HPVワクチンの安全性に関する研究

文献情報

文献番号
201919028A
報告書区分
総括
研究課題名
HPVワクチンの安全性に関する研究
課題番号
H30-新興行政-指定-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
岡部 信彦(川崎市健康福祉局 川崎市健康安全研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 斉藤 和幸(国立研究開発法人 国立成育医療研究センター センター長)
  • 池田 修一(国立大学法人信州大学 医学部附属病院 特任教授)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
22,748,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究ではワクチン接種後に有害事象が生じ医療機関受診歴のある者のうち同意を得た者を対象とし、患者個人から臨床情報を入手する縦断的Webアンケート調査によってワクチン接種後に有害事象を発生した患者における長期的な症状経過や予後を把握することを目的とする。副反応疑い報告によるとワクチン接種後に症状が生じたと報告があった者のうち、医師又は企業が重篤と判断した者の数は1,737名(2017.4末)。法に基づく救済制度に申請をした者は472名(2017.9 末)、祖父江班における解析対象者は51名である。これらの情報等を踏まえ当初は220症例、その後症例の重複等から100症例程度を本研究における目標登録数と設定している。2018年度には、祖父江班が作成した調査項目を再検討し、医療機関baseではなく患者本人が入力することが可能かつ予後調査に重要と考えられる変数を同定し、固定された調査項目に基づいてweb入力システムの構築を行った。厚生労働省、PMDAと協働して患者個人に直接研究参加への依頼を行えるよう協議を行った。2019年度には、参加の同意を得られた患者個人によってweb入力された情報を集計する。2020年度は、本システムに基づく長期フォローアップを継続するとともに、2018~2020年度に入力された情報を集計し解析する。
研究方法
基本的には患者本人から研究班が直接収集する事とするが、患者本人からの情報収集が不可能な場合には親権者等からの代理回答も可能とする。救済認定患者に対し文書で研究参加を案内する研究案内文書(パンフレット)を郵送する。研究案内文書の送付は、各組織(国、市区町村、PMDA、予防接種リサーチセンター)より対象者に送られる。各組織は、認定通知書、または支給決定通知書を救済認定患者に送付する際に、パンフレットを同封することにより、研究対象者のもとに案内文書を届ける。また、厚生労働科研祖父江班ならびに協力医療機関等の協力を得て、研究への参加を希望する研究対象者に対しても、パンフレットを配布する。研究対象者は、パンフレットに記載されたURLもしくは二次元バーコードを使って、研究説明ウェブサイトにアクセスし、研究ならびに研究参加に関する詳細な説明を閲覧する。
結果と考察
1. HPVワクチン接種後に生じた症状の経過とニーズを探索する縦断的観察研究(岡部、斉藤、池田)
(1)前回疫学調査のアンケート項目/結果を踏まえたアンケート調査票項目の決定
(2)研究対象者の選定基準作成
(3)ウェブアンケートシステム・研究ウェブサイトの構築
(4)研究案内パンフレットの作成と配布
(5)研究ウェブサイトの作成
(6)令和2年3月31日時点での患者登録状況::令和2年3月31日時点で、アンケートアクセスは7件あり、問い合わせは1件あった。
2.HPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関する脳神経医学の面からの解析(池田)
(1)HPVワクチン接種の積極的勧奨が中止されて6年半が経ており、有害事象を訴える患者数は減少していると推測される。
(2)有害事象の主な症状は高度な全身倦怠感、酷い頭痛、四肢・体幹の疼痛、四肢の運動麻痺、知覚過敏、手足の振るえ、学習障害、睡眠異常、月経異常であった。
(3)令和2年10月11~13日までロシアのサンクトペテルブルク大学で開催された国際自己免疫学学会に出席して、日本におけるHPVワクチン接種後の有害事象について発表し、同時に海外の研究者と意見交換を行った。
(4)ドイツ・ベルリンにあるCellTrend GmbH研究所の協力を得て、ELIZA法による自律神経受容体に対する自己抗体の検出法を確立した。
結論
・HPVワクチンの安全に関する研究の患者登録、データ蓄積を開始できた。
・HPVワクチン接種後の有害事象を呈する患者の発現様式と症状の推移に関して、脳神経医学の面からの解析をした。その結果、最近2年間は同症状を訴えて受診する患者が大きく減少しており、また主訴となる症状も変化していることが判明した。HPVワクチン接種後に見られた有害事象を引き起こす可能性のある分子機序として、自律神経受容体に対する自己抗体の関与が推測された。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201919028Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
29,100,000円
(2)補助金確定額
22,622,000円
差引額 [(1)-(2)]
6,478,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,186,746円
人件費・謝金 11,642,385円
旅費 674,850円
その他 2,767,398円
間接経費 6,352,000円
合計 22,623,379円

備考

備考
対象者の選定基準や周知方法の調整、ウェブアンケートシステムにおける質問票内容とセキュリティ対策、患者への研究参加呼びかけのパンフレット作製等に、厚生労働省をはじめとする関係諸機関との調整にかなりの時間を要した。ウェブサイトは、ウェブアンケートシステムの稼働開始とあわせて、令和2年2月17日にオープンしたが、まだデータ解析までは至らず、予定していた支出が発生するまで進まなかったため、未使用となった補助金を返還する。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-