2020年五輪大会に向けた東京都内のHIV・性感染症対策に関する研究

文献情報

文献番号
201920027A
報告書区分
総括
研究課題名
2020年五輪大会に向けた東京都内のHIV・性感染症対策に関する研究
課題番号
19HB2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
田沼 順子(国立研究開発法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
研究分担者(所属機関)
  • 佐々木 亮(国立研究開発法人国立国際医療研究センター 救急科)
  • Stuart Gilmour(スチュアート ギルモー)(聖路加国際大学公衆衛生大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
14,730,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
五輪大会のような国際的マスギャザリングは、性感染症(以下STD)を含む様々な感染症拡大のリスクと考えられている。梅毒の国内届出数や訪日外国人の増加など、新たな課題が浮上する中、五輪大会前後のケア需要を経時的に評価しつつ適切な医療資源の配置につなげる取り組みは必要である。本研究では、過去の五輪大会におけるHIV・STD対策を調査し、東京五輪大会前後の性感染症ケア資源と需要を経時的に調査・検討する。最終的に、首都圏における性感染症対策ネットワークの整備・強化に貢献するとともに、構築したネットワークを通じて2030年までのHIV流行制圧に向けて必要なエビデンスを収集し、政策提言を行うことを目的とする。
研究方法
2019年度は、過去のオリンピック・パラリンピック競技開催都市におけるSTD対策と、首都圏の医療・検査機関・医師を対象にしたセクシャルヘルス関連の医療資源調査の2つの調査を行った。
前者については、過去のオリンピック・パラリンピック競技開催都市におけるSTD対策について、文献レビューならびに関係者への聞き取り調査を行った。後者については、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の医療施設やHIV検査施設に対し、外国語対応、HIV治療、HIV曝露前(PrEP)および曝露後予防(nPEP)への対応の可否について、質問票を郵送し回答を回収し、記述統計疫学的に結果をまとめた。また、医師向けの会員制ウェブサイトを通じて医師1000人に対しアンケート調査を行った。
結果と考察
・過去の開催都市におけるHIV・STD対策に関する調査
ロンドン(2012年)、北京(2008年)、シドニー(2000年)について、文献レビューと関係者へのインタビューを行った。それらの都市の専門家は、言語や国籍を問わずハイリスク層が迅速かつ適切なケアを受けることを保証する取り組みや、アウトブレイクリスクをリアルタイムで特定するサーベイランス、地域社会を含めた包括的な施策の受容性を挙げ、全員がオリンピック・パラリンピック競技大会は公衆衛生上の課題への取り組みを促進する好機であると述べた。
・東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県のSTDケアに関する医療資源調査
2019年10月から2020年1月に1170施設(1065医療施設、105検査施設)に調査票を送付し、2020年3月31日までに552施設47.2%(466医療施設:回収率43.8%、86検査施設:回収率81.9%)より有効回答を得た。調査に応じた25%の医療施設と10%の検査施設が外国語の対応ができずに検査を断ったことがあると回答した。行政に期待する支援策としては、通訳の派遣や電話通訳に対する補助のほか、外国語対応が必要であった場合に保険点数加算を期待する声が挙がった。37の医療施設がHIVの非職業的曝露後予防(nPEP)の対応が可能との回答を得た。そのうち9施設が一定の条件を満たせば夜間でも対応できるという回答であった。91施設が一定の条件を満たせば職業的曝露前予防(PrEP)の処方に積極的であるとの回答を得た。
医師1000人へのアンケート調査においては、勤務先の医療施設が英語あるいは他の言語での対応が可能と答えたのは約50%であった。19.8%が、言語に関する課題を理由で診療を断ったことがあると回答した。49.1%が、HIV患者の診療は難しいと回答した。その理由として、多く(77%)が経験・知識不足を挙げたが、院内感染対策に不安があるからと答えた医師が17%、コメディカルスタッフの協力が得られないからと答えた医師は11.4%であった。性感染症の患者を診療した医師のうち、全例にHIV検査を勧めているのは28.9%にとどまった。HIV予防に関するキーワードの認知度においては、非職業的HIV曝露後予防(nPEP)が12.4%、HIV曝露前予防(PrEP) 17.3%と低かった。治療による予防(Treatment as Prevention )が24%の認知度を得ていた一方で、U=U (Undetectable=Untransmittable)は8.9%、「90-90-90」目標は6.3%と低かった。緊急予防措置としてのHIV曝露後予防、訪日した外国人HIV感染者に対するケア、多言語対応に、特に取り組む必要があることが分かった。
結論
過去のオリンピック・パラリンピック競技大会開催都市と東京におけるHIV/STD対策を調べ、東京大会までに必要な施策を明らかにした。来年度以降は、オリンピック・パラリンピック競技大会で性感染症ケアの需要がどのように変化したかを調査する。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2023-07-12

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201920027Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,730,000円
(2)補助金確定額
17,331,000円
差引額 [(1)-(2)]
399,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 316,668円
人件費・謝金 2,498,959円
旅費 3,303,968円
その他 8,211,405円
間接経費 3,000,000円
合計 17,331,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
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