高次脳機能障害の障害特性に応じた支援マニュアルの開発のための研究

文献情報

文献番号
201918015A
報告書区分
総括
研究課題名
高次脳機能障害の障害特性に応じた支援マニュアルの開発のための研究
課題番号
H30-精神-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 粉川 貴司(東京都心身障害福祉センター)
  • 浦上 裕子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 上田 敬太(京都大学 医学研究科精神医学)
  • 青木 美和子(札幌国際大学 人文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
4,540,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害の支援体制については、支援普及事業開始から10年以上経過し、全都道府県に支援拠点機関が設置され制度上の整備は進んだ。しかし障害福祉制度の運用面では、同障害の特性に十分対応しているとは言えない。各種障害福祉サービス別に実態調査及び分析を行い、障害福祉サービス事業者向けの支援マニュアルを作成することにより、実態を踏まえた対応法を提示することがこの研究の目的である。
研究方法
1)当事者調査(今橋):日本高次脳機能障害友の会に、障害福祉サービスの利用実態および支援課題を質問紙調査した。2)相談支援事業所の調査(粉川・今橋):滋賀県全15市町村内の全ての指定特定相談支援事業所及び指定障害児相談支援事業所計111事業所に、高次脳機能障害者の利用実態および課題について質問紙調査した。3)就労系福祉サービス事業所の調査(青木):札幌市内の全ての就労移行支援事業所(79か所)および就労継続支援A型事業所(106か所)を対象に高次脳機能障害者の利用実態、課題について質問紙調査した。4)生活訓練、入所系支援および生活介護等に関する調査(上田);介護事業者担当セミナーの参加者252名を対象に高次脳機能障害に対する知識について質問紙調査した。5)高齢高次脳機能障害者に関する調査(浦上);国立障害者リハビリテーションセンター病院で入院リハビリテーションを行って自宅退院した高次脳機能障害患者(発症時40~70歳、調査時点で発症から1年以上経過)364名に質問紙調査した。
結果と考察
1)当事者家族会の調査:所属する家族会7団体から調査票を回収。高次脳機能障害者・児について、福祉サービスの利用困難事例は41件、内訳は、移動支援、介護保険サービスとの併用が各7件、就労移行支援、共同生活援助、就労継続支援B型が各4件、自立訓練、障害者手帳が各3件、就労継続支援A型、施設入所支援が各2件、その他5件。困難の原因は「事業所の障害特性への理解不足」「社会資源の不足」「制度の周知不足、ニーズと支援の不一致」に大別された。今後の要望事項として、移動支援・グループホーム・就労定着支援の拡充、市町村格差の是正など17件挙がった。2)相談支援事業所の調査: 42事業所から回答(回収率37.8%)。H30年度に相談支援を提供した高次脳機能障害者は診断あり52名、未診断20名で計72名。高次脳機能障害者の利用無しが半数の20か所、1~10人が18か所、11~20人が2か所。利用したサービスは就労系サービス31件、訪問系サービス28件など。高次脳機能障害児・者に相談支援を提供した20事業所のうち、15事業所が対応に困難を感じた、と回答、困難の内容は「本人、家族への対応」、「制度、社会資源の利用」、「関係機関との連携」。「県の高次脳機能障害支援拠点機関に相談し助言を受けている」「相談者の特性に応じて面談時間や面談方法を考慮」などの対応を行っている。3)就労系福祉サービス事業所の調査:就労移行支援事業所33か所、就労継続支援A型事業所51か所、計84か所から回答(回収率45.4%)。高次脳機能障害の利用者がいる事業所はA型8か所(11名)、移行支援6か所(14名)。利用者のいる割合はどちらも16%であるが、今後の受け入れの可能性はA型74%、移行70%があると回答。受け入れは「高次脳機能障害の知識・情報の取得」が最多条件。4)生活訓練、入所系支援および生活介護等に関する調査:参加者237名より回収(回収率94%)。セミナー受講動機としては「関心のあるテーマ(高次脳機能障害)だから」が57%で最多、第2号被保険者に対して社会復帰支援が必要と感じているという回答が63%。今後の要望として「高次脳機能障害の理解に役立つ講座や研修機会が欲しい」「ワークグループなどの研修機会」など。5)高齢高次脳機能障害者に関する調査: 100名から回答(回収率27.5%)。昨年度面接した50名と合わせ150名(男115、女35名;50~83歳)を分析。障害者手帳所持109名。介護保険認定58名中同サービス利用50名。一般就労20名。障害福祉サービス利用は30名で、訓練系・就労系サービス19名ほか。
結論
今回の調査分析の中で、高次脳機能障害者支援を行ったことのない事業所が多くある一方で、適切な研修機会等があれば今後受け入れ可能とする事業所が7割を超すことから、支援経験が無い/乏しい従事者対象に知識普及することが、社会資源の拡充に寄与することが示唆された。よって2年間の研究成果をもとに、先進的実践のヒアリングも含め、支援のポイント、具体的事例等を盛り込んで支援初心者対象にマニュアルを作成した。今後同マニュアルを支援拠点機関に提供し研修会等に活用するとともに、さらに専門的知識も含む支援マニュアル(応用編)の開発も必要であると考える。

公開日・更新日

公開日
2020-11-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-12-07
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201918015B
報告書区分
総合
研究課題名
高次脳機能障害の障害特性に応じた支援マニュアルの開発のための研究
課題番号
H30-精神-一般-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
深津 玲子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 粉川 貴司(東京都心身障害福祉センター)
  • 浦上 裕子(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 今橋 久美子(藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 上田 敬太(京都大学 医学研究科精神医学)
  • 青木 美和子(札幌国際大学 人文学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高次脳機能障害者が各種障害福祉サービス利用時における対応について、実態調査及び分析を行い、事業者向けの支援マニュアルを作成し、適切な支援につなげることがこの研究の目的である。
研究方法
1)全国の高次脳機能障害支援拠点機関および当事者家族会の調査(今橋):高次脳機能障害支援拠点機関(103か所)、日本高次脳機能障害友の会に、障害福祉サービス利用困難事例、今後要望するサービスについて質問紙調査。2)相談支援事業所の調査(平山、粉川、今橋):東京都、滋賀県で全指定特定相談支援事業所、指定障害児相談支援事業所を対象に質問紙調査。3)就労系サービス事業所の調査(青木):札幌市内の全ての就労移行支援事業所(79か所)、就労継続支援A型事業所(106か所)、就労継続B型事業所(337カ所)に高次脳機能障害者の利用実態と課題について質問紙調査。4)生活訓練、入所系支援および生活介護等に関する調査(上田);生活訓練、入所系支援、生活介護の機能を持つ京都市地域リハビリテーション推進センターにおける高次脳機能障害新規相談248件の分析および介護事業担当者対象に開催した高次脳機能障害啓発セミナー出席者に質問紙調査を実施。5)高齢高次脳機能障害者に関する調査(浦上);国立障害者リハビリテーションセンター病院で入院リハビリテーション後自宅退院した高次脳機能障害患者(発症時40~70歳、発症から1年以上経過)に質問紙、聞き取り調査。
結果と考察
1)障害福祉サービスの利用困難事例は208件(拠点機関167、家族会41)あり、理由は「事業所の障害特性への理解不足」「社会資源の不足」「制度の周知不足、ニーズと支援の不一致」に大別された。今後要望するサービスは93件(拠点機関76、家族会17)で、リハビリテーションを受けられる社会資源の拡充、移動支援、在宅サービスの拡充、訓練等給付サービスの拡充、介護保険優先である第2号被保険者に対する就労支援など。2)東京都267か所(回収率33.3%)滋賀県42か所(回収率37.8%)から回答。1事業所当たりの平均高次脳機能障害者数は東京都4.6名、滋賀県1.8人。両都県とも利用者無の事業所割合は50%で、東京都では利用者51名以上の事業所がある一方、滋賀県では1~20名。両都県とも就労系サービスが最多、ついで訪問系サービス。利用につながらない事例が東京都139名、滋賀県3名あり、理由は「本人、家族の利用意向の変化」「ニーズとサービスがあわない」「事業所職員、他利用者との関係性」「高次脳機能障害に起因する行動への対応困難」等。高次脳機能障害への対応に困難を感じた事業所は東京都50.2%、滋賀県75%、内容は「本人、家族への対応」「制度、社会資源の利用」「関係機関との連携」。課題として「利用できる事業所の少なさや地域間格差」「事業所等への普及啓発の促進」「相談支援事業所対象の研修」など。3)就労移行支援事業所33か所、就労継続支援A型事業所51か所、就労継続B型事業所141か所から回答。高次脳機能障害利用者がいる事業所はそれぞれ6(18.2%)、8(15.7%)、51(36.2%)。70%、74%、61%の事業所が今後高次脳機能障害者を受け入れる可能性があると回答、条件として「高次脳機能障害の知識・情報の取得」が最多。作業時に見られる困難は、注意障害、社会的行動障害に関することが多い。4)新規相談者のうち介護保険対象者133件。入所施設利用時の問題点は重度身体障害事例への対応、施錠など記憶障害事例への対応など。介護事業担当者の質問紙調査では、2号被保険者に対して社会復帰支援が必要という回答が多く、高次脳機能障害の理解に役立つ研修機会が必要という回答が20%以上あった。5)150名(男115、女35名;50~83歳;65歳以上78名)を分析。障害者手帳所持109名。介護保険認定58名うち同サービス利用中50名。一般就労中20名。障害福祉サービス利用中は30名で、訓練系・就労系サービス19名、訪問系サービス7名、日中活動系サービス4名。介護保険第2号被保険者37名のうち障害福祉サービス利用中は9名、就労系サービス8名、その他1名。
結論
今回の調査分析の中で、高次脳機能障害者支援を行ったことのない事業所が多くある一方で、適切な研修機会等があれば今後受け入れ可能とする事業所が7割を超すことから、支援経験が無い/乏しい従事者対象に知識普及することが、社会資源の拡充に寄与することが示唆された。よって2年間の研究成果をもとに、先進的実践のヒアリングも含め、支援のポイント、具体的事例等を盛り込んで支援初心者対象にマニュアルを作成した。今後同マニュアルを支援拠点機関に提供し研修会等に活用するとともに、さらに専門的知識も含む支援マニュアル(応用編)の開発も必要であると考える。

公開日・更新日

公開日
2020-11-25
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2023-06-06
更新日
2023-07-13

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201918015C

収支報告書

文献番号
201918015Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
3,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 61,999円
人件費・謝金 2,169,600円
旅費 633,650円
その他 134,751円
間接経費 0円
合計 3,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
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