新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生的対策の強化に関する研究

文献情報

文献番号
201919004A
報告書区分
総括
研究課題名
新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生的対策の強化に関する研究
課題番号
H29-新興行政-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 清州(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部総合研究センター)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所 感染症疫学センター第一室)
  • 田辺 正樹(国立大学法人三重大学大学院医学系研究科)
  • 奥村  貴史(国立大学法人北見工業大学工学部)
  • 中島 一敏(大東文化大学スポーツ健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
5,207,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、新型インフルエンザパンデミック発生時の事前準備として、発生初期の疑い症例情報を集約するシステム(FFHS)、パンデミックの重症度や医療への負荷を評価するためにリアルタイムビッグデータを用いたサーベイランスシステムの枠組みを準備し、WHOのリスクアセスメント手法を用いて適時的にリスクアセスメントができる体制を整えておくことを目的とする。一方で臨床での使用状況に合わせて、抗ウイルス薬の備蓄状況を再評価して必要な改定につなぎ、プレパンデミックワクチンの備蓄について、我が国においてそれの必要性などを判断するために必要な資料の作成を目指す。また、本年度は携帯電話位置情報を使用した接触リスク把握システムについても基礎的検討を行った。
研究方法
発生早期の症例情報把握については、地方自治体との協議をもとに、これまでに開発したFFHSの機能を改善し、自習教材を作成した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の勃発に際して厚労省担当部局の指示によりシステムのCOVID-19に適応させるための改修を行った。また携帯電話位置情報を用いた接触リスク通知システムについては、省庁の管轄部局、社会基盤情報流通推進協議会などと法制上、技術上の協議を行い枠組みとしてまとめた。リスクアセスメントのためのビッグデータを使用したサーベイランスシステムとして、国立病院機構が維持するリアルタイム電子カルテネットワークである国立病院機構診療情報集積基盤(National Hospital Organization Clinical Data Archive;NCDA)からデータを抽出して、インフルエンザの重症度とインパクト評価手法を開発した。このデータと感染症法に基づくサーベイランス(NESID)データとともに、WHOの推進するリスク評価プログラム(Pandemic Influenza Severity Assessment:PISA)への適用を検討し最終的な指標を設定した。抗インフルエンザウイルス薬のシーズン毎の使用量を推計し、備蓄量との関連性から備蓄体制の評価のために資料作成し、プレパンデミックワクチンの備蓄について、国際機関や学術団体での情報を収集し、本邦における今後の進め方について提言を行った。
結果と考察
FFHSについてシステム開発、自習教材を含めて完了し、稼働可能な状態となった。厚労省の指示によりCOVID-19のために改修を終了してスタンバイ状態とした。携帯電話位置情報を使用した接触リスク把握システムは個人情報保護を優先した方式を考案し、計算手法の具体化を目指した技術文書を策定した。NCDAからのデータ抽出により、季節性インフルエンザの重症度とインパクトを評価でき、また電子カルテならではの臨床と関連付けた予後の解析が出来た。インパクトが大きかったとされる2018/19シーズンインフルエンザでは、入院死亡率や人工呼吸器比率は通常と変わらず、重症度は変わらないことを示した。NCDAおよびNESIDデータをWHOのPISAに適応させ、リスクアセスメントの枠組みを作成した。季節性インフルエンザにおいて、毎シーズン抗ウイルス薬の使用量を評価して、備蓄内容との乖離を指摘し、今後の備蓄内容の改善に反映させていくこと、また国際機関や学術分野におけるプレパンデミックワクチンの備蓄に対する考え方について整理し今後の日本において系統的なリスク評価を行うことを提言した。
結論
 パンデミック初期に効率的に疑い例、確定例を管理できるシステムを開発した。これは即座に稼働が可能な状態であり、COVID-19に適応改修も終了したが、今般のCOVID-19で活用されなかったのは残念なことである。また携帯位置情報を使用して、かつ個人情報を最大限に保護する方法において接触情報を提供する枠組みを構築しつつあり、今後に向けて進めるべきである。NCDAのデータを利用することによって、パンデミック時の流行状況、医療負荷や疾病重症度を評価できることを示し、バッチファイルを作成することによって稼働可能な状態であるため、今後のパンデミックに備えて事業化を考えておくべきである。今後、経時的に抗インフルエンザウイルス薬の使用状況をモニターし、備蓄薬剤の評価を行うこと、特に、今回の新型コロナウイルス感染症の発生を踏まえ、ゾフルーザに加え、アビガンも含めた新興感染症発生時に備えた備蓄の在り方について、再度、見直しが必要と考えられる。そして、プレパンデミックワクチン備蓄は、今後その是非を含めて、リスク評価を行うべきであり、本邦での今後の実行に向けての課題を提言した。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201919004B
報告書区分
総合
研究課題名
新型インフルエンザ等の感染症発生時のリスクマネジメントに資する感染症のリスク評価及び公衆衛生的対策の強化に関する研究
課題番号
H29-新興行政-一般-004
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
谷口 清州(独立行政法人国立病院機構三重病院 臨床研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 堀口 裕正(国立病院機構本部総合研究センター 診療情報分析部)
  • 松井 珠乃(国立感染症研究所感染症疫学センター 第一室)
  • 田辺 正樹(三重大学大学院医学系研究科)
  • 奥村 貴史(北見工業大学 工学部)
  • 中島 一敏(大東文化大学 スポーツ健康科学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、新型インフルエンザパンデミック発生時の事前準備として、発生初期の疑い症例情報を集約するシステム(FFHS)、パンデミックの重症度や医療への負荷を評価するためにリアルタイムビッグデータを用いたサーベイランスシステムの枠組みを準備し、WHOのリスクアセスメント手法を用いて適時的にリスクアセスメントができる体制を整えておくことを目的とする。また、抗ウイルス薬の国家備蓄の継続的な評価のために、季節性インフルエンザにおける抗ウイルス薬の使用状況の調査を行うこと、プレパンデミックワクチンの備蓄について、必要性などを判断するために必要な情報を収集し今後の方策について提言を行う。最終年度は接触者を効率的に管理するための携帯電話位置情報を使用した接触リスク把握システムについての検討を加えた。
研究方法
FFHSについては、地方自治体との協議をもとに、これまでに開発したFFHSの機能を改善し、自習教材を作成した。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の勃発に際して厚労省担当部局の指示によりシステムのCOVID-19に適応させるための改修を行った。また携帯電話位置情報を用いた接触リスク通知システムについて、管轄省庁、通信事業者の協議会などと法制・技術上の協議を行った。感染症法に基づくサーベイランスデータにより感染性と重症度の評価が可能であるかを検討し、それらを補完する手段として、国立病院機構が維持するリアルタイム電子カルテネットワークである国立病院機構診療情報集積基盤(National Hospital Organization Clinical Data Archive;NCDA)からデータを抽出して、季節性インフルエンザデータを使用して、インフルエンザの重症度とインパクトを評価する手法を開発した。パンデミックの際に包括的なリスクアセスメントを実施するために、WHOのリスク評価プログラム(Pandemic Influenza Severity Assessment:PISA)にサーベイランスデータを当てはめ、最終的な指標を設定した。抗ウイルス薬のシーズン毎の使用量を推計し、毎年の使用料を検討した。プレパンデミックワクチンの備蓄について、近隣諸国や米国、国際機関や学術団体での情報を収集し、本邦における今後の進め方について提言を行った。
結果と考察
FFHSについてシステム開発、自習教材を含めて完了し、稼働可能な状態となった。厚労省の指示によりCOVID-19のために改修を終了してスタンバイ状態とした。携帯電話位置情報を使用した接触リスク把握システムは個人情報保護を優先した方式を考案し、計算手法の具体化を目指した技術文書を策定した。NCDAからのデータ抽出により、継続的に季節性インフルエンザの重症度とインパクトを評価したところ、毎年流行状況は変わるが、入院死亡率や人工呼吸器比率は通常と変わらず、重症度は変わらないことを示した。NCDAおよびNESIDデータをWHOのPISAに適応させ、リスクアセスメントの枠組みを作成した。季節性インフルエンザにおいて、毎シーズン抗ウイルス薬の使用量を推計する方法を開発した。これにより現状の備蓄内容との乖離を指摘し、公衆衛生審議会に資料を提出し、備蓄内容が変更された。また国際機関や学術分野におけるプレパンデミックワクチンの備蓄に対する考え方について整理し今後系統的なリスク評価が必要なことを提言した。
結論
 パンデミック初期に効率的に疑い例、確定例を管理できるシステムの開発が完了した。これは即座に稼働が可能な状態であり、COVID-19に適応改修も終了したが、今般のCOVID-19で活用されなかったのは残念なことである。また携帯位置情報を使用して、かつ個人情報を最大限に保護する方法において接触情報を提供する枠組みを構築しつつあり、今後に向けて進めるべきである。NCDAのデータを利用することによって、パンデミック時の流行状況、医療負荷や疾病重症度を評価できることを示し、バッチファイルを作成することによって稼働可能な状態であるため、今後のパンデミックに備えて事業化を考えておくべきである。今後、経時的に抗インフルエンザウイルス薬の使用状況をモニターし、備蓄薬剤の評価を行うこと、特に、今回の新型コロナウイルス感染症の発生を踏まえ、ゾフルーザに加え、アビガンも含めた新興感染症発生時に備えた備蓄の在り方について、再度、見直しが必要と考えられる。そして、プレパンデミックワクチン備蓄は、今後その是非を含めて、リスク評価を行うべきであり、本邦での今後の実行に向けての課題を提言した。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201919004C

収支報告書

文献番号
201919004Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,779,000円
(2)補助金確定額
9,779,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,796,573円
人件費・謝金 3,647,715円
旅費 1,605,186円
その他 2,347,053円
間接経費 572,000円
合計 9,968,527円

備考

備考
研究上の必要性のため、自己資金189,527円を充当した。

公開日・更新日

公開日
2022-01-05
更新日
-