国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークを強化するための研究

文献情報

文献番号
201919013A
報告書区分
総括
研究課題名
国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークを強化するための研究
課題番号
19HA1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 義継(国立感染症研究所 真菌部)
研究分担者(所属機関)
  • 調 恒明(山口県環境保健センター)
  • 森 嘉生(国立感染症研究所ウイルス第三部)
  • 松井 真理(国立感染症研究所薬剤耐性研究センター)
  • 松岡 佐織(国立感染症研究所エイズ研究センター)
  • 蒲地 一成(国立感染症研究所細菌第二部)
  • 前田 健(国立感染症研究所獣医科学部)
  • 渡邉 真治(国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター)
  • 前川純子(国立感染症研究所細菌第一部)
  • 吉田 弘(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 永宗喜三郎(国立感染症研究所寄生動物部)
  • 池辺忠義(国立感染症研究所細菌第一部)
  • 林 昌宏(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 染谷 雄一(国立感染症研究所ウイルス第二部)
  • 朝倉 宏(国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部)
  • 藤本 嗣人(国立感染症研究所感染症疫学センター)
  • 御手洗 聡(公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部)
  • 安藤 秀二(国立感染症研究所ウイルス第一部)
  • 梅山 隆(国立感染症研究所真菌部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
11,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 COVID-19パンデミックは世界的に数百万人の死亡をもたらし感染症対策の重要性を再認識させた。平成28年度から自治体は病原体検査を実施する法的な義務を負い検査の機能強化維持が課題となっている。これら行政が関与する感染症対策の初動スキームは、①先ず病原体を特定、②判明した病原体のサーベイランスによる感染拡大状況の把握である。しかし、現行では国と自治体が統一的に上記スキームを可能とする公的システムが存在しないため、何らかの手段により必要な病原体検査を全国規模で実施するラボネットワークは国の感染症危機管理上、必須である。本研究班では、国立感染症研究所と全国の地方衛生研究所が相互に補完協力して、国内の感染症に対応することを目的として、ウイルス・細菌・真菌・寄生虫などあらゆる病原体に対して行政の関与が必要な感染症に備える研究を実施する。
 研究成果は、全国の行政機関における病原体検査能力の向上と維持につながり、わが国における精度の高い感染症発生動向調査結果として反映される。感染症の発生動向は施策に直接反映される。パンデミック時に流行状況を把握する必要が生じた場合、本研究成果の活用により、全国で統一された病原体検査が迅速かつ円滑に行われる。さらに、検査法の統一化によりえられる正確かつ共有可能な病原体情報は、疫学の精度を高め効果的なパンデミック対策に資する。
研究方法
 地方衛生研究所と国立感染症研究所が共同で実施すべきレファレンス活動を、双方の病原体担当職員が、地方衛生研究所全国協議会の感染症対策部会と連携しながら研究を実施した。検査体制について病原体担当者レベルで協議し、各病原体レファレンスセンター活動、ならびに、病原体の診断法・疫学解析法の確立を中心に行った。
 各病原体レファレンスセンター活動としては、それぞれの病原体や疾病について、全国で分離された株の型別、薬剤耐性株の出現状況調査、講習会・技術研修会の実施、検査法の検討、また、レファレンス活動に必要となる病原体などの診断法・疫学解析法の確立および評価を行った。
結果と考察
 各レファレンスセンターでは遺伝子検出法・血清診断法の開発・改良・地衛研への配布等を行い、各レファレンスセンターを中心とした病原体検査体制の強化と危機対応や疫学調査に貢献した。麻疹・風疹は遺伝子検査実施状況の調査、薬剤耐性は報告データの精査、HIV関連感染症は遺伝子検査の導入支援、百日咳はマクロライド耐性百日咳菌の鑑別・検出系の構築、動物由来感染症はSFTSウイルスの外部精度評価、大腸菌・レジオネラ・レンサ球菌・アデノウイルスは血清や遺伝子の型別分類、寄生虫は技術研修と遺伝子検査、アルボウイルスはデング熱・日本脳炎の実験室診断実施、カンピロバクターは分離株の薬剤感受性試験・血清型別、結核は遺伝子型別試験の精度評価、ノロウイルスはノロウイルス・ロタウイルス検出マニュアル、リケッチアはリケッチア症の診断マニュアル、真菌はコクシジオイデス症の病原体検出マニュアルを作成した。
また、検査体制の整備に関しても、感染研HP上で病原体検出マニュアルの改訂・追加等を行い、平成28年4月の感染症法改正による地衛研の病原体検査数の調査を行った。インフルエンザは地衛研の検査技術の維持・向上のための実態調査を行った。研修会・講習会や検査プロセスの改善に向けたワークショップ(エンテロウイルス)を行うことによって、検査技術の維持・向上に貢献し、疫学調査を行い、全国発生動向・集団発生事例の監視を可能にした。
結論
 国立感染症研究所と全国の地方衛生研究所の共同検査体制を維持するために、病原体検出マニュアルの改訂・整備を継続し、全国の地方衛生研究所での感染症検査体制を維持するための各病原体の遺伝子検査、血清診断の開発・改良、疫学調査、標準品の作製供給、検査技術の継承のため講習等を実施した。
 本研究はレファレンスセンター活動を軸として、全国の公的な病原体検査機関が機能的に連携するうえで極めて重要な役割を果たした。さらに、本ネットワークを維持強化するためには、全国地方衛生研究所の各施設における専門性を考慮した人員配置と組織構築と、継続的なリソースの確保の二点が重要課題と考えられる。
本ネットワークの活用により、国レベルの危機的感染症に際し迅速検査対応や情報収集が可能となり、患者のみならず国民の福祉に資する。

公開日・更新日

公開日
2021-05-20
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201919013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
11,500,000円
(2)補助金確定額
11,494,000円
差引額 [(1)-(2)]
6,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 8,047,360円
人件費・謝金 236,100円
旅費 2,192,310円
その他 1,019,097円
間接経費 0円
合計 11,494,867円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
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