地域特性に対応した精神保健医療サービスにおける早期相談・介入の方法と実施システム開発についての研究

文献情報

文献番号
201918033A
報告書区分
総括
研究課題名
地域特性に対応した精神保健医療サービスにおける早期相談・介入の方法と実施システム開発についての研究
課題番号
19GC1015
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
根本 隆洋(東邦大学 医学部 精神神経医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 清水 徹男(秋田県精神保健福祉センター)
  • 藤井 千代(国立精神・神経医療研究センター)
  • 田中 邦明(東邦大学 医学部 精神神経医学講座)
  • 辻野 尚久(東邦大学 医学部 精神神経医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
19,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
研究目的は、「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の理念のもとで、わが国で実施可能な精神科早期相談・対応の仕組みを、地域特性を考慮しながら提案し実践することである。地域包括ケアシステムを持続可能(sustainable)なものとするには、早期介入を当初から組み入れる必要があると考えられる。すなわち、精神保健医療的問題の早期段階での対応により、精神疾患の発症予防や軽症化が期待され、また罹患した際においても、早期の社会参加や社会復帰が可能となる。このような、システムにおける「入口と出口」への対応により、システムの運用を機能的にも保健医療福祉財政的にも、より現実的かつ理想的なものとすることができる。
研究方法
地域の特性を踏まえた早期対応・介入方法として、①広域都市圏では保健医療福祉に関する相談やサービス対応が行政区域を越境しうる(ボーダーレス)ことを踏まえた地域ネットワークの構築、特に近年増加する在留外国人に関する検討や実践、および既に構築が進んでいる周産期メンタルヘルスの地域ケアモデルを参照した検討を(京浜地区)、②人口密集地域ではコミュニティの中に対応機関を設置し地域連携の拠点とした検討・実践を(東京都足立区)、③地方過疎地域では遠距離・交通手段の問題などによる、機関同士やそこへの当事者のアプローチの困難に対して、遠隔通信システムを用いた機関連携や技術援助、当事者へのサービス提供の検討・実践を(秋田県)、④郊外住宅地域ではアウトリーチを取り入れ、そこでの公認心理師の役割についての検討を(埼玉県所沢市)、令和元年度に実施した。研究の実施にあたっては倫理規約に則したプライバシーに関する守秘義務を尊重し、匿名性の保持に十分配慮した。
結果と考察
本研究をMEICIS(メイシス、Mental health and Early Intervention in the Community-based Integrated care System)と名付けた。①広域医療圏(ボーダーレス)モデル(京浜地区)では、在留外国人のメンタルヘルスのために、早期に相談できるシステムを構築することが喫緊の課題であり、京浜地区主要3病院精神科における在留外国人の受療行動の特徴について調査した。また、在留日系ブラジル人を対象とした医療相談会や講演会を実施した。加えて、鶴見区の周産期メンタルヘルスの地域ケアモデルに関連した検討も行った。②大都市対面型モデル(足立区)では、地域特性を踏まえ若者を主たる対象に設定し、大都市での相談支援窓口について検討した。令和元年7月、足立区北千住に若年者ワンストップ相談センターSODA(ソーダ、Support with One-stop care on Demand for Adolescents and young adults in Adachi)を設置し、豪州のheadspaceも参考とした支援サービスの提供を開始した。また、遠隔相談システムやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス、Social Networking Service)を用いた相談や介入も始めた。③地方過疎地ICTモデル(秋田県)について、秋田県は深刻な地方過疎問題に直面している。精神保健福祉窓口についても、マンパワーが不足し多様化したニーズへの対応が困難になりつつある。その対応策として、ウェブ相談システムを構築してきた。また、相談業務における具体的ツールとして、ASAT-A(秋田県版アルコール依存症回復支援プログラム、Akita ver. SAT for Alcoholics)を作成した。④都市近郊アウトリーチモデル(所沢市)においては、同市での精神障害者アウトリーチ支援事業と連携し、公認心理師を雇用し相談支援業務において同職に期待される役割やスキルを検討した。
結論
広域医療圏(ボーダーレス)モデルにおいて、在留外国人は異文化での生活に伴う様々なストレスに晒されている一方で、その支援資源の利用率は低いこと、多言語化対応の遅れがみられること、多分野の連携・協働が必要であることが明らかとなった。大都市対面型モデルにおいて、民間医療機関などが公的機関と連携しながら地域包括ケアシステムにおける早期相談・介入の業務を担っていくことが、機能やマンパワーの点から実際的であると考えられた。地方過疎地ICTモデルにおいて遠隔相談システムは、顔を見ながらの双方向性、グループ内での即時性、少ないマンパワーで実施可能、移動の時間・コスト削減、関係職員の知識・技能向上を図りやすい、アウトリーチへの応用性など、cost benefitに優れることが示唆された。都市近郊アウトリーチモデルにおいて、公認心理師を活用して精神保健活動を行う利点が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2020-11-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-17
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201918033Z