質向上・患者安全に専門性を有する医師人材養成プログラム(150時間)の開発と実施(図 7~図 55)。
3. 上記1.2.を組み合わせた、患者安全に成果を上げることのできる「人材養成システム評価体制」の開発(図 56)。
本研究で、開発したリスク指標を活用することで、病院間、部署間のリスク比較、経年的変化の把握、リスク原因の特定、医療安全教育への応用等が可能となる。さらには、外部監査、行政監査時における客観指標としての活用や、リスク低減による医療費削減効果の測定、医療事故予知への応用等が期待できる。また、本研究で開発した人材養成プログラムとその評価システムは、医師のみならず、多職種(看護師、薬剤師、その他)の医療安全人材養成にも応用可能である。
結論
医療の質・患者安全に専門性を有する医師人材養成プログラムを開発、実施(150時間)した。医療組織を継続的にモニタリングおよび支援し、医療安全教育プログラムを継続的に改善する体制を構築した。
本研究で開発したリスク指標を用いることで、病院間、部署間リスク比較、リスクの経年的変化の把握、リスク原因の特定、医療安全教育への応用等が可能となる。さらには、外部監査、行政監査時における客観指標としての活用や、リスク低減による医療費削減効果の測定、医療事故予知への応用等が期待できる。また、本研究で開発した人材養成プログラムと、その評価システムは、医師のみならず、多職種(看護師、薬剤師、その他)の医療安全人材養成にも応用可能である。

公開日・更新日

公開日
2021-04-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-04-28
更新日
2021-11-09

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201922008B
報告書区分
総合
研究課題名
医療安全管理体制の可視化と人材育成のための研究
課題番号
H30-医療-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
長尾 能雅(名古屋大学医学部附属病院 医療の質・安全管理部)
研究分担者(所属機関)
  • 遠山信幸(自治医科大学附属さいたま医療センター)
  • 南須原康行(北海道大学病院 医療安全管理学)
  • 兼児敏浩(三重大学病院 医療安全・感染管理学)
  • 浦松雅史(東京医科大学病院 医療の質・安全管理学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
法令等の整備に伴い、医療安全管理部門への医師の配置は徐々に進められているが、これらが有効に機能しているかどうかの測定方法の開発は十分でなく、施設間の比較もできる状況にない。したがって専従・専任医師の役割や、スキル、コンピテンシーなどを定めにくく、教育方法やプログラムの見直しも進んでいない。そこで本研究では、①医療安全管理体制の評価指標・評価方法とその応用方法の開発、②医療安全管理部門に従事する者に求められるスキル・コンピテンシーの特定、③医療安全管理者の教育方法(プログラム)の検討、という三つの課題に取り組んだ。
研究方法
(1)インシデントレポートの自動重み付けと施設別リスク量の算出
多くの医療機関では、日常的に職員からインシデントレポート(以下、レポート)を集積し、平時の改善活動に活用している。このレポートを機械学習の技術を用いて分析することにより、医療機関に潜在するリスクを数値化することを試みた。
①TERMスコア、レポートスコア、組織スコア
名古屋大学医学部附属病院(以下、名大病院)の医療安全管理者(以下、GRM(General Risk Manager))は、全てのレポートについて、重症性、過失性を判定している(図 2、図 3)。この判定結果を教師データとして、機械的に言葉に重み(以下、Termスコア)をつける。
次に、レポートごとに、Termスコアの平均値を計算し、これをレポートスコアとし、さらに組織(施設または部署)ごとに、その組織に含まれる全てのレポートのスコアの平均値を計算し、これを組織スコアとする(図 9)。レポートスコアと組織スコアにはそれぞれに重症スコアと過失スコアがある。
②リスクスコア
レポートの重症スコアと過失スコアを組み合わせてレポートのリスクスコアを定義する。組み合わせ方には、加算、乗算等、いくつかの方法が考えられ(図 10)、GRMのリスク評価と最も一致する組み合わせ方を探索する。
③報告量に応じたリスクスコア(リスク偏差)
報告量が多い部署は、重症度や過失度が低いレポートも多く作成し、報告量が少ない部署は、重症度や過失度が低いレポートはあまり作成していない、ということは経験的に知るところである。そこで、共同研究施設における部署の報告量とリスクスコアを調べ、報告量による標準的なリスクスコアを算定し、この標準的なリスクスコアとの乖離(以下、リスク偏差)を算出することで、報告量の異なる組織のリスクスコアの比較を可能とする。
④インパクトスコア、インパクト偏差
複数のGRMが重要と判断したレポートを基に、新たに算出したスコアをインパクトスコアとする(図 8)。インパクトスコアも報告量に応じた標準的なスコアを算出することができ、この標準値との乖離をインパクト偏差とする。
以上の名大病院のGRMの判断を教師データとした各種スコア・偏差の連関を図 5に示す。
(2)教育プログラムの策定・実施、効果測定、プログラムの改訂
平成27・28年度厚労科研の成果である医療安全活動のループ図 1に基づき、医師対象の教育プログラムを作成する。受講期間は半年間とし総授業時間数は150時間とする。到達目標SBOs(Specific Behavioral Objectives)を定め、受講前と受講後の到達レベルを4段階で評価する(図 115)。
結果と考察
結果、以下の3点を達成した。
1.機械学習技術を用いてインシデントレポートを分析することによる、医療集団に潜在するリスク量の算出・比較方法(リスク指標)の開発と応用(図 2~図 65)。
2.医療の質向上・患者安全に専門性を有する医師人材養成プログラム(150時間)の開発と実施(図 66~図 114)。
3.上記1.2.を組み合わせた、患者安全に成果を上げることのできる「人材養成システム評価体制」の開発(図 115)。
結論
インシデントレポートから医療組織のリスク量を数値化することに成功した。また、医療の質・患者安全に専門性を有する医師人材養成プログラムを開発、実施(150時間)した。医療組織を継続的にモニタリングおよび支援し、医療安全教育プログラムを継続的に改善する体制を構築した。
本研究で開発したリスク指標を用いることで、病院間、部署間リスク比較、リスクの経年的変化の把握、リスク原因の特定、医療安全教育への応用等が可能となる。さらには、外部監査、行政監査時における客観指標としての活用や、リスク低減による医療費削減効果の測定、医療事故予知への応用等が期待できる。また、本研究で開発した人材養成プログラムと、その評価システムは、医師のみならず、多職種(看護師、薬剤師、その他)の医療安全人材養成にも応用可能である。

公開日・更新日

公開日
2021-04-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-04-28
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201922008C

収支報告書

文献番号
201922008Z