文献情報
文献番号
201921003A
報告書区分
総括
研究課題名
肝炎ウイルス感染状況の把握及び肝炎ウイルス排除への方策に資する疫学研究
課題番号
19HC1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
田中 純子(広島大学 大学院医系科学研究科 疫学・疾病制御学)
研究分担者(所属機関)
- 佐竹 正博(日本赤十字社 中央血液研究所)
- 相崎 英樹(国立感染症研究所 ウイルス第二部)
- 芥田 憲夫(虎の門病院 肝臓内科)
- 鳥村 拓司(久留米大学 医学部内科学講座 消化器内科部門)
- 山崎 一美(国立病院機構長崎医療センター 臨床研究センター)
- 日野 啓輔(川崎医科大学 肝胆膵内科学)
- 宮坂 昭生(岩手医科大学 消化器内科肝臓分野)
- 島上 哲朗(金沢大学附属病院 地域医療教育センター)
- 菊地 勘(医療法人社団豊済会 下落合ク リニック 腎臓内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 肝炎等克服政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
39,200,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肝炎ウイルス感染状況の把握及び感染後・排除後の長期経過に関する疫学研究を実施し、政策の企画立案、基準策定のための基礎資料や施策に科学的根拠を与えるための成果の獲得をめざし、ウイルス肝炎排除への方策の提示を目的とする
研究方法
基礎医学、臨床医学、社会医学の専門家の参加を得て組織的に実施する
結果と考察
1)全住民screeningにより形成された日本唯一の大規模長期HBVコホート(1980-2017年)のウイルス遺伝子学的研究より95.9%がHBV genotype C、高感度S領域(nt455-nt687)のNested PCRはHBV genotype決定に有効
2)大規模集団におけるHBV・HCV感染状況より、住民検査受検集団の同陽性率が初回供血者集団と同程度にまで低下したことが判明
3)H29肝炎検査受検状況実態把握(国民調査)より、20~85歳日本人の粗QOL値は0.913。女性、70歳以上、東北で低値傾向。費用対効果分析等に利用可能
4)血液透析患者コホート3,968名解析により、1991年以後(エリスロポイエチン保険適応後)の透析導入群では以前導入群に比し、HCV感染率は有意に低値(26.52%vs9.97%)だが、生命予後解析では以後導入群においてHCV感染有が有意に予後不良となり、HCV治療の積極推進が有効であることを示唆。
5)NDBに基づく患者数の実態調査(HBV,HCV由来の肝がん、非代償性肝硬変患者)。NDB期間2012年4月~2019年3月までの7年間の詳細調査を行う。
6)医薬品販売実績データベース(IQVIA)の HCV-抗ウイルス薬剤売上データ27,851件を用い薬剤投与患者数は2014-2018年度合計270,982人。一方、肝炎治療医療費助成制度の受給者証交付件数と薬剤投与患者数との相違差分15%は後期高齢医療者等と考えられ、治療実態を地域毎に検討する際の基礎数値として利用可能。
7)HAVワクチンの費用対効果分析:現在の新規感染率、重症化率を仮定し、全年齢接種対象とした場合、費用対効果不良。特定のハイリスク集団(感染後医療費・QALY損失が1%高い)を接種対象とした場合、良好。A型肝炎ワクチン政策を検討する際の費用対効果に関する基礎資料となることが期待される。
8)健診受診者集団のべ380万人、およびJMDC健保組合加入者レセプト(のべ2161万人)&健診データ(730万人)を用いて解析を行い、病態推移確率を求め本邦で初めてとなるNAFLDの自然史の解明・患者数予測を行う。
9)NDBに基づくHBV,HCV患者数の把握と予測2035年:2015年はHCV89.1-130.2万人,HBV111.0-118.6万人と把握。肝病態推移確率、受検・治療種類を考慮したモデルにより予測を行ったところ、2030年と2035年では、HCV22.0-47.7万人/14.8-34.9万人に、HBV77.1-82.6万人/64.8-69.5万人にそれぞれ減少する。
10)日本の肝炎排除に向けた調査研究事業(2019年度中間報告) :広島県モデル地区を設定し一般住民計10,000名を層化無作為抽出法により選び、肝炎ウイルス無料検査等の調査を行い、B型・C型肝炎ウイルス有病率を算出する計画が進んでいる。また肝炎ウイルス感染elimination達成度を策定し評価すると同時に肝炎eliminationに向けたロードマップを具体的に提示する予定。
11) 健康増進事業等住民健診におけるC型肝炎ウイルス検査測定法の妥当性:上市予定のアボットジャパン株式会社Architect HCV reformulationは「HCV抗体の検出」試薬として適切。
12)平成30年度肝炎検査受検状況等実態把握調査(追加調査):無料検査や医療費助成の認知を高めること(調整オッズ比2.1以上)が認識受検促進のための施策として有用。
13)疫学資料(肝癌死亡、検査受検率等)や肝炎対策取組状況調査等(H30)をもとに、各都道府県の現状と課題把握のための視覚化を試み地域毎の現状は異なるが、死亡率が低く死亡数の多い都道府県で受療やフォローアップ推進の必要性等の課題あり。
14)妊婦健診におけるHBs抗原、HCV抗体検査結果は陽性では99.4%、陰性では98.4%の医療機関で妊婦本人に通知されていた。陽性妊婦が専門医療機関受診に繋がった経験を有する産婦人科医師は対応経験を有する医師の78.5%、5年以内の経験を有する場合その割合は80.8%であり、近年肝臓専門医との連携は強化されている可能性が示唆された。一方、HBV非活動性キャリアについては専門医療機関に繋がっていない症例の存在が一部に存在する可能性が示唆され課題と考えられた。
2)大規模集団におけるHBV・HCV感染状況より、住民検査受検集団の同陽性率が初回供血者集団と同程度にまで低下したことが判明
3)H29肝炎検査受検状況実態把握(国民調査)より、20~85歳日本人の粗QOL値は0.913。女性、70歳以上、東北で低値傾向。費用対効果分析等に利用可能
4)血液透析患者コホート3,968名解析により、1991年以後(エリスロポイエチン保険適応後)の透析導入群では以前導入群に比し、HCV感染率は有意に低値(26.52%vs9.97%)だが、生命予後解析では以後導入群においてHCV感染有が有意に予後不良となり、HCV治療の積極推進が有効であることを示唆。
5)NDBに基づく患者数の実態調査(HBV,HCV由来の肝がん、非代償性肝硬変患者)。NDB期間2012年4月~2019年3月までの7年間の詳細調査を行う。
6)医薬品販売実績データベース(IQVIA)の HCV-抗ウイルス薬剤売上データ27,851件を用い薬剤投与患者数は2014-2018年度合計270,982人。一方、肝炎治療医療費助成制度の受給者証交付件数と薬剤投与患者数との相違差分15%は後期高齢医療者等と考えられ、治療実態を地域毎に検討する際の基礎数値として利用可能。
7)HAVワクチンの費用対効果分析:現在の新規感染率、重症化率を仮定し、全年齢接種対象とした場合、費用対効果不良。特定のハイリスク集団(感染後医療費・QALY損失が1%高い)を接種対象とした場合、良好。A型肝炎ワクチン政策を検討する際の費用対効果に関する基礎資料となることが期待される。
8)健診受診者集団のべ380万人、およびJMDC健保組合加入者レセプト(のべ2161万人)&健診データ(730万人)を用いて解析を行い、病態推移確率を求め本邦で初めてとなるNAFLDの自然史の解明・患者数予測を行う。
9)NDBに基づくHBV,HCV患者数の把握と予測2035年:2015年はHCV89.1-130.2万人,HBV111.0-118.6万人と把握。肝病態推移確率、受検・治療種類を考慮したモデルにより予測を行ったところ、2030年と2035年では、HCV22.0-47.7万人/14.8-34.9万人に、HBV77.1-82.6万人/64.8-69.5万人にそれぞれ減少する。
10)日本の肝炎排除に向けた調査研究事業(2019年度中間報告) :広島県モデル地区を設定し一般住民計10,000名を層化無作為抽出法により選び、肝炎ウイルス無料検査等の調査を行い、B型・C型肝炎ウイルス有病率を算出する計画が進んでいる。また肝炎ウイルス感染elimination達成度を策定し評価すると同時に肝炎eliminationに向けたロードマップを具体的に提示する予定。
11) 健康増進事業等住民健診におけるC型肝炎ウイルス検査測定法の妥当性:上市予定のアボットジャパン株式会社Architect HCV reformulationは「HCV抗体の検出」試薬として適切。
12)平成30年度肝炎検査受検状況等実態把握調査(追加調査):無料検査や医療費助成の認知を高めること(調整オッズ比2.1以上)が認識受検促進のための施策として有用。
13)疫学資料(肝癌死亡、検査受検率等)や肝炎対策取組状況調査等(H30)をもとに、各都道府県の現状と課題把握のための視覚化を試み地域毎の現状は異なるが、死亡率が低く死亡数の多い都道府県で受療やフォローアップ推進の必要性等の課題あり。
14)妊婦健診におけるHBs抗原、HCV抗体検査結果は陽性では99.4%、陰性では98.4%の医療機関で妊婦本人に通知されていた。陽性妊婦が専門医療機関受診に繋がった経験を有する産婦人科医師は対応経験を有する医師の78.5%、5年以内の経験を有する場合その割合は80.8%であり、近年肝臓専門医との連携は強化されている可能性が示唆された。一方、HBV非活動性キャリアについては専門医療機関に繋がっていない症例の存在が一部に存在する可能性が示唆され課題と考えられた。
結論
上記、得られた知見は研究目的に適う
公開日・更新日
公開日
2021-01-29
更新日
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