文献情報
文献番号
201920010A
報告書区分
総括
研究課題名
拠点病院集中型から地域連携を重視したHIV診療体制の構築を目標にした研究
課題番号
H30-エイズ-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
猪狩 英俊(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院感染制御部)
研究分担者(所属機関)
- 谷口 俊文(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院感染制御部)
- 丹沢 秀樹(国立大学法人 千葉大学 医学部)
- 佐々木 信一(順天堂大学 医学部附属浦安病院)
- 鈴木 明子(御子神 明子)(城西国際大学 看護学部)
- 鈴木 貴明(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院薬剤部)
- 葛田 衣重(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院地域医療連携部)
- 高柳 晋(国立大学法人 千葉大学 医学部附属病院感染制御部)
- 塚田 弘樹(東京慈恵会医科大学 医学部附属柏病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
拠点病院集中型のHIV 診療から地域連携を重視したHIV 診療体制の構築を目的とする。
HIV感染症は、強力な抗ウイルス療法が実施され長期生存が可能な疾患となった。この結果、患者の高齢化が進みHIV感染症患者に求められる医療も多様化してきた。
第1に、悪性腫瘍、心血管疾患、慢性腎臓病等の合併症に対応できる診療体制が必要である。第2に、高齢HIV 感染症患者の介護や看取りも想定した。第3に、医療機関からの受入拒否がある。
これらの課題に対応するために、HIV 拠点病院と地域の医療機関との連携を重視した診療体制を構築することを目的とした。
HIV感染症は、強力な抗ウイルス療法が実施され長期生存が可能な疾患となった。この結果、患者の高齢化が進みHIV感染症患者に求められる医療も多様化してきた。
第1に、悪性腫瘍、心血管疾患、慢性腎臓病等の合併症に対応できる診療体制が必要である。第2に、高齢HIV 感染症患者の介護や看取りも想定した。第3に、医療機関からの受入拒否がある。
これらの課題に対応するために、HIV 拠点病院と地域の医療機関との連携を重視した診療体制を構築することを目的とした。
研究方法
千葉県内のHIV拠点病院(10医療機関)を基盤とした。分担研究者は、拠点病院の医師・歯科医師・薬剤師・看護師・ソーシャルワーカー・カウンセラーからの多職種で実施した。
結果と考察
1 千葉県内のHIV感染症患者の地域分布と受診行動
千葉県内のHIV感染症患者は1355名(2018)であった。千葉市・船橋市・市川市・松戸市・柏市・浦安市などの都市部に集中し、この6市で全体の58.2%を占めた。年齢分布は40歳台が最多であり、前年度と比較すると高齢化が進んだ。
千葉市では、約70%の患者が県内医療機関を受診していた。残る5市では東京都内の医療機関を受診する患者が多く、県内医療機関を受診している患者は約30%に留まった。
千葉市では、拠点病院を核とする地域連携の基盤が整っていると考えられる。
2 歯科医療機関での感染対策
千葉県歯科医師会と協同で質問紙調査を行った。HIV感染症患者の歯科診療体制を整備するためには、歯科医療機関の感染対策の強化が必要である。
3 HIV感染症患者のストレスが受診行動に及ぼす影響
HIV感染症患者のストレス・コーピングと受診行動に与える影響を分析し、1人で勤務している心理士であっても、HIV感染症患者のカウンセリングができる体制作りを行った。
4 HIV感染症患者の将来ビジョンが受診行動に及ぼす影響
HIV感染症患者の多くは、10年先のビジョンがないことがわかった。地域連携を推進する上で、参考になるデータと考えている。
5 HIV患者の歯科診療体制の構築
千葉大学の歯科口腔外科関連施設で歯科診療体制を構築した。HIV感染症患者を受入施設は85%になった。しかし、歯科単科での体制構築には限界があり、病院としての支援体制が必要である。
6 中核拠点病院の役割と地域連携
HIV感染症以外の疾患受皿として、病院感染防止対策加算を算定している病院に注目した。病院感染対策加算1を算定する病院は、HIV感染症患者の地域分布相当に配置されている。これらの病院は、エイズ拠点病院との連携の上、HIV感染症以外の疾患治療を受入可能と考えられる。
7 地域看護の役割
地域の看護職の実践力を開発することを目的とした。千葉県内の訪問看護ステーション30施設で聞き取りを行ったが、受入経験があるのは4施設にとどまった。介護施設担当者を対象に意見交換会を開いた。HIV感染症に対する関心は高く、啓発活動を通して、地域の看護力を動員できる可能性がみえた。
8 調剤薬局の役割と地域連携
地域の保険薬局で抗HIV薬を調剤することを想定した。県内の自立支援医療指定薬局は全薬局の約4割であり、HIV拠点病院の立地と自立支援医療免疫機能障害患者の居住地は、適正配置であった。在庫管理や服薬指導などの課題を解決すれば、地域の保険薬局での抗HIV薬の処方が可能である。
9 地域医療のコーディネート
HIV感染症患者の生活支援サービスの利用状況を調べた。HIV感染症患者の受入経験施設の可視化、制度のてびき作成、地域研修の実施により、HIV感染症患者の生活支援体制を整備することができる。
10 透析患者、CKD患者における地域連携
血液透析医療機関(148施設)の中で、HIV感染症患者の受入可能な施設は22施設(32.4%)にとどまった。受入阻害因子として、感染対策マニュアルの整備、針刺し事故対応、医療従事者の理解、業務の煩雑化が挙げられた。
千葉県内のHIV感染症患者は1355名(2018)であった。千葉市・船橋市・市川市・松戸市・柏市・浦安市などの都市部に集中し、この6市で全体の58.2%を占めた。年齢分布は40歳台が最多であり、前年度と比較すると高齢化が進んだ。
千葉市では、約70%の患者が県内医療機関を受診していた。残る5市では東京都内の医療機関を受診する患者が多く、県内医療機関を受診している患者は約30%に留まった。
千葉市では、拠点病院を核とする地域連携の基盤が整っていると考えられる。
2 歯科医療機関での感染対策
千葉県歯科医師会と協同で質問紙調査を行った。HIV感染症患者の歯科診療体制を整備するためには、歯科医療機関の感染対策の強化が必要である。
3 HIV感染症患者のストレスが受診行動に及ぼす影響
HIV感染症患者のストレス・コーピングと受診行動に与える影響を分析し、1人で勤務している心理士であっても、HIV感染症患者のカウンセリングができる体制作りを行った。
4 HIV感染症患者の将来ビジョンが受診行動に及ぼす影響
HIV感染症患者の多くは、10年先のビジョンがないことがわかった。地域連携を推進する上で、参考になるデータと考えている。
5 HIV患者の歯科診療体制の構築
千葉大学の歯科口腔外科関連施設で歯科診療体制を構築した。HIV感染症患者を受入施設は85%になった。しかし、歯科単科での体制構築には限界があり、病院としての支援体制が必要である。
6 中核拠点病院の役割と地域連携
HIV感染症以外の疾患受皿として、病院感染防止対策加算を算定している病院に注目した。病院感染対策加算1を算定する病院は、HIV感染症患者の地域分布相当に配置されている。これらの病院は、エイズ拠点病院との連携の上、HIV感染症以外の疾患治療を受入可能と考えられる。
7 地域看護の役割
地域の看護職の実践力を開発することを目的とした。千葉県内の訪問看護ステーション30施設で聞き取りを行ったが、受入経験があるのは4施設にとどまった。介護施設担当者を対象に意見交換会を開いた。HIV感染症に対する関心は高く、啓発活動を通して、地域の看護力を動員できる可能性がみえた。
8 調剤薬局の役割と地域連携
地域の保険薬局で抗HIV薬を調剤することを想定した。県内の自立支援医療指定薬局は全薬局の約4割であり、HIV拠点病院の立地と自立支援医療免疫機能障害患者の居住地は、適正配置であった。在庫管理や服薬指導などの課題を解決すれば、地域の保険薬局での抗HIV薬の処方が可能である。
9 地域医療のコーディネート
HIV感染症患者の生活支援サービスの利用状況を調べた。HIV感染症患者の受入経験施設の可視化、制度のてびき作成、地域研修の実施により、HIV感染症患者の生活支援体制を整備することができる。
10 透析患者、CKD患者における地域連携
血液透析医療機関(148施設)の中で、HIV感染症患者の受入可能な施設は22施設(32.4%)にとどまった。受入阻害因子として、感染対策マニュアルの整備、針刺し事故対応、医療従事者の理解、業務の煩雑化が挙げられた。
結論
HIV感染症患者の診療行動分析の結果、高齢化を想定した千葉県内のHIV診療体制の構築が必要である。
地域連携を推進する医療基盤として感染管理加算1を算定している病院は、HIV拠点病院の補完機能として重要である。
地域連携の基盤として、HIV感染症患者の分布、歯科診療体制、病院感染防止対策加算算定病院、保険薬局、地域コーディネート、介護訪問看護など多角的検討を行った。HIV感染症に対する理解は概ね良好であり、地域連携を推進する上で、サポーターとなる人材や医療基盤があることもわかった。今後は、成果物の作成を通して、地域連携を円滑に進めることが求められる。
地域連携を推進する医療基盤として感染管理加算1を算定している病院は、HIV拠点病院の補完機能として重要である。
地域連携の基盤として、HIV感染症患者の分布、歯科診療体制、病院感染防止対策加算算定病院、保険薬局、地域コーディネート、介護訪問看護など多角的検討を行った。HIV感染症に対する理解は概ね良好であり、地域連携を推進する上で、サポーターとなる人材や医療基盤があることもわかった。今後は、成果物の作成を通して、地域連携を円滑に進めることが求められる。
公開日・更新日
公開日
2021-06-01
更新日
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