都市部の若者男女におけるHIV感染リスク行動に関する研究

文献情報

文献番号
201920003A
報告書区分
総括
研究課題名
都市部の若者男女におけるHIV感染リスク行動に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
日高 庸晴(宝塚大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松高 由佳(比治山大学 現代文化学部)
  • 合田 友美(宝塚大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
11,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民一般にHIV感染症の知識の普及と検査受検勧奨を推進するために、HIV/STI感染リスクが高いと考えられる性的に活発な男女(10~30代)やSTI感染不安・クリニック受診者を主たる対象に横断調査、それらに基づいた啓発プログラムを開発・実施・評価することを視野に取組んだ。
研究1:Webによる若者のHIV/STI感染リスク行動に関する行動疫学研究、研究2:繁華街の若者のHIV/STI感染リスク行動に関する行動疫学研究、研究3:STI感染不安のある若者のHIV/STI感染リスク行動に関する行動疫学研究、研究3年目は研究4:性的指向と性自認の多様性に関する全国教員調査を追加実施した。
研究方法
研究1:予防介入コンテンツをインターネットモニターが視聴することにより、動画の効果評価をWait list controlによる前後比較試験によって行った。対象は18歳~35歳の男女、過去6ヶ月以内に配偶者・パートナー以外とコンドームを使わない性経験があり、都市部(札幌市・仙台市・千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県・名古屋市・京都市・大阪市・堺市・神戸市・福岡市)在住者とした。動画視聴あり群(男女各150人)、対照群(男女各100人)に二群し、クイズ形式の動画の主たるコンテンツは、1)2018年は梅毒の年間患者数が6,000人を突破した。(正解○)、2)エイズにかかるとすぐに死ぬ(正解×)等の6項目とした。
研究2:(1)大阪2店舗、札幌1店舗のナイトクラブに入店した18歳以上の男女を対象に、タブレット端末を用いた行動疫学調査を実施した。
(2)2019年12月、世界エイズデーに合わせ大阪のクラブ4店舗において、HIV/STI予防啓発介入キャンペーン(予防知識や男性の性規範意識向上等)を2日間実施した。予防意識や知識向上を目的としたゲームやクイズを通じてゲーム参加後の予防意識の変化・反応評定を行った。
研究3:(1)自治体質問紙調査はA自治体のHIV/STI検査受検者(2017年10月~2019年9月)を対象に質問紙調査を実施した(回収数は28,586人)。
(2)クリニック介入調査はSTI流行・症状・感染予防策、情報へアクセスするためのサイトを紹介する動画を作成し、視聴前後の知識・認識の変化を検証した(有効回答数は150人)。
研究4:全国36自治体の教員を対象に校務パソコンあるいはスマートフォンやタブレットから回答する無記名自記式質問票調査を実施した。
結果と考察
研究1:介入指標である6項目すべてにおいて介入群のみ有意な変化が認められた。コンテンツは男女共通の2分間とした。動画サイトの視聴に親和性が高いと考えられる若者にとって、2分間が長く感じられるのではないか杞憂したが、十分な効果が確認できた。
研究2:(1)クラブ利用の若者の多くが複数のセックスパートナーを有しながらコンドーム常用率が低く、HIV/STI知識や関心を有していなかった(3年間で3,076件の有効回答)。(2)クラブコミュニティを巻き込んだ予防啓発介入手法の開発に成功した。予防意識の定着を図るため、一過性に終わらず今後も繰り返し啓発を継続する必要がある。
研究3:(1~2)自治体調査等からSTI知識やコンドーム使用を促進する資材が必要と考え、パラパラ漫画風の啓発動画を制作した。男女共に「梅毒感染者数の急増」や「HIV/STI予防にコンドームの常時所持が必要である」と知識や認識の変化を認めた。また、『HIV検査・相談マップ』を紹介するなど工夫を講じた。
研究4:21,634人の有効回答を得た。LGBTsの人口比率とは反して学校現場で教員は性別の違和感を持つ児童生徒の存在認識はしているが同性愛等においてはそうではなかった。授業で教える必要性は「男女の体の違い」「二次性徴」「薬物乱用」「STI」「HIV/AIDS」などは回答者の9割がその必要性を認識、「性別違和や性同一性障害」「同性愛」はそれより低率であった。
結論
研究1:2分間の予防啓発動画の効果評価で一定の効果が検証された。
研究2:同地域で2~3年間継続した横断調査の実施により信頼性や再現性を確認、介入指標に関する確かな知見を得た。集団レベルの介入で予防意識や行動を促進することができた。
研究3:クリニックでの介入研究の実施から、その手応えを感じると共にさらにテーラーメイドされた情報へアクセスできる仕組みが今後必要であると考えられる。
研究4:国内最大規模の性的指向と性自認の多様性に関する教員調査を実施した。HIV/STI予防啓発や健康教育の実施にあたっては、性的指向と性自認の多様性に配慮した教育が求められその基礎資料の整備につながった。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2022-01-17

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201920003B
報告書区分
総合
研究課題名
都市部の若者男女におけるHIV感染リスク行動に関する研究
課題番号
H29-エイズ-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
日高 庸晴(宝塚大学 看護学部)
研究分担者(所属機関)
  • 松高 由佳(比治山大学 現代文化学部)
  • 合田 友美(宝塚大学 看護学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 エイズ対策政策研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
国民一般にHIV感染症の知識の普及と検査受検勧奨のために、HIV/STI感染リスクが高いと考えられる性的に活発な男女(10~30代)やSTI感染不安・クリニック受診者を主たる対象に、横断調査や啓発プログラムを開発・実施・評価することを視野に、以下の研究課題を行った。
研究1:Webによる若者のHIV/STI感染リスク行動に関する行動疫学研究、研究2:繁華街の若者のHIV/STI感染リスク行動に関する行動疫学研究、研究3:STI感染不安のある若者のHIV/STI感染リスク行動に関する行動疫学研究、研究3年目は研究4:性的指向と性自認の多様性に関する全国教員調査を追加実施した。
研究方法
研究1:【1~2年目】インターネット調査会社のモニターを対象に、HIV/STI知識や性行動等の無記名自記式の質問票調査を実施した。年齢は20~49歳、1年目は東京23区・大阪市・福岡市在住、性交相手が異性のみ4,000人、同性のみまたは両性の男女1,000人とした。2年目は札幌市在住で性交相手が異性のみ男女各650人とした。【3年目】予防介入コンテンツをインターネットモニター(都市部在住の18歳~35歳の男女、過去6ヶ月以内に配偶者・パートナー以外とコンドームを使わない性経験がある者)の視聴を通じて、その効果評価を行った。クイズ形式の動画の効果は介入群のみに有意に効果があった。
研究2:【1年目】大阪のナイトクラブ2店舗に入店した20歳以上の男女を対象に、行動疫学調査を実施した。【2年目】大阪と札幌のクラブで18歳以上を対象に調査を実施した。さらに大阪のクラブでは、オリジナルの介入動画を視聴させ前後比較試験による効果評価を行った。【3年目】大阪のクラブ4店舗で予防啓発介入キャンペーンを実施した。男性の性規範意識向上のメッセージも盛り込み、予防意識や知識向上を目的としたゲームやクイズを通じて参加後の意識の変化・反応評定を行った。
研究3: 【1~3年目】行動疫学調査はA自治体のHIV/STI検査の受検者(28,586人)、B社のHIV/STI郵送検査の受検者(863人)、CクリニックのHIV/STI検査受検者(245人)を対象に行った。【3年目】C、Dクリニックの受診者を対象に、STI流行・症状・感染予防策、情報へアクセスするためのサイトを紹介した動画を作成し、視聴前後の知識・認識の変化を検証した(150人)。
研究4:全国36自治体の教員を対象にパソコン・スマートフォン・タブレット端末から回答する無記名自記式質問票調査を実施した。
結果と考察
研究1:都市部在住者の知識や性行動の実態が明らかになった。知識は一定程度浸透していたが、一部の項目で誤解があった。動画による介入では指標とした6項目すべてに動画視聴あり群においてのみ、有意な変化が認められた。内容は男女共通の2分間であったが、十分な効果が確認できた。
研究2:性的に活発な繁華街の若者の実態を示すデータを蓄積した(3,076件)。予防介入の実施にあたり、男性の意識・行動の変化を促す介入も求められる。クラブコミュニティを巻き込んだ予防啓発介入を試行したことから、クラブ店舗との関係性を保持しながら今後も継続した啓発が必要である。
研究3: 3年間の実態調査の結果より、STI感染動向と正しい知識や検査情報の浸透が必要と思われる。3年目には若者に馴染みやすいパラパラ漫画を用いた介入動画を作成した。
研究4:21,634人の有効回答を得た。LGBTsの人口比率とは反して学校現場で教員は性別の違和感を持つ児童生徒の存在認識はしているが同性愛等においてはそうではなかった。授業で教える必要性は「男女の体の違い」「二次性徴」「HIV/AIDS」などは回答者の9割がその必要性を認識、「性別違和や性同一性障害」「同性愛」はそれより低率であった。
結論
いずれの研究もほぼ計画通りに実施し、成果が得られた。
研究1:都市部在住の20~40代の感染リスク行動の現状や検査行動の実態が明らかになった。2分間の予防啓発の介入動画の効果評価では一定の効果が検証された。
研究2:繁華街のクラブを拠点とした国内では類をみないHIV/STI予防研究となった。知識の圧倒的不足やリスク行動や受検行動の低さは深刻であり継続した介入が求められる。
研究3:自治体・郵送・クリニックにおける受検者調査の結果から感染リスクや不安がある層の実態が明らかになった。クリニックでの介入研究ではその手応えを感じると共に、さらにテーラーメイドされた情報へアクセスできる仕組みが今後必要であると考えられる。
研究4:国内最大規模の性的指向と性自認の多様性に関する教員調査を実施した。HIV/STI予防教育の実施にあたってその基礎資料の整備が出来た。

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2022-01-17

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201920003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
これまでにわが国でほとんど明確化されていなかった夜の繁華街に来訪する若者のHIV/STIに関する知識や実際の行動などの現状が明らかになった。疫学調査としても学問的空白を埋めることが出来たと言えよう。
臨床的観点からの成果
特になし
ガイドライン等の開発
特になし
その他行政的観点からの成果
公益財団法人エイズ予防財団主催の研修資料に綴じこまれ、間接的に厚生労働行政に貢献した。
その他のインパクト
研究成果は公益財団法人エイズ予防財団主催の研修事業等や大阪府の性感染症研修などで、保健師や養護教諭等に報告され現場の予防啓発活動で有効に活用されている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
6件
学会発表(国際学会等)
2件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
6件
講演6件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsutaka Y., Koyano J., Hidaka Y.
Perceptions of reducing HIV-preventive behaviors among men who have sex with men living with HIV in Japan
Health. , 10 (12) , 1719-1733  (2018)

公開日・更新日

公開日
2022-06-10
更新日
2024-06-05

収支報告書

文献番号
201920003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,300,000円
(2)補助金確定額
14,300,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,392,168円
人件費・謝金 214,168円
旅費 2,976,460円
その他 6,417,957円
間接経費 3,300,000円
合計 14,300,753円

備考

備考
支出金額のうち753円は自己資金

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
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