地域包括ケアシステムにおける効果的な訪問歯科診療の提供体制等の確立のための研究

文献情報

文献番号
201922005A
報告書区分
総括
研究課題名
地域包括ケアシステムにおける効果的な訪問歯科診療の提供体制等の確立のための研究
課題番号
H30-医療-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
戸原 玄(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 野原幹司(大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室)
  • 佐々木好幸(東京医科歯科大学統合研究機構)
  • 古屋純一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 片桐さやか(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 中根綾子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 原豪志(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 上田貴之(東京歯科大学年歯科補綴学講座)
  • 大野友久(浜松市リハビリテーション病院)
  • 目黒道生(鳥取市立病院歯科,リハビリテーション部,地域医療総合支援センター生活支援室 )
  • 林雅晴(淑徳大学看護栄養学部看護学科)
  • 宮田理英(東京北医療センター小児科)
  • 千葉由美(横浜市立大学医学研究科)
  • 中川量晴(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 佐藤裕二(昭和大学歯学部高齢者歯科学教室)
  • 藤井政樹(昭和大学歯学部インプラント歯科学)
  • 水谷慎介(九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学全身管理歯科学分野)
  • 谷口祐介(福岡歯科大学咬合修復学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,314,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域包括ケアシステムを構築する中で訪問歯科診療の推進は重要だが、訪問歯科診療に対する現行の教育が十分であるとは考えられない。また、家族を含めた多職種とのやり取りの中関わり続けるスタンスが歯科は得意ではなく、通常は歯科治療が終了すると介入も終了となろう。過去に導入された地域の口腔保健センターでの訪問歯科診療車も現在あまり使用されていない。近年では訪問歯科診療や摂食嚥下に関するセミナーは多数開催されているが、実際の臨床場面の見学実習を受けられるものではない。加えて、2016年インプラント学会による「歯科訪問診療におけるインプラント治療の実態調査」からは、訪問でのインプラントへの対応は不十分なことが示された。申請者が作成した摂食嚥下関連医療資源マップ(厚労科研→AMED)は訪問で嚥下障害に対応可能なクリニックの情報を明示したが、インプラントへ対応可能なクリニックは不明である。さらに申請者らは重度の嚥下障害を持つ患者では口腔機能の異常が著しい歯列不正の原因となりえること(田村ら2017在宅医学会等)、嚥下障害への訪問での対応にはICTが有用であること(吉中ら2017口腔ケア学会)を近年報告した。よりよい訪問歯科診療の普及と、従来触れてこられなかった部分の対応の充実が必要である。
以上より、初年度は①在宅療養要介護高齢者に対する歯科介入状況の実態事前調査、②訪問診療を行っている歯科医院に対する介入状況事前調査、③大学病院での訪問歯科診療の実際とリカレント教育状況事前調査、④重度摂食嚥下障害患者に対する歯科介入状況および歯列不正を主とした口腔機能調査をベースとして、訪問歯科診療推進マニュアル作成の準備を進めた。
今年度は⑤訪問歯科診療推進マニュアルの完成、⑥リカレント教育開始と効果判定、⑦新規介入事例検討、に追加し⑧オンライン診療の実態把握および診療データの蓄積を行うこととした。
研究方法
初年度行った調査は①-④であった。これらはマニュアル作成のベースおよび次年度のリカレント教育に続く調査であるために、東京医科歯科大学および調査業務委託予定の矢野経済研究所にて早急に行った。調査計画は統計の専門家である佐々木の校閲を受けて計画した。
結果と考察
訪問歯科診療推進マニュアルには従来の歯科診療の内容のみならず歯列不正などにも目を向けることなど新しい知見も踏まえ、さらには多職種連携を円滑に行えるようにすることの重要性に触れることが重要であると考えられた。
ただしマニュアルの作成を通じて、訪問歯科診療のエビデンスが十分とはいいがたいと考えられた。
オンライン診療を行っている歯科医師はかなり少数ではあったが、摂食嚥下障害のように評価や指導を中心とする診療については親和性が高かったため、導入を増やしつつ課題を明示化するのがよいのではないかと考えられた。
結論
訪問歯科診療マニュアルを完成することができた。オンライン診療は導入を進めつつ課題を明示化するのがよいと思われた。

公開日・更新日

公開日
2020-11-30
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201922005B
報告書区分
総合
研究課題名
地域包括ケアシステムにおける効果的な訪問歯科診療の提供体制等の確立のための研究
課題番号
H30-医療-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
戸原 玄(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科老化制御学系口腔老化制御学講座高齢者歯科学分野)
研究分担者(所属機関)
  • 野原幹司(大阪大学大学院歯学研究科高次脳口腔機能学講座顎口腔機能治療学教室&)
  • 佐々木好幸(東京医科歯科大学統合研究機構&)
  • 古屋純一(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 片桐さやか(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 中根綾子(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 原豪志(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科)
  • 上田貴之(東京歯科大学年歯科補綴学講座)
  • 大野友久(浜松リハビリテーション病院)
  • 目黒道生(鳥取市立病院歯科,リハビリテーション部,地域医療総合支援センター生活支援室)
  • 林雅晴(淑徳大学看護栄養学部看護学科)
  • 宮田理英(東京北医療センター小児科)
  • 千葉由美(横浜市立大学医学研究科)
  • 中川量晴(東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 )
  • 佐藤裕二(昭和大学歯学部高齢者歯科学教室)
  • 藤井政樹(昭和大学歯学部インプラント歯科学)
  • 水谷慎介(九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座高齢者歯科学全身管理歯科学分野)
  • 谷口祐介(福岡歯科大学咬合修復学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域包括ケアシステムを構築する中で訪問歯科診療の推進は重要だが、現行の教育、臨床、そして多職種連携が十分であるとは考えらづらい。よりよい訪問歯科診療を普及させるため、複数の調査をもとに訪問歯科診療を推進するマニュアルを作成することを軸として本研究を行うことを目的とする。
研究方法
初年度は主として来年度作成予定のマニュアルのための基礎的な4つの調査(①在宅療養要介護高齢者に対する歯科介入状況の実態事前調査、②訪問診療を行っている歯科医院に対する介入状況事前調査、③大学病院での訪問歯科診療の実際とリカレント教育状況事前調査、④重度摂食嚥下障害患者に対する歯科介入状況および歯列不正を主とした口腔機能調査)を行った。
その他、⑤モデル原稿の作成、⑥訪問診療でのインプラント対応可能クリニックマップ作製を行ったので下記に示す。また2年目は主として前年度の調査結果をふまえ、⑦歯科訪問診療推進マニュアルの作成を行った。その他、⑧リカレント教育と効果の判定、⑨新規介入事例検討、⑩オンライン診療の実態把握およびICTを応用したオンライン診療データの蓄積を行った。
結果と考察
①主として訪問看護ステーションに対する、歯科からすると他職種となる職種に対するアンケートを行うことができた。近年重要であるとうたわれている多職種連携の実態が十分であるとは考えづらかったため、マニュアルには連携についても十分に述べる必要があると考えられた。
②訪問看護ステーションに対する調査結果と同様に、歯科から見た場合にも他職種との連携が十分であるとは考えづらかった。また、訪問歯科診療車の利用状況についても、併せてマニュアルに含めることが重要であると考えられた。
③超高齢社会における歯科訪問診療のニーズの高まりにあたり、これらに対応できる歯科医師を育成することが重要で、卒前のみだけではなく卒後教育の充実が重要であり、研修先も施設だけではなく、実際の居宅現場においても訪問歯科診療の教育をより発展させる必要がある。
④訪問歯科診療では、一般の歯科診療に加えて口腔ケアが重要であるということまでは従来から述べられており、近年では摂食嚥下障害への対応の普及が著しい。それに加えて、歯列不正への観点も重要であり、本マニュアルに加える必要があると考えられた。
⑤マニュアル全体の作成を来年度進め、広く使うことができるように広報活動なども併せて行っていきたい。
⑥登録数を増やし、全国的にインプラントの問題で難渋しているような患者と医療機関をつなぐ情報源として役立てるように広報活動を併せて行っていきたい。
⑦完成物はHDCおよび歯科医師会、歯科大学に配布し周知する。英訳については当大学と関係の深いチュラロンコン大学やマヒドン大学などへの配布を考えている。
⑧本研究成果は、摂食嚥下リハに重点を置いた参加型リカレント教育を全国に拡大させるために活用する。
⑨今回の事例より、歯列不正への対応、摂食嚥下訓練、栄養指導、呼吸指導のニーズが高いことが示唆された。特に訪問診療における歯列不正への対応は、矯正等が困難であることから、歯列不正が生じる前に予防的処置を講じることの重要性が示された。
⑩歯科領域におけるオンライン診療の実績や安全性に関する研究成果は不足している。今後さらにデータを蓄積し、今回の成果とともに適切な実施のための方法・技術等を研究する。
結論
研究により得られた成果の今後の活用・提供:歯科領域におけるオンライン診療の実績や安全性に関する研究成果は不足している。今後さらにデータを蓄積し、今回の成果とともに適切な実施のための方法・技術等を研究する。

公開日・更新日

公開日
2020-11-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201922005C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究はエビデンスが少なく、かつ標準化された普及が十分ではない訪問歯科診療についてのマニュアルを作成したことが最大のプロダクトである。結果、訪問歯科診療の効果自体のエビデンスが十分ではないことも逆説的に見えてはきたものの、補綴や保存などの一般歯科治療のみならず、重度要介護者の歯列不正の問題やインプラント管理の問題、遠隔診療に対する知見など、新しい知見が得られた上での訪問歯科診療推進マニュアルを完成することができた。また、特に追加でオンライン診療の実態調査や問題点を抽出できたことも収穫であった。
臨床的観点からの成果
訪問歯科診療の場面では欠損があったら補綴するのか、残根は抜歯すべきなのか、など外来とは異なる治療方針が必要になるだけではなく、摂食嚥下障害やターミナルケア、さらにはへき地での治療など一般の開業医が従来触れてくることがなかった部分への対応が必要となり、それらの指針を作成することができた。また、特に訪問歯科診療に対するのリカレント教育の現状を明らかにしたことで、今後そのような教育を求める歯科医師へはどのような対応が必要であるのかを提示することができた。
ガイドライン等の開発
ガイドラインではなく、訪問歯科推進マニュアルを作成したが、その作成には日本老年歯科医学会在宅歯科医療委員会、および全国在宅療養支援歯科診療所連絡会の協力を得た。さらに本マニュアルは英訳を作成したため、今後特に必要となるアジア諸国での利用が期待できる。
2020年の他の厚労科研にて「歯科診療における情報通信機器を用いた診療についてのルール整備に向けた研究」という報告を行うことができ、マニュアルの作成にも至った。これは本研究が礎の一つとなったものと考えている。
その他行政的観点からの成果
マニュアルの作成に際し、全国在宅療養支援歯科診療所連絡会に協力をいただいたことがあげられる。マニュアルは完成したばかりなので実際の利用は今後となるものの、全国在宅療養支援歯科診療所連絡会のメンバーはそれぞれの地域に根差した訪問診療を行っている歯科医師ばかりであり、地域の訪問医や行政とも近い。行政的観点ということで考えると、この連絡会でこのようなマニュアルを利用して地域医療を活性化させていくことが見込まれる。
その他のインパクト
本研究班の中で行ったマニュアルは訪問診療での歯科臨床―在宅歯科医療をさらに高めるClinical QuestionsとQuestions&Answers,医歯薬出版という書籍として発刊することができ、日本老年歯科医学会の中でもっとも権威のある賞を受賞することができた。
講演活動は213回行った。

発表件数

原著論文(和文)
1件
戸原玄,中川量晴編:訪問診療での歯科臨床 在宅歯科医療をさらに高めるClinical QuestionsとQuestions & Answers,医歯薬出版,東京,2020年
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
213件
医療、介護、一般向けなどの講演活動

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-11-30
更新日
2023-05-24

収支報告書

文献番号
201922005Z