就労継続支援B型事業所における精神障害者等に対する支援の実態と効果的な支援プログラム開発に関する研究

文献情報

文献番号
201918024A
報告書区分
総括
研究課題名
就労継続支援B型事業所における精神障害者等に対する支援の実態と効果的な支援プログラム開発に関する研究
課題番号
19GC1006
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
八重田 淳(筑波大学 人間系)
研究分担者(所属機関)
  • 砂見緩子(帝京大学 医療技術学部)
  • 山口創生(国立精神 神経医療研究センター精神保健サービス評価研究室)
  • 小澤 温(筑波大学 人間系)
  • 小澤昭彦(岩手県立大学 社会福祉学部)
  • 若林 功(常磐大学 人間科学部)
  • 山口明日香(藤井明日香)(高松大学 発達科学部)
  • 藤川真由(慶應義塾大学 医学部)
  • 北上守俊(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部)
  • 前原和明(秋田大学 教育文化学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
7,560,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、障害特性等に合わせた適切な支援により、利用者の利用時間・日数の増加、および利用者の工賃向上を実現した実績のある就労継続支援B型事業所(以下、B型事業所とする)における支援内容や工夫等を整理し、効果的な支援プログラムを開発し、その実施マニュアルを作成するものである。
B型事業所は、障害のある者がその適性に応じて能力を十分に発揮し、地域で自立した生活を実現するために重要なサービスであり、利用者に支払う工賃水準の向上に努めることが求められている。平成30年度の報酬改定では、B型事業所における利用者への支払い工賃が高いほど、利用者の自立した日常生活や社会生活に繋がる可能性を鑑み、平均月額工賃による報酬区分が設定された。本報酬改定に対しては、B型事業所からの、①障害特性等により短時間や少ない日数の利用しかできず、その結果月額工賃を高くすることができないとの主張がある一方で、②精神障害者など長期間にわたる社会参加が困難で、かつ当初は短時間や少ない日数の利用者であっても、適切な支援により時間・日数を徐々に増やすことができるとの主張もある。本研究では、上記②のB型事業所の支援手法を分析し、①のB型事業所であっても②の取組を実施できるための方策を提案することにより、結果として平均月額工賃の向上に資するものとする。B型事業所における工賃向上のためには様々な営業努力や工夫が必要であり、厚生労働省では工賃向上計画支援等事業による経営力育成支援や品質向上支援の実施に加え、各種調査研究事業による高工賃を実現している好事例の収集と周知などの取組がなされてきた。しかし、障害特性等に合わせた適切な支援を行うことにより利用時間や通所日数が増え、それが工賃向上にも繋がることに焦点をあてた調査研究は行われていない。
そこで本研究は、全国のB型事業所を対象に精神障害のある利用者の利用時間、通所日数、工賃等の実態、そしてB型事業所における精神障害のある利用者の工賃向上のために取り組まれている工夫並びに実践の現状と課題を把握し、効果的な支援プログラムの開発とプログラム実施マニュアルを作成し、様々な地域におけるB型事業所での活用可能性を探ることを目的とした。
研究方法
(1)質的調査
東京、神奈川、埼玉、鳥取、福島、大阪のB型事業所6箇所に対し面接内容妥当性のためのヒアリングを実施した後、都心型の面接調査対象として都内5箇所、地方型の面接調査対象として8箇所(茨城1、愛媛1、香川1、熊本1、新潟2、秋田2)の計13箇所におけるB型事業所に対する面接調査を実施した。また、全国のB型事業所を階層的ランダムサンプリングによって4000箇所抽出し、郵送調査を実施した。
結果と考察
質的調査の結果、精神障害者への効果的な支援内容としては、「利用者が社会の役に立っていると認識できる作業の提供」「利用者が社会参加できる仕組みづくり」「利用者への精神的ケア等の即時介入」「福利厚生やレクレーションの提供」「定期的な動機付け面接による支援」「グループ就労の実施」「休憩場所の確保」「音楽療法」「スポーツ療法」「認知行動療法」等が挙げられた。
量的調査の結果、1442件の回答を得た(回収率36.1%)。データ分析の視点として、①就労継続B型事業所における平均工賃月額に関連する要因(変数)を探索的に検証すること、②事業所職員からみた精神障害のある利用者に対する支援の在り方などに関する質問項目について分析した結果、平均工賃月額の高低に関連する変数は、「精神障害のある登録利用者数」「精神障害のある利用者のうち、過去3ヶ月の利用で最も少なかった月当たりの利用日数」「年間事業運営費」「就労継続A型事業所や就労移行支援事業所、一般雇用につながったケースの有無」であることがわかった。なお、「現在の平均工賃月額に応じた報酬制度が事業所の運営に合致している」と考えている対象事業所は約40%であった。
結論
効果的な支援の背景に、利用者との信頼関係の構築を基盤にして、利用者の作業内容・量への認識の把握や利用者の病状・服薬状況・生活習慣の把握をもとにした個別支援計画の作成や見直し等の要因が関連していることについての示唆を得ることができた。精神障害のある利用者に対する支援についての回答から、就労継続B型事業所の目的や求められる役割の多様性が観察された。なお、本研究の結果は、いくつかの限界を抱えており、調査結果の解釈には留意が必要である。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201918024Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
9,828,000円
(2)補助金確定額
8,994,854円
差引額 [(1)-(2)]
833,146円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 2,632,347円
人件費・謝金 218,628円
旅費 1,787,890円
その他 2,087,989円
間接経費 2,268,000円
合計 8,994,854円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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