百日咳とインフルエンザの患者情報及び検査診断の連携強化による感染症対策の推進に資する疫学手法の確立のための研究

文献情報

文献番号
201919007A
報告書区分
総括
研究課題名
百日咳とインフルエンザの患者情報及び検査診断の連携強化による感染症対策の推進に資する疫学手法の確立のための研究
課題番号
H29-新興行政-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 大塚 菜緒(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
3,168,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
百日咳に関しては、三種混合ワクチン(DPT)の追加接種に関する効果と安全性についての検討を行うこと、ならびに国内健常人が保有する百日咳抗体の量的・質的評価を目的に抗体価および抗原抗体結合力(avidity index: AI)の解析を行う。
インフルエンザに関しては、インフルエンザサーベイランスの強化を基盤としてワクチンの有効性を安定的に分析するために、流行状態をどのように定義するかの知見を提出することを目的とする。
研究方法
DPTワクチンを4回接種歴のある約100名の就学前の児童に対し、DPT追加接種を行い抗体価の上昇、並びに接種後の副反応の発生状況について調査した。また、抗百日咳毒素(PT) IgGおよび抗繊維状赤血球凝集素(FHA) IgGの抗体価および抗原抗体結合力(avidity index: AI)を測定し,年齢群別解析を加えた。
インフルエンザについてはウイルスの曝露が比較的一定と考えられる離島において、インフルエンザ迅速検査に関する情報収集し定点当たり10以上の期間に限定し迅速検査結果を元にTest-negative designを用いたインフルエンザワクチン効果の分析を行った。
結果と考察
DPT追加接種はブースター効果を認めた。抗PT-IgG抗体の陽性率は追加接種1年後も80%を超えていた。安全性については特に大きな問題となる事例は報告されなかった。また、1-2歳群を基準とすると,3-6歳群では抗PT IgGの抗体価・AIともに有意に低いことが判明した。このことから,ワクチン接種により得られる有効な抗PT IgGは急速に減弱する可能性が示唆された。
インフルエンザワクチンの効果の解析は、6か月~5歳は56.3%、65歳以上は83.4%となった。地域のワクチン効果分析に必要な国内の流行状態の指標として、定点当たり12程度以上から4週間の分析で、その後大きく変化しない統計学的に有意な結果が得られた。
結論
DPTワクチンの就学時前の追加接種の必要性が示唆され、実際に接種でブースター効果があることが示された。
インフルエンザに関しては国内サーベイランス情報を目安として早期のワクチン効果情報が得られる可能性が示唆され、迅速で安定的なインフルエンザワクチンの有効性が例年報告されることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201919007B
報告書区分
総合
研究課題名
百日咳とインフルエンザの患者情報及び検査診断の連携強化による感染症対策の推進に資する疫学手法の確立のための研究
課題番号
H29-新興行政-一般-007
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
神谷 元(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
研究分担者(所属機関)
  • 砂川 富正(国立感染症研究所 感染症疫学センター)
  • 大塚 菜緒(国立感染症研究所 細菌第二部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
百日咳については、全数報告となったサーベイランスの報告基準を明確にし、正確な疫学を把握するとともに、得られた課題に対して有用な介入策を提案、評価することを目的とした。
インフルエンザはインフルエンザサーベイランスの強化を基盤としてワクチンの有効性を安定的に分析するために、流行状態をどのように定義するかの知見を提出することを目的とした。
研究方法
百日咳の届け出の課題を明確にし、統一の基準で報告できるようにガイドラインを作成した。またサーベイランス結果より必要と考えられた就学前の児童に対するDPTワクチン追加接種の効果と安全性について評価した。さらに百日咳患者および健常人血清を用いて新規百日咳血清診断法のキット性能評価を行なった。また、国内健常者における抗百日咳菌IgA・IgM抗体の保有調査を実施しするとともに、百日せきワクチン含有抗原に対するIgG抗体の量的・質的な保有状況について年齢群別の傾向を調査した。
インフルエンザウイルスへの曝露が比較的一定と考えられる離島において、地域における公開されている疫学・病原体等の情報とインフルエンザ迅速検査に関する情報収集を実施し、定点当たり10以上の期間に限定し迅速検査結果を元にTest-negative designを用いたインフルエンザワクチン効果の分析を行った。
結果と考察
ガイドラインに基づく百日咳サーベイランスの実施とその結果から国内の百日咳の疫学をまとめ、①主にワクチン接種前の6か月未満児、②5~15歳の学童に患者が多く、そのほとんどが必要とされるDPTワクチンを接種していること、③成人にも百日咳患者がいることを示した。抗百日咳菌抗IgAは加齢とともに抗体価が上昇し,抗IgMは減少する傾向が認められた。国内健常人においては乳幼児期の百日せきワクチン接種直後の年齢である1-2歳群と比較して,3-6歳群では急速に抗百日咳毒素(PT) IgGの量および質が低下していることが明らかとなった。
地域のインフルエンザワクチンの効果分析に必要な国内の流行状態の指標として、定点当たり12程度以上から4週間の分析で、その後大きく変化しない統計学的に有意な結果が得られた。
結論
国内の百日咳の疫学、保有抗体価の調査からDPTワクチンの就学時の追加接種の必要性が示された。またインフルエンザワクチンの有効性について国内サーベイランス情報を目安として早期に評価できる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201919007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
全数報告となった国内の百日咳の疫学のまとめと国内健常人における抗百日咳抗体(PT IgG)調査を実施し、就学時前追加接種の必要性を疫学的、血清学的に証明するとともに、前年度から実施しているDPTワクチン追加接種の長期的な効果の検討を行い、DPT追加接種の定期接種化実施に向けた安全性、有効性のエビデンスの構築を行った。地域におけるインフルエンザの動向把握を、陽性率を中心に記述し、インフルエンザワクチン接種事業の有用性・有効性について、迅速性に重きを置いた分析を行った。
臨床的観点からの成果
百日咳患者の65%が5-15歳の学童時で80%が乳幼児期にワクチンを4回接種しているにも関わらず発症している。またそれらの児童が6か月未満児の感染源となっている。

ガイドライン等の開発
・国立感染症研究所感染症法に基づく医師届出ガイドライン(初版)百日咳. 平成 30 年 4 月 25 日
・厚生科学審議会 予防接種・ワクチン分科会 予防接種基本方針部会 ワクチン評価に関する小委員会(2018年5月17日開催、第8回)
・第13回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会ワクチン評価に関する小委員会資料
その他行政的観点からの成果
百日咳に関しては国内の疫学を明確にするとともに、効果的な介入策の検討、提言(就学時における追加接種の必要性)へとつなげた
インフルエンザに関しては地域のワクチン効果(VE)の分析に必要な国内の流行状態の指標として、定点当たり12程度以上から4週間の分析で、その後大きく変化しない統計学的に有意な結果が得られた
その他のインパクト
現行の百日咳含有ワクチンを必要回数接種していても患者が発生しており、その患者が感染源になっていること、その予防には追加接種が必要であることなどについて学会等で発表し還元した。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
3件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Fumimoto R, Otsuka N, Kamiya H et al
Seroprevalence of IgA and IgM antibodies to Bordetella pertussis in healthy Japanese donors: Assessment for the serological diagnosis of pertussis.
PLoS One  (2019)
原著論文2
Fumimoto R, Otsuka N, Sunagawa T et al
Age-related differences in antibody avidities to pertussis toxin and filamentous hemagglutinin in a healthy Japanese population
Vaccine  (2019)

公開日・更新日

公開日
2021-06-01
更新日
2024-05-24

収支報告書

文献番号
201919007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,168,000円
(2)補助金確定額
3,164,000円
差引額 [(1)-(2)]
4,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 884,298円
人件費・謝金 312,000円
旅費 959,542円
その他 1,009,010円
間接経費 0円
合計 3,164,850円

備考

備考
既存の物で対応できたので消耗品(文具)の購入をしなかった。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-