災害時小児・周産期医療体制の構築と認知向上についての研究

文献情報

文献番号
201922002A
報告書区分
総括
研究課題名
災害時小児・周産期医療体制の構築と認知向上についての研究
課題番号
H29-医療-一般-010
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 津田 尚武(久留米大学 産婦人科)
  • 鈴木 真(亀田総合病院 産婦人科)
  • 和田 和子(大阪母子医療センター 新生児科)
  • 井田 孔明(帝京大学医学部附属溝口病院 小児科)
  • 米倉 竹夫(近畿大学医学部奈良病院 小児外科)
  • 伊藤 友弥(あいち小児保健医療総合センター 救急科)
  • 岬 美穂(鶴和 美穂)(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 菅原 準一(東北大学東北メディカル・メガバンク機構 周産期医学)
  • 中井 章人(日本医科大学多摩永山病院 産婦人科)
  • 大木 茂(聖隷浜松病院)
  • 中村 友彦(長野県立こども病院)
  • 井本 寛子(日本看護協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,133,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、小児・周産期・産婦人科領域の諸学会・団体と連携協力し、災害時に小児・周産期医療領域の対応で必要となる情報システム(EMIS-PPM)を迅速に開発すること、それを活用した体制の整備を進めること、そのような活動を担う人材の効率的な養成とその活動を支援するためのツールの開発を行うことを目的とした。
研究方法
小児・周産期の医療提供体制はそれぞれ都道府県の医療計画の5疾病5事業の一つとして整備されてきているが、災害医療領域との連携は十分とは言えない。本研究では特に情報の共有と人材の交流、連携関係の強化に焦点をあてて研究を進めた。
具体的には、「災害時小児周産期リエゾン研修会の充実に関する検討」「小児・周産期医療災害時情報システム(EMIS-PPM)の構築と広域災害救急医療情報システム(EMIS)との連動に関する検討」「大規模災害時に収集・共有されるべき小児医療関連情報に関する研究」「小児周産期リエゾンの活動を支援する体制の整備に関する研究」の4分担研究課題を並行的に進めた。
研究組織としては、小児・周産期・産婦人科領域の学会・団体の災害対策担当者に研究分担者として参加してもらうことで、迅速な体制の整備と領域内の連携強化をはかった。
結果と考察
大規模災害発生時に、災害時小児周産期リエゾン(DLPPM)が有効に活動を行うためには、都道府県医療救護本部内で適切に活動できる体制の整備に加えて、被災地の小児周産期医療施設及び医療従事者等から災害時にも安定して情報収集を行うことができる情報システム、その地域に必要な人的・物的・経済的支援を提供する行政及び被災地外の組織との連携体制が必要になる。
DLPPMの活動が必要な実災害が毎年発生している状況を考慮し、本研究では、研究の開始年度より、DLPPMの活動のために必要な情報システム及びツールの提供を行い、その有効性、改善点等の検討を通して、より有効性の高いシステム及びツールの開発を進めてきた。
本研究の最終年度に際して、EMIS-PPMについては、懸案であった小児領域の情報伝達のための掲示板機能の全面的強化と日本小児科学会災害対策委員会がその運営を担当する体制の整備を実現するとともに、周産期領域の情報について、検索の利便性を高めるとともに掲示板機能の強化を行うことができた。本研究の開始当初の目標は達成し、実災害で十分活用できる小児周産期領域の災害情報システムの社会実装を実現することができたと考えられる。
 また、これも本研究の目標の一つであったDLPPMの活動支援ツールとして「災害時小児周産期リエゾン活動マニュアル(案)」を作成することができた。このマニュアルの一部を構成している「災害時小児周産期リエゾン 活動チェックリスト」、「アクションカード」は本研究が過去2年間の研究で検討してきたものであり、このマニュアルを各都道府県の実情に即して適宜修正することにより、全国のDLPPMの負担を大幅に軽減することが期待される。
結論
本研究では、DLPPMの活動が必要な実災害が毎年発生している状況を考慮し、研究の開始年度より、DLPPMの活動のために必要な情報システム及びツールの提供を行い、その有効性、改善点等の検討を通して、より有効性の高いシステム及びツールの開発を進めてきた。
 本研究の最終年度に際して、EMIS-PPMについては、懸案であった小児領域の情報伝達のための掲示板機能の全面的強化と日本小児科学会災害対策委員会がその運営を担当する体制の整備を実現するとともに、周産期領域の情報について、検索の利便性を高めるとともに掲示板機能の強化を行うことができた。

公開日・更新日

公開日
2021-05-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-05-11
更新日
2021-11-09

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201922002B
報告書区分
総合
研究課題名
災害時小児・周産期医療体制の構築と認知向上についての研究
課題番号
H29-医療-一般-010
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
海野 信也(北里大学 医学部産婦人科学)
研究分担者(所属機関)
  • 津田尚武(久留米大学 産婦人科)
  • 鈴木 真(亀田総合病院 産婦人科)
  • 和田和子(大阪母子医療センター 新生児科)
  • 井田孔明(帝京大学医学部附属病院溝口病院 小児科)
  • 米倉竹夫(近畿大学医学部奈良病院 小児外科)
  • 伊藤友弥(あいち小児保健医療総合センター 救急科)
  • 岬 美穂(鶴和 美穂)(独立行政法人国立病院機構災害医療センター)
  • 菅原準一(東北大学東北メディカル・メガバンク機構 周産期医学)
  • 中井章人(日本医科大学多摩永山病院 産婦人科)
  • 大木 茂(聖隷浜松病院)
  • 中村友彦(長野県立こども病院)
  • 井本寛子(日本看護協会)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究分野 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、小児・周産期・産婦人科領域の諸学会・団体と連携協力し、災害時に小児・周産期医療領域の対応で必要となる情報システム(EMIS-PPM)を迅速に開発すること、それを活用した体制の整備を進めること、そのような活動を担う人材の効率的な養成とその活動を支援するためのツールの開発を行うことを目的とする。
研究方法
本研究では特に情報の共有と人材の交流、連携関係の強化に焦点をあてて研究を進めた。
具体的には、「災害時小児周産期リエゾン研修会の充実に関する検討」「小児・周産期医療災害時情報システム(EMIS-PPM)の構築と広域災害救急医療情報システム(EMIS)との連動に関する検討」「大規模災害時に収集・共有されるべき小児医療関連情報に関する研究」「小児周産期リエゾンの活動を支援する体制の整備に関する研究」の4分担研究課題を並行的に進めた。
研究組織としては、小児・周産期・産婦人科領域の学会・団体の災害対策担当者に研究分担者として参加してもらうことで、迅速な体制の整備と領域内の連携強化をはかった。
情報システムは日本産科婦人科学会が開発を進めてきた産科領域の災害情報システムをベースに開発を進めた。
また、新しいDLPPMの養成講習の充実及びDLPPMの活動を支援するためのツール開発を進めることを通じて、災害時にリエゾン活動が円滑に対応できる体制の整備を進めた。
結果と考察
・分担研究課題1「災害時小児周産期リエゾン研修会の充実に関する検討」においては、「災害時小児周産期リエゾン養成研修会」を、本研究の成果を踏まえてより充実した内容に発展させることができたと考えられる。今後も同様の取り組みの継続が重要と考えられた。
・分担研究課題2「小児・周産期医療災害時情報システム(EMIS-PPM)の構築と広域災害救急医療情報システム(EMIS)との連動に関する検討」においては、3年間の研究を通じてEMIS-PPMについて当初計画したすべての機能の搭載が完了し、常時使用可能な状態で管理されている。本研究を通じて小児・周産期領域の災害情報システムが社会実装され、研究期間中の実災害および諸訓練で活用され、その有用性を確認することができた。
・分担研究課題3「大規模災害時に収集・共有されるべき小児医療関連情報に関する研究」においては、日本小児科学会災害対策委員会を中心に小児関連情報を更に充実させ、小児領域の専門家による運営を可能にするための検討が行われ、日本小児科学会災害対策委員会が管理する情報システムとして機能できる体制を整備した。
・分担研究課題4「小児周産期リエゾンの活動を支援する体制の整備に関する研究」においては、「災害時小児周産期リエゾン連絡協議会」をその必要性、持続可能とするための組織形態の検討、発足のための具体的な計画の立案まで、全面的に支援し、本研究期間のうちに正式発足を達成した。2020年2月以降のCOVID-19の国内の流行に際して、都道府県によっては災害時小児周産期リエゾンが患者の受入先調整等の業務を担当する状況になってきており、連絡協議会を介した都道府県の枠を越えた活発な情報共有が実現しており、リエゾンの活動を支援する組織としての連絡協議会の有用性が示されつつある。また、本研究期間を通じてリエゾン活動の支援ツールとして、「災害時小児周産期リエゾン 活動チェックリスト」および「災害時小児周産期リエゾン活動マニュアル(案)」を作成し、実災害時の、DLPPMを支える体制及び資料の整備を進めることができた。
結論
本研究は、3年間の活動を通じて、ほぼ研究計画どおりに研究を進めることができた。本研究の結果、日本産科婦人科学会大規模災害対策情報システムを基盤として、小児・周産期領域に幅広く対応可能な災害情報システムであるEMIS-PPMを構築し、常時利活用可能な状態での社会実装を達成した。このシスステムは小児科、産婦人科の基本領域学会である日本小児科学会および日本産科婦人科学会が管理・運営しており、今後も長期間にわたって維持されることが期待できる。また、本研究の結果、大規模災害発生時に災害対策本部の保健医療調整本部において災害医療コーディネータをサポートする役割をはたす、災害時小児周産期リエゾンの活動を支援するための組織である「災害時小児周産期リエゾン連絡協議会」を公的な組織の下に発足させ、リエゾン活動の支援ツールの開発を行うことを通じて、災害時小児周産期リエゾンが緊急時にも適切に活動するための体制整備を進めることができた。
 本研究では、新たに制度化された災害時小児周産期リエゾンの活動が行われる際に最も必要となる体制・機能の社会実装を行ったが、今後もこの体制・機能のさらなる充実のための検討を継続する必要があると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2021-05-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2021-05-11
更新日
2021-11-09

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201922002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
日本小児科学会災害対策委員会を中心に小児関連情報を更に充実させ、小児領域の専門家による運営を可能にするための検討が行われ、日本小児科学会災害対策委員会が管理する情報システムとして機能できる体制を整備した。
臨床的観点からの成果
小児・周産期医療災害時情報システム(EMIS-PPM)の構築を進め、当初計画したすべての機能の搭載が完了し、常時使用可能な状態で管理されている体制を整備した。
ガイドライン等の開発
小児・周産期領域の災害情報システムが社会実装され、研究期間中の実災害および諸訓練で活用され、その有用性を確認することができた。
その他行政的観点からの成果
・厚生労働省が開催している災害時小児周産期リエゾン養成研修会に関する検討を行い、その充実に貢献した。全国の災害時小児周産期リエゾンの連絡組織である「災害時小児周産期リエゾン連絡協議会」をその必要性、持続可能とするための組織形態の検討、発足のための具体的な計画の立案まで、全面的に支援し、本研究期間のうちに正式発足を達成した。
その他のインパクト
2020年2月以降のCOVID-19の国内の流行に際して、都道府県によっては災害時小児周産期リエゾンが患者の受入先調整等の業務を担当する状況になってきており、連絡協議会を介した都道府県の枠を越えた活発な情報共有が実現した。

発表件数

原著論文(和文)
5件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
12件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
12件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
31件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
古家信介、吉野智美、和田 和子 他
平成30年大阪府北部地震における災害時小児周産期リエゾンの活動報告
日本小児科学会雑誌 , 123 (9) , 1436-1439  (2019)
原著論文2
Tanoue K, Nishigori H, Watanabe Z, et al
Interannual Changes in the Prevalence of Intimate Partner Violence Against Pregnant Women in Miyagi Prefecture After the Great East Japan Earthquake: The Japan Environment and Children's Study.
J Interpers Violence  (2019)
doi: 10.1177/0886260519881517
原著論文3
Kuriyama S, Metoki H, Kikuya M,et al
Tohoku Medical Megabank Project Study Group. Cohort Profile: Tohoku Medical Megabank Project Birth and Three-Generation Cohort Study (TMM BirThree Cohort Study): Rationale, Progress and Perspective.
Int J Epidemiol.  (2019)
doi: 10.1093/ije/dyz169.
原著論文4
中井章人
災害時小児周産期リエゾンの養成の実際と課題
周産期医学 , 49 (9) , 1206-1219  (2019)
原著論文5
大木茂
災害時小児周産期リエゾンの活動内容 発災時 新生児
周産期医学 , 49 (9) , 1226-1230  (2019)
原著論文6
菅原準一
災害時の小児・周産期医療の問題点 産科
周産期医学 , 49 (9) , 1186-1190  (2019)
原著論文7
鈴木真
災害時小児周産期リエゾンの活動内容-平時:産科
周産期医学 , 49 (9) , 1213-1216  (2019)
原著論文8
和田和子
災害時小児・周産期の活動の実際と問題点 平成29年度大規模地震時医療活動訓練
周産期医学 , 49 (9) , 1272-1275  (2019)
原著論文9
津田尚武
「災害時小児周産期リエゾンの活動内容-発災時:産科」
周産期医学 , 49 (9) , 1221-1225  (2019)
原著論文10
井田孔明
災害時の子どもの食の安全.
小児内科 , 51 , 1249-1253  (2019)
原著論文11
井田孔明
バイオサイコソーシャルモデルで考える災害復興時の小児に対する支援
小児内科 , 51 , 1827-1830  (2019)

公開日・更新日

公開日
2021-05-11
更新日
-

収支報告書

文献番号
201922002Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
2,743,000円
(2)補助金確定額
2,454,080円
差引額 [(1)-(2)]
288,920円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 0円
人件費・謝金 0円
旅費 251,458円
その他 1,592,622円
間接経費 610,000円
合計 2,454,080円

備考

備考
研究計画当初、研究の遂行上必要な、調査及び事務作業について、人件費及び謝金を計上したが、研究分担者の尽力で、人件費及び謝金の発生を抑えることができた。研究は計画通りに進行しており、本件によって研究遂行に支障はなかった。

公開日・更新日

公開日
2021-05-11
更新日
-