「HTLV-1総合対策」推進におけるキャリア対策の基盤整備と適正な研究開発の推進に資する包括的評価と提言のための研究

文献情報

文献番号
201919031A
報告書区分
総括
研究課題名
「HTLV-1総合対策」推進におけるキャリア対策の基盤整備と適正な研究開発の推進に資する包括的評価と提言のための研究
課題番号
H30-新興行政-指定-006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
渡邉 俊樹(東京大学 フューチャーセンター推進機構)
研究分担者(所属機関)
  • 内丸 薫(東京大学 大学院新領域創成科学研究科)
  • 山野 嘉久(聖マリアンナ医科大学 大学院先端医療開発学)
  • 浜口 功(国立感染症研究所 血液・安全性研究部)
  • 岩永 正子(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,850,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
2010年から開始された「HTLV-1総合対策」を適切に推進することを目指し、本研究では、既存の個別研究班では対応が難しい『包括的かつ俯瞰的観点』から、1)実態調査を踏まえて重点施策の現状と課題を明確にし、2)総合対策を加速する解決策を検討して具体的方策を提示することを通じて、HTLV-1総合対策重点施策の充実と実体化を目指した。
研究方法
1.実態調査:一部地域の保健所における活動の聞き取り調査と、全保健所を対象とした相談状況及び相談者教育に関するアンケート調査を実施した。
2.解決案の検討:以下の課題につき検討した。1)キャリア診療マニュアル作成・改訂、2)講習会プログラム作成と検証へ向けた事例調査、3)ウェブ研修プログラムの作成と検証、4)インタラクティブネット相談システムの検討の開始、5)「Web情報発信主体の確立」および「Webコンテンツの統合・管理作業の継続」、6)学会登録診療拠点への支援
3.合同研究成果発表会の開催
4.世界HTLVデー記念講演会開催支援

結果と考察
(1)実態調査:全国471施設を対象として実施した。2012年度の調査を踏まえ、HTLV-1感染の感染症法5類指定の動きと、2019年11月に決定したWHOによる性感染症としてHTLV-1感染症対策を開始したことに関して調査項目に加えた。対象の471施設中319施設(68%)から回答を得て結果を分析した。その結果の概要は以下の様になる。
①相談対応の実績のある施設は、概ね30%以下であった。②相談対応に必要な情報と資料: Webサイトと印刷資料の利用がほぼ同数であった。必要な情報としては、検査方法に関する情報、HTLV-1関連疾患に関する情報、専門医や専門となる医療機関情報、等であった。③抗体検査実績:抗体検査の実施は319施設中121施設(38%)であった。④研修内容:HTLV-1関連の講演や研修等の実施実績は3割程度であった。⑤専門機関との連携:HTLV-1関連の専門家(医療機関)との連携があるのは、10%程度で、極めて低い数字であった。
⑥HTLV-1感染を感染症法第5類指定に関しては、87%の施設(270施設)は、HTLV-1感染対策推進に有益であると回答した。⑦WHO新規取り組み(性感染症としての対策開始)に関しては、96%の施設は、性感染症としての現実を認めて、適切な教育・広報活動と相談体制の整備を進めるべきであると回答した。
(2)解決案の検討:① 2019年度中に「キャリア診療ガイドライン」および「キャリア対応Q&A」の改定案を作成した。② Web講義の例の確認、学会の一般向け解説などの個別事例の情報収集を行い、実現可能性につき検討し、可能であるが取り組み当事者の設定と経費が問題であると判断した。③ インタラクティブネット相談システムについては管理主体や経費などの基本的な運用上の問題が指摘され、具体的な取り組みは時期尚早と判断した。④ 「Web情報発信主体の確立」および「Webコンテンツの統合・管理作業の継続」については、HTLV-1対策が継続的な事業となり、運営主体と予算が措置されることが必要との結論になった。⑤ 日本HTLV-1学会登録診療拠点への支援:2019年度までに認定された14登録施設の担当者と情報交換・情報共有を開始した。
(3)合同研究成果発表会:2020年2月15日に2019年度の「合同研究成果発表会」を開催して、HTLV-1関連疾患研究の進展の現状把握と情報交換、研究の進展を共有し新たな共同研究や次の課題に関しての検討を行った。
(4)世界HTLVデー記念講演会開催共催:「世界HTLVデー」は2018年に我が国の日本HTLV-1学会が提唱し、国際的には国際ヒトレトロウイルス学会(IRVA)が賛同して制定された。本年も11月10日に東京大学医科学研究所講堂で記念講演会を開催した。厚生労働省を始め、患者会のメンバー、キャリア対応に携わる医療従事者、保健所の医師などが講演した。参加者数は約100名、報道機関からも取材があり、講演内容は大変好評であった。
結論
1.保健所の活動実態の基礎データが得られ、保健所の活動の活性化と充実に必要な課題が明らかになった。
2.保健所の立場からは、HTLV-1感染の感染症法五類感染症指定を前向きに捉え、差別と偏見を撲滅するための啓発活動の充実と専門医療機関との連携の強化必要であることが再度確認された。
3.HTLV-1研究開発の現状把握は、「合同成果発表会」での発表と情報交換を通じて有効に行われた。病態把握から新規治療法の開発研究が活発に進められていると判断された。
4.WHOがHTLV-1感染を性感染症として予防に取り組むことを踏まえて、国内の対応を更に検討する必要がある。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201919031Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 14,488円
人件費・謝金 936,904円
旅費 1,213,120円
その他 1,685,488円
間接経費 1,150,000円
合計 5,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
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