文献情報
文献番号
201920017A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV感染症における医療経済的分析と将来予測に資する研究
課題番号
H30-エイズ-一般-009
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 俊文(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院・感染制御部)
研究分担者(所属機関)
- 野田 龍也(奈良県立医科大学 医学部 公衆衛生学講座)
- 佐藤 大介(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院・次世代医療構想センター)
- 白岩 健(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター/医療・福祉サービス研究部 )
- 横幕 能行(独立行政法人国立病院機構 名古屋医療センター 感染症内科・エイズ治療開発センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
所属機関異動
研究分担者 佐藤大介
国立保健医療科学院(平成30年4月1日~令和元年11月30日)→ 国立大学法人千葉大学(令和元年12月1日以降)
研究報告書(概要版)
研究目的
当研究ではレセプト情報・特定健診等情報データベース(NDB)を利用した日本におけるHIV感染症に関する医療経済的な現状把握や推測研究を行う。(1)HIV感染症の治療の現状の把握と医療費の算出;HIV感染症は抗HIV薬の目覚ましい発展により、慢性疾患として位置づけられるようになってきた。患者数は増える一方であり、HIV感染症に対する医療費の増大が懸念される。まずはNDBを利用して日本における抗HIV薬処方状況と医療費の推定を行い、現状把握を行う。(2)HIV感染者に対する医療費を軽減するための介入の提案として当研究では3剤併用療法から2剤併用療法に替えた場合の医療費削減効果および後発医薬品を使用することによる医療費削減効果を検討する。
研究方法
(a)HIV感染者コホートの作成;奈良県立医科大学では同一患者由来である複数のレセプトを結びつける分析基盤整備を進めており、既存のデータベースを使用して約2万7千人の言われる日本のHIV感染者で実際に診療を受けていると思われる約2万1千人のコホートを作成する。
(b) HIV感染者のコホートから年次別横断的に抗HIV薬の処方状況し、日本における抗HIV薬の処方状況を調査・医療費を算出する。疾患特異的な検査を伴う外来受診状況(1年間の受診回数など)を把握して検査や診察料などを含む医療費の合計を算出し、HIV感染者における年間の医療費を算出する。
(c)ARTの2剤併用療法や後発薬への切り替えによる経済的効果の解析
(b) HIV感染者のコホートから年次別横断的に抗HIV薬の処方状況し、日本における抗HIV薬の処方状況を調査・医療費を算出する。疾患特異的な検査を伴う外来受診状況(1年間の受診回数など)を把握して検査や診察料などを含む医療費の合計を算出し、HIV感染者における年間の医療費を算出する。
(c)ARTの2剤併用療法や後発薬への切り替えによる経済的効果の解析
結果と考察
2013年度から2017年度にかけてNDBより得られた抗HIV薬の処方を受けた患者は28,549人であった。その中で抗HIV薬を処方されていた患者数は2013年度17,274人、2014年度18,921人、2015年度20,583人、2016年度21,955人、2017年度23,187人であった。同年度の抗HIV薬の構成としてはドルテグラビル(DTG)をベースとした抗レトロウイルス療法(ART)が38%、ついでラルテグラビル(RAL)が18%、ダルナビル(DRV)が11%、エルビテグラビル(EVG)が9%、エファビレンツ(EFV)が9%となっている。
抗HIV薬の薬剤費(括弧内は一人あたりの年間費用)は2013年度で330億円(191万円)、2014年度で382億円(202万円)、2015年度で432億円(210万円)、2016年度で472億円(215万円)、2017年度で508億円(219万円)であった。また総医療費(入院医療費、食事療養費と外来医療費の合算)(括弧内は一人あたりの年間費用)は2013年度で506億円(293万円)、2014年度で575億円(304万円)、2015年度で645億円(314万円)、2016年度で677億円(308万円)、2017年度で728億円(314万円)であった。HIV感染症を合併する血友病患者の総医療費が高額であることが想定されたため、血友病患者を除いた総医療費を同様に算出したところ、2013年度で418億円(250万円)、2014年度で479億円(261万円)、2015年度で532億円(266万円)、2016年度で563億円(263万円)、2017年度で602億円(266万円)であった。
医療費の将来予測は抗HIV薬薬剤費に関して行った。新規感染者が減少しないモデルでは2030年には834億円、2050年には1,128億円になる見込みである。年5%減少で2030年には721億円、2050年には636億円となることが予測された。DTGもしくはビクテグラビル(BIC)をベースとしたARTの80%が2020年度からDTG+3TCに変更した際の医療費削減効果は年5%減少で2020年度は60億円、2024年までの5年間で320億円の削減が見込まれることが推測された。
抗HIV薬の薬剤費(括弧内は一人あたりの年間費用)は2013年度で330億円(191万円)、2014年度で382億円(202万円)、2015年度で432億円(210万円)、2016年度で472億円(215万円)、2017年度で508億円(219万円)であった。また総医療費(入院医療費、食事療養費と外来医療費の合算)(括弧内は一人あたりの年間費用)は2013年度で506億円(293万円)、2014年度で575億円(304万円)、2015年度で645億円(314万円)、2016年度で677億円(308万円)、2017年度で728億円(314万円)であった。HIV感染症を合併する血友病患者の総医療費が高額であることが想定されたため、血友病患者を除いた総医療費を同様に算出したところ、2013年度で418億円(250万円)、2014年度で479億円(261万円)、2015年度で532億円(266万円)、2016年度で563億円(263万円)、2017年度で602億円(266万円)であった。
医療費の将来予測は抗HIV薬薬剤費に関して行った。新規感染者が減少しないモデルでは2030年には834億円、2050年には1,128億円になる見込みである。年5%減少で2030年には721億円、2050年には636億円となることが予測された。DTGもしくはビクテグラビル(BIC)をベースとしたARTの80%が2020年度からDTG+3TCに変更した際の医療費削減効果は年5%減少で2020年度は60億円、2024年までの5年間で320億円の削減が見込まれることが推測された。
結論
NDBを利用してHIV感染者28,549人のコホートを作成した。2017年度にはHIV感染者に対して1,950億円の総医療費、また抗HIV薬の薬剤費だけで508億円が使用されていることがわかった。今後のHIV感染者数の予測では新規感染者が減少しなければ2030年には38,000人となることが見込まれる。年5%の新規感染者の減少でも2035年にはピークとなり、その後減少されることが予測される。新規感染者の減少には早期診断と治療、曝露前予防(PrEP)やSame Day ARTなど海外の先行事例に学ぶことが多いや、こうした介入を一刻でも早く開始すべきである。DTGもしくはBICをベースとした3剤併用療法を使用中の患者の80%をDTG+3TCの2剤併用療法への変更することにより抗HIV薬の薬剤費は年間60億円程度の減少させることができる。今後、日本における2剤併用療法の位置づけなどが議論されるべきである。
公開日・更新日
公開日
2021-06-01
更新日
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