文献情報
文献番号
201918019A
報告書区分
総括
研究課題名
吃音、トゥレット、場面緘黙の実態把握と支援のための調査研究
課題番号
19GC1001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
中村 和彦(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
研究分担者(所属機関)
- 稲垣 真澄(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所知的・発達障害研究部)
- 金生 由紀子(東京大学医学部附属病院こころの発達医学分野)
- 菊池 良和(九州大学病院 耳鼻咽喉科 助教)
- 原 由紀(北里大学医療衛生学部リハビリテーション学科言語聴覚療法学専攻)
- 斉藤 まなぶ(弘前大学大学院医学研究科 神経精神医学講座)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和2(2020)年度
研究費
3,846,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
成人期まで症状が残存する吃音症やトゥレット症候群、及び法の定義に含まれながら理解や対策が進んでいない場面緘黙症などは、早期発見や成人期に至るまでの支援は未だ不十分である。本研究においては、幼児期から成人期まで、吃音、トゥレット、場面緘黙をひとつの発達障害群ととらえて研究を行う。以下の2点を2年間の目標とする。
(1)吃音、トゥレット症、場面緘黙を幼児期早期から青年期までの各年代調査を通じて、重症度指標と生活困難指標を明確化する。
(2)サービス提供者が利用できる問診用紙の開発やサービス利用者が発話なしでニーズを伝えられるコミュニケーション・ツールを開発する。
(1)吃音、トゥレット症、場面緘黙を幼児期早期から青年期までの各年代調査を通じて、重症度指標と生活困難指標を明確化する。
(2)サービス提供者が利用できる問診用紙の開発やサービス利用者が発話なしでニーズを伝えられるコミュニケーション・ツールを開発する。
研究方法
<全体計画>
計画1:吃音、トゥレット症、場面緘黙を幼児期早期から青年期までの各年代調査を通じて、重症度指標と生活困難指標を明確化する。
計画2:サービス提供者が手軽に付けられる問診用紙の作成やサービス利用者の音声不要コミュニケーション・ツール開発(タブレット型)を目指す。
計画3:支援機関で対応するための支援マニュアルを作成し、適切な対応の統一を図っていく。
<平成31年度>
マイルストーン1:幼児期早期から青年期の各年代調査を通じて、各障害の重症度指標と生活困難指標を明確化する。
マイルストーン2:当事者や家族への調査をもとに、当事者と相談者が困りごとを共有できる有効な質問項目を選定する。
マイルストーン3:乳幼児健診で言語に関わる障害を早期発見するための質問項目を選定する。
<令和2年度>
マイルストーン1:サービス提供者が利用できる問診用紙の開発やサービス利用者が発話なしでニーズを伝えられるコミュニケーション・ツールを開発する。
マイルストーン2:作成したアセスメントツールの妥当性、信頼性を検証する。
マイルストーン3:支援機関で対応するための支援マニュアルを作成し、適切な対応の統一を図っていく。
計画1:吃音、トゥレット症、場面緘黙を幼児期早期から青年期までの各年代調査を通じて、重症度指標と生活困難指標を明確化する。
計画2:サービス提供者が手軽に付けられる問診用紙の作成やサービス利用者の音声不要コミュニケーション・ツール開発(タブレット型)を目指す。
計画3:支援機関で対応するための支援マニュアルを作成し、適切な対応の統一を図っていく。
<平成31年度>
マイルストーン1:幼児期早期から青年期の各年代調査を通じて、各障害の重症度指標と生活困難指標を明確化する。
マイルストーン2:当事者や家族への調査をもとに、当事者と相談者が困りごとを共有できる有効な質問項目を選定する。
マイルストーン3:乳幼児健診で言語に関わる障害を早期発見するための質問項目を選定する。
<令和2年度>
マイルストーン1:サービス提供者が利用できる問診用紙の開発やサービス利用者が発話なしでニーズを伝えられるコミュニケーション・ツールを開発する。
マイルストーン2:作成したアセスメントツールの妥当性、信頼性を検証する。
マイルストーン3:支援機関で対応するための支援マニュアルを作成し、適切な対応の統一を図っていく。
結果と考察
(1) 吃音症:質問紙の配布を行い、返送があったものから順次データの集計手続きを進め、解析準備を進めている。令和2年度に生活困難指標の明確化に反映させ、コミュニケーション・ツール開発及び支援マニュアル作成を行う。
(2)トゥレット症:現在までに、質問紙調査及び同意を得られた方のみ半構造化面接による調査を実施した。データ入力を依頼し、解析の準備を進めている。令和2年度には解析した結果から、実態を明らかにするとともに、個別的なニーズを把握するための簡便な調査票を作成し、その妥当性を検証した上で、支援マニュアルを作成する。
(3)場面緘黙:先行研究を参考に、生活の困難さを評価するための質問紙を作成し、質問紙を発送した。研究協力者が不足する可能性を考慮し、各研究分担者を窓口として研究協力者の募集も進める。令和2年度も引き続き、データ収集を進め、解析した結果から得られた知見をもとに新たなチェックリストを作成する。そして、チェックリストについては当事者団体へのヒアリングを行い、妥当性を検証し、支援マニュアルを作成する。
(4)乳幼児調査:TASPにおいては、510名を解析の対象とし、113名(22.2%)が境界水準以上に当たり、ASD,ADHD,LD,DCD,IDなどの発達障害の一次スクリーニングとして有用である結果が得られた一方、吃音やチックのスクリーニング尺度として有用でないことがわかった。また、推定有病率に関しては、吃音は1%以下、チックは5%前後であった。さらに、吃音やチックのみでは育児ストレスにはつながりにくく、受診や相談のきっかけとなりにくいことが推測され、独自のスクリーニングツールを選定する必要があることがわかった。
(2)トゥレット症:現在までに、質問紙調査及び同意を得られた方のみ半構造化面接による調査を実施した。データ入力を依頼し、解析の準備を進めている。令和2年度には解析した結果から、実態を明らかにするとともに、個別的なニーズを把握するための簡便な調査票を作成し、その妥当性を検証した上で、支援マニュアルを作成する。
(3)場面緘黙:先行研究を参考に、生活の困難さを評価するための質問紙を作成し、質問紙を発送した。研究協力者が不足する可能性を考慮し、各研究分担者を窓口として研究協力者の募集も進める。令和2年度も引き続き、データ収集を進め、解析した結果から得られた知見をもとに新たなチェックリストを作成する。そして、チェックリストについては当事者団体へのヒアリングを行い、妥当性を検証し、支援マニュアルを作成する。
(4)乳幼児調査:TASPにおいては、510名を解析の対象とし、113名(22.2%)が境界水準以上に当たり、ASD,ADHD,LD,DCD,IDなどの発達障害の一次スクリーニングとして有用である結果が得られた一方、吃音やチックのスクリーニング尺度として有用でないことがわかった。また、推定有病率に関しては、吃音は1%以下、チックは5%前後であった。さらに、吃音やチックのみでは育児ストレスにはつながりにくく、受診や相談のきっかけとなりにくいことが推測され、独自のスクリーニングツールを選定する必要があることがわかった。
結論
現在までの調査において、吃音症及びチック症の推定有病率(それぞれ1%以下、5%前後)が明らかになり、吃音症やチック症はASDをはじめとした他の発達障害との併存症が少なく、既存のスクリーニングツールのみでは、早期発見が難しいことがわかった。そのため、早期発見のためには独自のスクリーニングツールの作成が必要になる。吃音、トゥレット症、緘黙症の当事者及び保護者の調査が進行中であり、各200名前後のデータに基づいて幅広い年齢について、困難を明らかにしてそれに対する支援の示唆が得られると考えられる。また乳幼児における早期発見に貢献できると考える。令和2年度には、得られたデータから解析を進め詳細な実態を明らかにするとともに、生活困難指標を明確化し、スクリーニングツールの妥当性を検証した上で、支援マニュアル及び支援ツール開発を行う。
公開日・更新日
公開日
2020-11-16
更新日
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