血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究

文献情報

文献番号
201920025A
報告書区分
総括
研究課題名
血液製剤によるHIV/HCV重複感染患者の肝移植に関する研究
課題番号
H30-エイズ-指定-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
江口 晋(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 江川 裕人(学校法人東京女子医科大学 医学部消化器外科)
  • 江口 英利(国立大学法人大阪大学 医学系研究科)
  • 上平 朝子(独立行政法人国立病院機構 大阪医療センター 感染制御部)
  • 遠藤 知之(国立大学法人北海道大学病院 血液内科)
  • 玄田 拓哉(学校法人順天堂大学医学部附属静岡病院 消化器内科)
  • 篠田 昌宏(学校法人慶應義塾大学 医学部一般・消化器外科)
  • 嶋村 剛(国立大学法人北海道大学病院 臓器移植医療部)
  • 高槻 光寿(国立大学法人琉球大学 大学院消化器・腫瘍学講座)
  • 塚田 訓久(独立行政法人国立国際医療研究センター エイズ治療・研究開発センター)
  • 長谷川 潔(国立大学法人東京大学 医学部附属病院)
  • 原 哲也(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 中尾 一彦(国立大学法人長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
  • 八橋 弘(独立行政法人国立病院機構長崎医療センター)
  • 四柳 宏(国立大学法人東京大学 医学研究所先端医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
血液製剤を介してのHIV/HCV重複感染(以下重複感染)が社会問題となっている本邦において、肝不全に対する治療の選択肢として肝移植治療を安定して供給することは社会からの要請であり、患者救済のため急務である。本研究の主目的は、HIV/HCV重複感染者における肝移植適応基準の確立、速やかな肝移植登録と実施、移植周術期のプロトコルを確立することである。
研究方法
2019年5月脳死肝移植登録基準が従来のChild-Pugh分類からMELDスコアへ移行するにあたり、緊急度ランクアップも変更に対応できるように整備した。本年度①重複感染における肝移植の実施と、周術期プロトコルの検証と確立(ACC救済医療室との連携)、②肝細胞癌の全国調査、③血友病患者での肝胆膵外科手術の調査、④重複感染における肝線維化メカニズムの解明について研究を展開した。
①脳死登録ポイントのランクアップ、MELD点数化を提案し採用された(2019年5月施行)。従来のChild-Pugh分類からMELDスコアをベースに変更されたが、重複感染患者においてChild-Pugh Bの患者はMELD16点, Child-Pugh Cの患者はMELD28点で登録し、半年毎2点加算される重症に分類された。適応症例を速やかに脳死登録・肝移植を遂行すること、国立国際医療研究センター/エイズ治療・研究開発センター 救済医療室と連携し、全国の重複患者で肝移植適応のある可能性のある症例の相談を受け入れた。
②HCV感染はHCCの高リスクであるためHCC合併の実態を全国のエイズ診療拠点病院へアンケート調査。
③全国の高難度手術実施施設にアンケート調査を実施。実施経験のある施設で、倫理審査を行って頂き、引き続きデータの回収、解析を行い、後方視的にその特徴を明らかにした。
④肝移植後のmiRNAの発現を、イタリアUdine大学と共同で術後肝生検の組織を用いて解析を行った。
結果と考察
①2019年4月と9月、長崎大学にて1例脳死肝移植、1例肝腎同時移植を実施した。術後経過は順調、外来通院中である。全国では脳死肝移植登録中は3名、現在まで全国で5例(長崎、北海道、慶應大学)を施行しているが、HCVウイルス排除に成功し、肝機能良好で生存中である。
ACC救済医療室と連携し脳死肝移植登録と肝硬変症例の支援についての個別相談を受け入れ、現在6例の事例を対応、東北、関東、東海地方に出向して主治医と患者へ面談を行った。3例肝移植適応と判断し2例脳死肝移植登録、実施。1例は肝移植適応なく、HCCに対して治療を提案し重粒子線治療を行うこととなった。②HCC症例数は24例、全例男性、年齢中央値は49(34-67)、HCC個数は2(1-多数)最大径21㎜(7-100㎜)、11例単発であった。HCC治療は18例(75%)に施行、内容は経皮経肝動脈的化学塞栓療法(TACE)11例、ラジオ波焼灼術6例、脳死肝移植1例、不明7例であった。特に肝癌診療ガイドラインで肝切除が推奨される『Child分類Aで単発』の症例11例においても手術は施行されておらず、うち4例が再発死していた。
③現在までに27例の回答があった(現在も症例集積中)。年齢は59歳(中央値, 36-77)男性25例、血友病はA25, B1, von Villebrand病1であった。術式は肝部分切除11、胆嚢摘出術5、肝葉切除、脳死肝移植、膵頭十二指腸切除、膵尾側切除 各2であった。手術成績は、出血量445ml、術後合併症9例であった。肝切除症例を肝機能別(ALICE(The Albumin-Indocyanine Green Evaluation) ALBI(Albumin-Bilirubin) grade)に検討すると、ALBI Grade 2/3(n=7)でGrade 1(n=8)と比較し有意に出血量、合併症が多いという結果であった。
④重複感染症例(脳死肝移植) 22例と、HCV単独感染19例の間で、肝移植後6か月組織学的に線維化がみられない時点で、miRNA101(肝線維化に関連)、122/192(感染・HIV/HCVのreplicationに関連)が重複感染症例において有意に発現低値であった。
結論
血液製剤によるHIV/HCV重複感染者の脳死肝移植登録基準や周術期管理を確立し、肝移植適応のある患者さんに対して、速やかに脳死登録を行い、脳死肝移植を実行でき、良好な経過を得た。
今後、現行の肝移植適応症例をなるべく多く拾い上げ、薬害被害者の救済を継続していく。
また、肝線維化メカニズム解明により適切な肝移植のタイミング、さらに肝移植を回避できるような予防治療の確立を目指していく。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

総括研究報告書
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研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2023-07-12

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201920025Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
31,524,000円
(2)補助金確定額
31,524,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,698,260円
人件費・謝金 1,872,948円
旅費 12,850,403円
その他 8,651,048円
間接経費 0円
合計 25,072,659円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
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