文献情報
文献番号
201919003A
報告書区分
総括
研究課題名
肺炎球菌ワクチンの費用対効果等についての社会の立場からの評価研究
課題番号
H29-新興行政-一般-003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
池田 俊也(国際医療福祉大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 五十嵐 中(横浜市立大学 医学群)
- 白岩 健(国立保健医療科学院 保健医療経済評価研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,462,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
肺炎球菌ワクチンおよび帯状疱疹ワクチンについて、新たにQOL調査を実施するとともに、現時点で得られているエビデンスを活用した費用対効果の評価を実施することを目的とした。
研究方法
首都圏の高齢者施設44施設において、肺炎および帯状疱疹にともなう発症時に「入院時のQOL」「退院後のQOL」を、EQ-5D-5L質問票により取得した。肺炎球菌ワクチンの費用対効果については1) ワクチン接種を行わない、2) PPSV23の単独接種、3) PCV13の単独接種、4) PCV13-PPSV23の連続接種の4戦略について費用対効果を推計した。帯状疱疹ワクチンについては、免疫正常者のうち50歳、60歳、70歳の3つの年齢区分の集団について費用対効果を推計した。いずれのワクチンも公的医療費支払者の立場から、保健医療費(ワクチン接種関連費用と、感染症治療に関わる保険医療費)のみを分析に組み込んだ。効果指標にはQALYを用い、1QALY獲得あたりの増分費用効果比ICERを算出した。
結果と考察
2019年3月時点で、2,104名の入所者に対しQOL (EQ-5D)・ADL (Barthel Index)・DBD (Dementia Burden Disturbance, 認知症の介護負担)の調査を実施した。帯状疱疹20名・肺炎100名の発症があったが、なお発症前時点のQOLは、3ヶ月ごとのデータ取得のタイミングと、発症のタイミングから確実に「発症前に取得した」と判定できる数値がある患者の数値のみを用いた (帯状疱疹で9件・肺炎で61件)。入院前のQOLと比較して、帯状疱疹では0.238-0.273の、肺炎では0.147-0.150程度、QOL値の低下が見られた。入院中と退院後のQOL値には、有意な差はなかった。一方で、入院前のQOL値と入院中・退院後のQOL値は、帯状疱疹では退院後と入院前の間に(p=0.03)、肺炎では両者ともに有意差があった。
得られた値をもとに、肺炎球菌ワクチンの費用対効果の推計を行なったところ、接種なしと比較して、PCV13単独接種、PPSV23単独接種、連続接種ともにICERは500万円/QALY未満であった。PPSV23の単独接種と比較した場合も、PCV13単独ならびに連続接種はICERは500万円/QALY未満であった。
帯状疱疹ワクチンでは、ICERが500万円/QALY以下となる確率はVVLでは各年齢集団に対して90%以上であり、HZ/suでは50歳の集団、60歳の集団において10%以下、70歳の集団において59%であった。
得られた値をもとに、肺炎球菌ワクチンの費用対効果の推計を行なったところ、接種なしと比較して、PCV13単独接種、PPSV23単独接種、連続接種ともにICERは500万円/QALY未満であった。PPSV23の単独接種と比較した場合も、PCV13単独ならびに連続接種はICERは500万円/QALY未満であった。
帯状疱疹ワクチンでは、ICERが500万円/QALY以下となる確率はVVLでは各年齢集団に対して90%以上であり、HZ/suでは50歳の集団、60歳の集団において10%以下、70歳の集団において59%であった。
結論
肺炎球菌ワクチンでは、接種なしと比較して、PCV13単独接種、PPSV23単独接種、連続接種ともに費用対効果は良好と考えられた。また、現行の日本の戦略 (PPSV23の単独接種)と比較した場合も、PCV13単独ならびに連続接種は費用対効果が良好であった。帯状疱疹ワクチンでは、50歳以上の免疫正常者に対する帯状疱疹ワクチン接種の費用対効果はVVLにおいては各年齢集団において費用対効果が良好であり、HZ/suでは70歳の集団で費用対効果が良好であった。
公開日・更新日
公開日
2022-01-05
更新日
-