文献情報
文献番号
201919009A
報告書区分
総括
研究課題名
環境中における薬剤耐性菌及び抗微生物剤の調査法等の確立のための研究
課題番号
H30-新興行政-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
金森 肇(東北大学大学院医学系研究科 内科病態学講座 総合感染症学分野)
研究分担者(所属機関)
- 黒田 誠(国立感染症研究所 病原体ゲノム解析研究センター)
- 楠本 正博(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究部門 細菌・寄生虫研究領域)
- 渡部 徹(山形大学 農学部)
- 山口 進康(地方独立行政法人大阪健康安全基盤研究所・衛生化学部 生活環境課)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
6,448,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
環境中における薬剤耐性や抗菌薬の調査法が確立されておらず、本邦の環境中の薬剤耐性菌および残留抗菌薬の実態は不明である。環境が人および動物に与えるリスクの定量評価・推定、薬剤耐性機序や伝播経路解明につながる調査法の確立が喫緊の課題である。本研究班の研究目的は、次の通りである。1) 環境AMRについての国内外の資料を収集し、文献レビューを実施する。2) 環境水の薬剤耐性を評価するための方法を確立し、本邦における環境水の薬剤耐性菌および残留抗菌薬の実態を調査する。3) 環境由来薬剤耐性菌のゲノム情報を解析し、本邦の臨床・家畜由来薬剤耐性菌のゲノム情報データベースと比較検討することで、薬剤耐性ゲノムの観点からワンヘルス・アプローチの完成を図る。4) 環境中の薬剤耐性や抗微生物薬が人および動物へ与える影響についてリスクアセスメントを行う。
研究方法
令和元年度においては、本邦における環境AMRおよび残留抗菌薬の調査法の確立と実態調査を実施した。国内外における環境中の薬剤耐性に関する現状と課題を明らかにするため、昨年度に引き続き、国内および海外の環境AMR文献レビューとリスク評価を行った。本研究班における研究代表者および研究分担者は、各研究課題である1) 医療と環境の薬剤耐性に関する研究、2) 環境微生物ゲノム情報の取得、3) 大都市圏の環境水調査および薬剤耐性菌の分離、4) 動物からの薬剤耐性菌の分離と解析、5) 残留抗菌薬の検査・評価にかかる方針策定と提言、6) 国内外の文献レビューとリスクアセスメントへの取り組みを継続した。
結果と考察
環境AMRモニタリングに資する下水処理場の放流水のメタゲノム解析法の標準作業手順書を確立し、各地方衛生研究所の協力を得て、全国的な環境水AMR調査を実施した。地域の病院排水の環境AMR調査、養豚場の下水の環境AMR調査、下水処理水および病院排水の抗菌薬分析を実施するとともに、国内および海外の環境AMR文献レビューとリスク評価を行った。人での医療関連感染やアウトブレイク事例、輸入感染症の原因となるカルバペネマーゼ遺伝子やコリスチン耐性遺伝子を保有する薬剤耐性菌が本邦の環境水から検出されていることから、さらに環境AMRモニタリングを充実させ、ワンヘルスの観点から特定の薬剤耐性菌や耐性遺伝子が環境・動物・人の間で循環している可能性について理解していくことが重要である。環境中における薬剤耐性および残留抗菌薬の調査法を確立し、ワンヘルスの観点から環境AMRに関する研究を継続していく必要がある。
結論
環境中の薬剤耐性菌および残留抗菌薬の人・動物に与える影響を評価する手法を確立し、環境分野の薬剤耐性への影響を解明することは、ワンヘルス・アプローチの観点から薬剤耐性に関する施策を推進していくために非常に重要である。本邦の薬剤耐性および抗菌薬の実態調査を充実させ、本研究結果と国内外の文献情報をもとにリスク評価を行い、環境中の薬剤耐性に必要な対策を明らかにしていく。
公開日・更新日
公開日
2021-05-21
更新日
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