文献情報
文献番号
201920005A
報告書区分
総括
研究課題名
HIV検査の受検勧奨のための性産業の事業者及び従事者に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
今村 顕史(東京都立駒込病院 感染症科)
研究分担者(所属機関)
- 土屋 菜歩(国立大学法人東北大学 東北メディカル・メガバンク機構 予防医学・疫学部門)
- 川名 敬(日本大学医学部 産婦人科学系産婦人科学分野)
- 渡會 睦子(東京医療保健大学 医療保健学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
10,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
女性が従事する性産業の形態は、時代とともに急速に複雑化・多様化してきている。また、MSMやトランスジェンダーの性産業との関わりについても、十分な調査が行われていなかった。従って、潜在するハイリスク層の実態調査を行い、より感染リスクの高い対象者への受検勧奨と予防啓発を進めることが、HIV感染症を含む性感染症対策における喫緊の課題であると考えられる。本研究では、多様化・複雑化している性産業の実態を、多角的な調査によって把握する。そして、若い女性に増加している梅毒や、MSMにおけるA型肝炎などハイリスク層で流行している性感染症の啓発方法など、現代の性産業の実態に合った新たな啓発・受検勧奨方法の立案を目指す。
研究方法
本研究においては、性産業に従事する女性や事業者に加えて、より感染リスクの高いMSM・トランスジェンダーの従事者の調査も行う。さらに、企業健診でのアンケート等による地域一般住民への調査、性感染症クリニックや風俗街を有する自治体の保健所と連携した性感染症の実態調査など、より多角的な調査によって現代の性産業の現状を把握する。これらの調査では、プライバシーや人権について十分な配慮を行い、得られた情報も慎重に扱っていく。特に、性産業従事者に直接関わる分担研究では、従事者をサポートする当事者グループ、セクシャルマイノリティに関わるNPOの代表者、文化人類学者、行政の担当者などを協力者とする研究体制も整えた。
結果と考察
<研究1>性産業に従事する事業者と女性従業者の実態調査と受検勧奨
性産業に従事する女性499名の実態調査では、CSW以外の仕事をもっている女性が半数以上で、性感染症の危険性が高い性的サービスも多い中で、正しい知識を得る機会は少ないことが明確となり、今後の性感染症知識普及・受検勧奨のため、わかりやすい啓発資材の作成や研修会開催等の必要性が示唆される結果となった。
<研究2>性産業に従事するMSMとトランスジェンダーの実態調査と受検勧奨
トランスジェンダーのセックスワーカーが在籍する性産業事業者のリスト化と従業者の概数を出し、インタビュー調査を実施し、その置かれている状況を把握した。特にトランスジェンダーのSWにはMSM向けの啓発情報が届きにくいことが把握でき、店舗に所属していない人の意識が低く、最もリスクにさらされていることが判明した。
また、A型肝炎の流行対策を通じた啓発について、疫学面からの分析で各種啓発による流行制御が成功したことが示唆された。多種多様な啓発を迅速かつ集中的に行うことで確立された啓発方法は、MSMにおける今後の性感染症流行時のモデルケースとなることが期待される。
<研究3>性感染症クリニックの実態調査と啓発
クリニックを対象とした研究では、1.産婦人科医療機関におけるCSW受診行動と梅毒検査の実施状況、2.産婦人科医療機関における非CSWのSTI希望受診と梅毒検査の実施状況、3.受検者からのSTIチェック希望項目、4.梅毒陽性者数、などの調査を行った。さらに、首都圏を中心に梅毒検査の必要性についての学会・研修会等で啓発活動を実施した。
<研究4>地域一般住民の性サービスに関わる実態調査と受検勧奨
幅広い年齢層と業種の男性が勤務する企業を選定し、自記式無記名質問紙による調査を実施した。596名のアンケート結果では、お金のやり取りを伴う性交渉経験率は36%であり、派遣型の性風俗利用が店舗型の利用を上回っていた。能動的な性感染症検査の受検は少ないことが明らかとなり、年齢・収入・1か月に自由になるお金の額が、金銭の受け渡しを伴う性交渉と有意に関連していた。また、日常生活、または職域での日常生活の中で、HIVや性感染症に関する情報提供、予防啓発が重要であることが示唆された。
性産業に従事する女性499名の実態調査では、CSW以外の仕事をもっている女性が半数以上で、性感染症の危険性が高い性的サービスも多い中で、正しい知識を得る機会は少ないことが明確となり、今後の性感染症知識普及・受検勧奨のため、わかりやすい啓発資材の作成や研修会開催等の必要性が示唆される結果となった。
<研究2>性産業に従事するMSMとトランスジェンダーの実態調査と受検勧奨
トランスジェンダーのセックスワーカーが在籍する性産業事業者のリスト化と従業者の概数を出し、インタビュー調査を実施し、その置かれている状況を把握した。特にトランスジェンダーのSWにはMSM向けの啓発情報が届きにくいことが把握でき、店舗に所属していない人の意識が低く、最もリスクにさらされていることが判明した。
また、A型肝炎の流行対策を通じた啓発について、疫学面からの分析で各種啓発による流行制御が成功したことが示唆された。多種多様な啓発を迅速かつ集中的に行うことで確立された啓発方法は、MSMにおける今後の性感染症流行時のモデルケースとなることが期待される。
<研究3>性感染症クリニックの実態調査と啓発
クリニックを対象とした研究では、1.産婦人科医療機関におけるCSW受診行動と梅毒検査の実施状況、2.産婦人科医療機関における非CSWのSTI希望受診と梅毒検査の実施状況、3.受検者からのSTIチェック希望項目、4.梅毒陽性者数、などの調査を行った。さらに、首都圏を中心に梅毒検査の必要性についての学会・研修会等で啓発活動を実施した。
<研究4>地域一般住民の性サービスに関わる実態調査と受検勧奨
幅広い年齢層と業種の男性が勤務する企業を選定し、自記式無記名質問紙による調査を実施した。596名のアンケート結果では、お金のやり取りを伴う性交渉経験率は36%であり、派遣型の性風俗利用が店舗型の利用を上回っていた。能動的な性感染症検査の受検は少ないことが明らかとなり、年齢・収入・1か月に自由になるお金の額が、金銭の受け渡しを伴う性交渉と有意に関連していた。また、日常生活、または職域での日常生活の中で、HIVや性感染症に関する情報提供、予防啓発が重要であることが示唆された。
結論
本研究による多角的な調査によって、現代の性産業の実態が把握され、その問題点や課題が抽出されてきている。そして、自治体の担当者とも連携した研究計画によって、現代の性産業の多様性や複雑性に合った、より有効な啓発法の検討も行っている。本研究の成果は、今後のHIVを含む性感染症への対策において、より実効性をもった事業としても機能するような新たな受検勧奨法の開発につながることが期待される。
公開日・更新日
公開日
2021-06-01
更新日
2022-08-09