地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究

文献情報

文献番号
201918036A
報告書区分
総括
研究課題名
地域精神保健医療福祉体制の機能強化を推進する政策研究
課題番号
19GC2003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
藤井 千代(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 野口 正行(岡山県精神保健福祉センター)
  • 川副 泰成(総合病院国保旭中央病院)
  • 椎名 明大(千葉大学社会精神保健教育研究センター)
  • 瀬戸 秀文(長崎県病院企業団長崎県精神医療センター)
  • 松田 ひろし(全国精神医療審査会連絡協議会)
  • 菊池 安希子(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
33,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
地域精神保健医療福祉制度の充実により精神障害者が地域で安心して自分らしく生活できるようにするため、エビデンスに基づいた効果的な精神保健医療福祉サービスを地域でより効果的に展開するための具体的かつ実現可能な提言を行うことを目的とする。
研究方法
地域精神保健医療福祉体制の機能強化に関連する、1.自治体による精神障害者支援のあり方、2.精神科外来の機能強化、3.措置入院の適正化、4.退院後支援のあり方、5.権利擁護のあり方、6.精神科医療の国際比較 に関する課題について、以下の分担研究班で課題の検討状況を共有しつつ、調査研究を実施した。
精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築に関する研究(野口正行)
精神科外来機能強化に関する研究(川副泰成)
措置入院及び退院後支援のあり方に関する研究(椎名明大)
措置通報及び措置入院の実態に関する研究(瀬戸秀文)
精神医療審査会のあり方に関する研究(松田ひろし)
精神障害者の意思決定及び意思表明支援に関する研究(藤井千代)
精神保健医療福祉制度の国際比較(菊池安希子)
結果と考察
自治体による精神障害者支援のあり方については、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム構築の好事例自治体へのヒアリングを実施し、好事例分析に基づき包括ケア構築のためガイドの改訂作業を実施中である。また質的分析から得られた知見を踏まえて、来年度実施する自治体等への調査準備を行っている。精神科外来の機能強化に関しては、包括的支援マネジメント(ICM)、デイケア、アウトリーチについて検討した。ICMについては、入院関連アウトカムの比較により効果が示され、精神科退院時共同指導料、療養生活環境整備指導加算の新設につながった。また現在前向き調査においてもICMの効果について検証中である。精神科デイケアについては、生活維持支援及び復職支援のニーズが高いことを示し、個別支援・訪問支援実施は、就労関連のポジティブアウトカムにつながる可能性が示唆された。デイケアの長期利用者には病状が不安定な者が多く、そのような患者に対する適切な支援のあり方も今後の検討課題であると考えられた。アウトリーチについては、認知症や高齢精神障害者の増加に伴い、精神症状を有する高齢者の精神科在宅診療のニーズが高まりつつある実態が示唆され、今後精神科在宅患者支援管理料「ハ」による訪問診療のニーズが増加する可能性があると考えられた。措置入院の適正化については、措置入院制度をめぐる種々の課題について、有識者を招聘して話題提供を受けるとともに、精神科医師や法学者、弁護士、裁判官といった司法精神保健に携わる職種での議論を行った。昨年度までの研究で作成した「精神科臨床におけるグレーゾーンモデル事例集」を活用して事例検討を行うことにより、多職種間で問題認識を共有して議論を深めることができる可能性が示された。また、措置入院となった精神障害者の前向きコホート研究を実施中であり、504例が登録されている。本研究は本邦発の前向きコホート研究であり、今後の措置入院制度の運用について検証する際の基礎資料となることが期待される。退院後支援のあり方については、全国の保健所を対象として調査を実施した。回答した保健所等の大半で既に支援が開始されていたが、その実数は自治体規模その他の事情により大幅な差異があった。複数回措置入院者の分析から、複数回の措置入院を予防するためには、地域におけるソーシャルサポートなど退院後のフォローアップ体制が重要であることが示唆されたが、保健所調査からは退院後支援を実施するうえでのリソース不足は明らかであり、予算措置等の対策の必要性があると考えられた。権利擁護のあり方については、全国の精神医療審査会を対象として弁護士代理人による退院請求活動等の実態調査を実施し、代理人による請求審査のなかった自治体では、代理人による審査請求があった24自治体に比べて請求の棄却率が有意に高いことが示された。また障害者権利条約の観点から入院中の精神障害者の権利擁護のあり方を検討し、精神障害当事者によるグループミーティングにおける検討された内容を踏まえて、精神科病棟に入院している人の権利擁護のための個別相談活動に関する提案を作成した。来年度以降に個別相談の試行を実施し、実行可能性につき検証する。精神科医療の国際比較について、精神科病床、平均在院日数に関する国際比較を行った。わが国の精神科療養病床数は他の欧米諸国と比較して突出して多く、精神障害者の地域生活を支える基盤整備の一層の充実が必要であると考えられた。
結論
研究はほぼ計画通り進行しており、精神障害にも対応した地域包括ケアの具現化に貢献できる地域精神保健医療福祉サービス提供のあり方の提言につなげることができると思われる。

公開日・更新日

公開日
2020-10-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201918036Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
41,400,000円
(2)補助金確定額
40,411,000円
差引額 [(1)-(2)]
989,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 1,404,853円
人件費・謝金 12,726,944円
旅費 8,298,600円
その他 8,428,179円
間接経費 9,553,000円
合計 40,411,576円

備考

備考
自己資金(576円)

公開日・更新日

公開日
2022-07-22
更新日
-