身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究

文献情報

文献番号
201918034A
報告書区分
総括
研究課題名
身体障害者補助犬の質の確保と受け入れを促進するための研究
課題番号
19GC2001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 山本 真理子(帝京科学大学 生命環境学部)
  • 清野 絵(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 水越 美奈(日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,620,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬、聴導犬)の質を確保し社会での受け入れを一層進めるために、下記を達成することを目的とする。①現行の法制度の内容を検証し、国、都道府県、認定を行う法人、訓練事業者が担うべき必要な対応を取りまとめ、質の確保を確実にするための提言を行う、②補助犬の衛生管理の実態を明らかにし、補助犬の衛生管理のために訓練事業者や使用者が行うべき対応を取りまとめ、衛生管理の視点から補助犬の質を確保するための方策を提言する。③使用者が補助犬を同伴して施設等を使用する際の課題を明らかにし、既存のガイドライン等を検証し、各分野で補助犬使用者を受け入れるための留意点について取りまとめる。④障害者のニーズを的確に把握するために、身体障害の状態を踏まえた、補助犬の種別毎の需要推計方法について検討する。
研究方法
(1)法令検証については、①訓練・認定の実態と現行法令等の比較検討、②他法・他制度の認定基準などと補助犬法との比較検討を行った。
(2)衛生管理については、第一に、各補助犬の代表として日本盲導犬協会、日本介助犬協会、日本聴導犬推進協会にヒアリング調査を行い、行動管理と衛生管理についての現状と課題を把握した。
(3)受け入れ促進については、第一に、補助犬使用者の施設利用に関して文献を調査した。第二に、既存ガイドライン(医療機関向け)の検証を行った。第三に、保健所(全国471施設)を対象に、補助犬に関する対応事例を調査した。第四に、施設等へのヒアリング/アンケート調査を行った。
(4)需要推計については、第一に、国内の先行研究の調査を行った。第二に、海外の先行研究の調査を行った。第三に、都道府県の補助犬の助成支給要件の調査を行った。第四に、需要推計の計算式の試案とを提案し、推計値を算出した。
結果と考察
(1)法令検証については、第一に、我が国の補助犬法の法的観点からの分析、第二に、台湾及びアメリカの補助犬政策に関して、差別禁止、補助犬の範囲、補助犬の認定、補助犬に対する公的支援の観点から比較研究を行った。第三に、東京都の補助犬給付制度の研究を行った。
(2)衛生管理については、第一に、現行のガイドラインは実態に合わず、役に立たないことが指摘された。第二に、補助犬については狂犬病予防注射の文献以外は見つけることができなかった。病院等を訪問するセラピードッグについての文献は数点みつかった。
(3)受け入れ促進については、第一に、受け入れ拒否を経験した使用者は、補助犬法施行直後・現在ともに多く、法律を説明しても受け入れが認められない「完全拒否」を経験した人は、4割程いた。第二に、既存ガイドラインは、補助犬の受け入れの判断を医療機関に委ねる記載になっていること、また、補助犬を受け入れられない区域・場面についての具体例や補助犬の安全・衛生面の情報が不足していることが明らかとなった。第三に、保健所(全国471施設)から358部の回答が得られ(回収率76.0%)、過去5年間に補助犬使用者から相談を受けた経験のある保健所は20施設(5.6%)であった(うち同伴拒否に関する相談:11施設(30事例))。
(4)需要推計については、第一に、既に補助犬を使用している障害者の状態像としては、盲導犬使用者については、身体障害者手帳1級・2級や全盲やロービジョン、聴導犬使用者については、全ろうや難聴、介助犬使用者については、身体障害者手帳1級・2級や頸髄損傷等が報告されていた。さらに、補助犬の需要推計についての先行研究は数は少なく、試算方法や数値に課題があることが明らかになった。第二に、海外の先行研究では、需要推計についての研究は見当たらなかった。第三に、都道府県の助成支給要件については、都道府県により等級の要件に違いがあることが明らかになった。第四に、需要推計の計算式の試案として、障害種別と年齢、犬の飼育率、一戸建ての割合を要素とする式を提案し、暫定的な推計値を算出した。
結論
(1)法制度検証
指定法人に対する認定については、制度の枠組み自体を変更する必要があることを指摘した。
(2) 衛生管理
現行のガイドラインは、現状とそぐわない点も多くみられることから改定を行なう必要があると考えられる。また事業者用使用者用と分けて作成するのが望ましいと考えられる。
(3)補助犬の受け入れ
ガイドブックでは不安として挙げられた場面を想定した具体的な対応策の例示が求められる。さらに、業界特有の懸念にも配慮した丁寧なガイドブックの作成が求められる。
(4)補助犬の需要推計
計算式の試案を提案し、使用希望者の試算を行った。今後、慎重な検討を行い、より実態に近い推計値を算出することが期待される。

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201918034Z