ギャンブル等依存症の治療・家族支援に関する研究

文献情報

文献番号
201918038A
報告書区分
総括
研究課題名
ギャンブル等依存症の治療・家族支援に関する研究
課題番号
19GC1016
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
松下 幸生(独立行政法人国立病院機構久里浜医療センター)
研究分担者(所属機関)
  • 白川 教人(横浜市こころの相談センター)
  • 森田 展彰(筑波大学 精神保健学)
  • 宋 龍平(岡山県精神科医療センター 精神科)
  • 宮田 久嗣(東京慈恵会医科大学)
  • 神村 栄一(新潟大学人文社会科学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
17,500,000円
研究者交替、所属機関変更
研究分担者交替 樋口 進(令和1年4月1日~令和2年3月31日)→ 松下幸生(令和1年4月1日以降)

研究報告書(概要版)

研究目的
1)併存疾患を含めたギャンブル障害(GD)の実態を把握し、治療プログラムの効果や予測因子を検討する、2)精神保健福祉センター職員を対象とした研修効果を検証し支援状況を調査する、3)自助グループや民間支援団体への支援のための課題抽出を行う、4)PNFの効果の検証を行う、5)GDの精神科併存疾患の実態を調査し、治療への影響を検討する、6)スマートフォンを利用した簡易介入プログラムを作成して効果を検証する、7)標準的治療プログラムの研修会を実施して普及を図る。
研究方法
1)治療効果の予測因子を検討し、ベースラインおよび追跡調査のプロトコールを作成した。今後は1年間の追跡調査を開始する。効果判定にはギャンブル行動、治療の継続等を用いる。
2)精神保健福祉センター職員に対し、基礎知識やSAT-Gプログラムの研修を実施し、アンケートや評価尺度により効果を検証する。また、全国の精神保健福祉センターを対象に、相談件数、指定相談機関の選定状況、治療プログラムの実施状況等について調査する。
3)GAおよびギャマノンのスタッフ、利用者にインタビューを実施した。また、民間回復施設入所者を対象に自記式のアンケート調査を行い、入所時、就労や職場復帰への移行時、その後3ケ月の3回の変化を追跡する。
4)ウェブ調査によりPGSIスコア3点以上の参加者を募集し、ランダムにPersonalized normative feedback (PNF)を受ける介入群と評価のみの対照群に割り付けて効果を評価する。
5)専門医療機関の初診患者を対象に、追跡調査を行う。調査項目は背景情報、ギャンブル行動、精神科併存症の有無などであり、SOGS、AUDIT、PHQ-9などの尺度を用いて評価し、併存疾患がGDの治療におよぼす影響、GDの治療に特別な修正を必要としたか調査する。
6)スマートフォンによる簡易介入プログラムを作成し、PNFおよび認知行動理論に基づいたチャットボットプログラムを設計、開発する。その効果をスクリーニングテストによるギャンブル問題で何らかの問題が疑われるものを対象に評価する。
7)GDの治療プログラムを普及するための研修会を実施して治療プログラムや家族支援に関する手法の普及と均霑化を図る。
結果と考察
1)文献調査より、男性、高齢、抑うつ症状が軽い、ギャンブル症状の重症度が低いなどが良好な治療成績と関連していた。これらの知見を参考に追跡調査のプロトコールを作成し、標準的治療プログラムを製本、印刷して次年度の多施設共同研究の準備とした。
2)研修を実施して効果を検証したところ、基礎知識、相談技量とその自信、SAT-G活用の自信のいずれも向上していた。精神保健福祉センターでの相談件数は平均149.5件と増加傾向にあった。当事者向けプログラムは47のセンターで実施されており、家族に対する支援プログラムは、39のセンターで実施されていた。
3)自助グループの利用者が元々生きにくさの課題を抱えており、GDになったこと、自助グループでの体験は同じ立場の仲間が迎えられ、正直になれる場を提供されることや12ステッププログラムにより、自身の考え方が変わり、生きていることが肯定的にとらえられるようになるなど大きな効果を感じていることが明らかになった。
4)2020年3月に被験者スクリーニングを開始したが、新型コロナウィルスの影響のため停止し、7月以降に介入を再開する。
5)追跡調査のプロトコールを作成した。精神疾患の有無を医師が確認し、MINIを用いてスクリーニングを行う。さらにSOGS、PHQ-9などで評価を行う。
6)GDに対する簡易介入プログラムとして、スマートフォンを用いたPNFシステム、及び認知行動理論に基づいたチャットボットプログラムを設計した。
7)GDの標準的治療プログラムを普及させるための研修プログラムを作成した。
結論
1)心理療法の治療効果について文献調査を行い、実態および治療効果検証研究のプロトコールを作成した。
2)研修会を実施することで精神保健福地センターにおけるGDの相談の技術支援向上に役立ち、回復の一助になる。
3)自助グループ利用者の生きにくさの課題、自助グループ参加の有用性を示し、その意義や特徴を理解して、当事者や家族に対して紹介を行うことが重要であると考えられた。
4)研究実施を早期停止したため、結論に至らなかった。
5)調査用紙およびプロトコールを作成した。次年度はこれらを使用して本格的な調査を行う予定である。
6)開発したプログラムの効果検証を経て、低コストの介入の実用化を目指す。
7)GDの標準的治療プログラムを普及させるための研修プログラムを作成した。

公開日・更新日

公開日
2024-03-18
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201918038Z