文献情報
文献番号
201920007A
報告書区分
総括
研究課題名
職域での健診機会を利用した検査機会拡大のための新たなHIV検査体制の研究
課題番号
H29-エイズ-一般-008
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
横幕 能行(独立行政法人国立病院機構名古屋医療センター 感染症科、エイズ治療開発センター)
研究分担者(所属機関)
- 高橋 秀人(国立保健医療科学院・統括研究官)
- 生島 嗣(特定非営利活動法人ぷれいす東京・代表)
- 伊藤 公人(社会医療法人宏潤会大同病院・血液化学療法内科・部長)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
HIV陽性者の一層の予後改善と新規HIV伝播阻止には、国民に対し、性感染症の一つであるHIV感染症/エイズ(以下エイズ)の正確な知識の普及啓発を行い、エイズが「個々の健康の問題」であるとの意識変容を促し、感染の有無を自認するための検査提供機会拡大が重要である。
現在、企業でのエイズ検診は、「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」により原則実施すべきでないとされているが、平成30年にHIV・性感染症感染の防止を図るモデル事業が開始された。
本研究では、本モデル事業を利用し、職域で企業及びその被保険者に対し普及啓発を行った上で,企業等の被保険者のうち希望する者(以下受検者)に対し近年罹患者数の増加が著しい梅毒とエイズ (以下エイズ等)の検査機会を提供し、その結果から保健所検査を補完する事業となり得るか検討する。研究対象企業の選定を行い、企業等及び被保険者に対する啓発の後にエイズ等検査を実施する。
現在、企業でのエイズ検診は、「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」により原則実施すべきでないとされているが、平成30年にHIV・性感染症感染の防止を図るモデル事業が開始された。
本研究では、本モデル事業を利用し、職域で企業及びその被保険者に対し普及啓発を行った上で,企業等の被保険者のうち希望する者(以下受検者)に対し近年罹患者数の増加が著しい梅毒とエイズ (以下エイズ等)の検査機会を提供し、その結果から保健所検査を補完する事業となり得るか検討する。研究対象企業の選定を行い、企業等及び被保険者に対する啓発の後にエイズ等検査を実施する。
研究方法
アウトカムは、①企業により従業員に対しエイズ等の検査機会が適切に提供されること、②従業員に不利益がないように検査機会が提供・利用されることである。
職域健診におけるエイズ等検査の機会の提供にあたっては、ガイドラインの条件を満たすように実施する。対象は①雇用保障のポリシー、②プライバシー管理のポリシー、③健康支援のポリシーを保証する企業及びその従業員とする。
本取り組みは検査の実施主体である愛知県からの委託を受け名古屋医療センターが実施する。検査前及び結果通知の際の支援はぷれいす東京が担う。企業及び受検者の検査にかかわる費用負担はない。検査の実施形態は事前打ち合わせによって参加企業に最適化する。
受検者に対しアンケート調査を行い、職域健診における梅毒・エイズ検査の受検率や受検の促進因子を解析し、職域健診における検査機会提供の有用性と実施への課題を検討する。
本研究では参加企業からの要望により、個々の企業毎の結果は提示しない。また、受検者の検査結果もプライバシー保護の観点から解析対象としない。
情報の収集、解析及び公開等について、国立病院機構名古屋医療センター臨床研究審査委員会で承認を得た(整理番号:2018-039、2018-035、2018-105)。
職域健診におけるエイズ等検査の機会の提供にあたっては、ガイドラインの条件を満たすように実施する。対象は①雇用保障のポリシー、②プライバシー管理のポリシー、③健康支援のポリシーを保証する企業及びその従業員とする。
本取り組みは検査の実施主体である愛知県からの委託を受け名古屋医療センターが実施する。検査前及び結果通知の際の支援はぷれいす東京が担う。企業及び受検者の検査にかかわる費用負担はない。検査の実施形態は事前打ち合わせによって参加企業に最適化する。
受検者に対しアンケート調査を行い、職域健診における梅毒・エイズ検査の受検率や受検の促進因子を解析し、職域健診における検査機会提供の有用性と実施への課題を検討する。
本研究では参加企業からの要望により、個々の企業毎の結果は提示しない。また、受検者の検査結果もプライバシー保護の観点から解析対象としない。
情報の収集、解析及び公開等について、国立病院機構名古屋医療センター臨床研究審査委員会で承認を得た(整理番号:2018-039、2018-035、2018-105)。
結果と考察
通常の健診との独立性を保証するために、郵送検査キットを使用して検査機会を提供することにした。郵送検査キットの課題を克服するため、ぷれいす東京により、安全な検査実施と要精査時に確実に医療に繋げられる体制を構築した。検査機会提供に先立ち、研究班及び企業により全従業員もしくは検査希望者全員に対し、十分な情報の提供機会(説明会)を設けることを必須とした。実施期間、対象者及び郵送検査キット配布方法は参加企業毎にカスタマイズした。
2019年4月から2020年12月末時点で5業種の9社が本研究に参画し合計12,650人に対し、HIV感染症/エイズ及び梅毒を中心とする性感染症に関する情報と検査機会が提供された。このうち、1,913人に郵送検査キットが配布され、994人が受検した。検査実施後、今回の検査機会提供によって従業員が何らかの不利益を被ったという報告はなかった。
受検者に対して実施されたアンケート調査(有効815人)の結果を解析したところ、男性が女性よりも多く、平均年齢は男性の方が高いことが明らかになった。また、受検動機として「検査しやすかったから 」「プライバシーが保たれているから」「職場の環境が整っているから」「心当たりがある、または心当たりがないから」「検査経験に基づいて(過去に検査を受けたことがある等)」「早期発見・早期治療が大切だから」が選択されていた。有意な性差があったのが「検査経験に基づいて」であり、有意な年齢差があったのが「検査経験に基づいて」「早期発見・早期治療が大切だから」であった。
2019年4月から2020年12月末時点で5業種の9社が本研究に参画し合計12,650人に対し、HIV感染症/エイズ及び梅毒を中心とする性感染症に関する情報と検査機会が提供された。このうち、1,913人に郵送検査キットが配布され、994人が受検した。検査実施後、今回の検査機会提供によって従業員が何らかの不利益を被ったという報告はなかった。
受検者に対して実施されたアンケート調査(有効815人)の結果を解析したところ、男性が女性よりも多く、平均年齢は男性の方が高いことが明らかになった。また、受検動機として「検査しやすかったから 」「プライバシーが保たれているから」「職場の環境が整っているから」「心当たりがある、または心当たりがないから」「検査経験に基づいて(過去に検査を受けたことがある等)」「早期発見・早期治療が大切だから」が選択されていた。有意な性差があったのが「検査経験に基づいて」であり、有意な年齢差があったのが「検査経験に基づいて」「早期発見・早期治療が大切だから」であった。
結論
「職場におけるエイズ問題に関するガイドライン」を遵守し企業健診の枠組みの中で検査機会の提供を試みた。5業種9社の従業員に最新の疾病情報と郵送検査キットによる検査機会が適切に提供された。検査実施に先立つ種々の啓発プログラムにより、受検者個人、研究参加企業及にエイズ等の正しい知識が提供された。研究参加企業の従業員が不利益を被ることはなかった。本研究を遂行することにより、現在は「エイズのような特殊な疾病には関わらないのが常識」とされる企業や健診センターがエイズ等の検査の機会を提供することが普通になることの端緒になる可能性があり、このことが国民のエイズ検査の生涯受検率向上に繋がりHIVの新規感染伝播の抑制につながると期待される。
公開日・更新日
公開日
2021-06-01
更新日
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