障害認定基準および障害福祉データの今後のあり方に関する研究

文献情報

文献番号
201918013A
報告書区分
総括
研究課題名
障害認定基準および障害福祉データの今後のあり方に関する研究
課題番号
H29-身体・知的-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 岩谷力(長野保健医療大学)
  • 江藤 文夫(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 伊藤 利之(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学)
  • 上村 鋼平(東京大学大学院・情報学環 )
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学)
  • 川村 智行(大阪市立大学大学院)
  • 三村 將(慶應義塾大学)
  • 北住 映二(心身障害児総合医療療育センター・むらさき愛育園)
  • 有賀 道生(横浜市東部地域療育センター)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
  • 西牧 謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター 病院)
  • 北村 弥生(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 今橋 久美子 (藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
  • 清野 絵(国立障害者リハビリテーションセンター 研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
13,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、最新の医学的知見と各種要望等を踏まえた身体障害者認定基準の見直しの具体案を提言するとともに、障害福祉データの利活用を推進することを目的とし、「認定分科会」と「データ分科会」から構成される。令和元年度においては、「認定分科会」の4分担研究の目的は、①原発性免疫不全症候群(以下、PID)、②1型糖尿病、③失語症について、生活機能制限と医学的指標の関係を明らかにすること。及び、④脊髄損傷以外の中枢神経内因性膀胱患者による排泄障害の把握であった。「データ分科会」の4分担研究の目的は、①「平成23年生活のしづらさなどに関する調査」(以下、23年調査)の自由記述結果の解析、②都道府県における障害者手帳所持者台帳登載数の管理方法の現況解明、③国民健康保険連合会の総合支援法サービス支給データ(以下、国保連データ)の解析、④障害に関する指標におけるICFの活用状況の解明であった。
研究方法
「認定分科会」
① PIDについては、平成30年度に実施した調査票を微修正し、調査実施機関を選定した。
② 1型糖尿病については、2大学病院において成人患者を対象として質問紙法による調査を実施した。
③ 該当患者を1大学病院(泌尿器科)の外来受診者25,000名(10ヶ月間)から探索した。
④ 肢体不自由をほとんど伴わない成人期(20歳から85歳まで)の失語症者の生活機能制限・福祉ニーズ・福祉サービス利用の実態を明らかにするために質問紙法による調査を設計した。
「データ分科会」
① 平成13年身体障害児・者実態調査および平成2年精神薄弱児(者)福祉対策基礎調査と23年調査の間で、自由記述の結果を比較した。
② 都道府県を対象に予備調査を実施した。
③ 3モデル市町村が所管する国保連データから得られる障害に関わる情報を探索した。また1モデル市については経年変化も明らかにした。
④ 28年調査の質問項目および主な障害統計の指標についてICFの体系によるマッピングを行った。
結果と考察
「認定分科会」
① PIDについては、5機関で調査する準備を整えた。
② 1型糖尿病については、190名から回答を得て(回収率85%)、生活機能制限があると医師により判断されたのは3名であったが、合併症または他の疾患が原因であったことを明らかにした。一方、対象者の6割は病気による経済的損失を回答し、「医療費負担の軽減」という患者団体からの要望と一致すると考えられた。
③ 該当患者は3名であった。
④ 令和2年に調査を実施する8機関のうち1機関で研究倫理審査委員会の承諾を得た。
「データ分科会」
① 23年調査と先行調査の比較では、
a) 領域別自由記述の記入率は、3調査の中で13年調査が最も高かった。
b) 先行調査ではサービス事業についての要望を聞いたが、23年調査では「生活で困ったこと」の記入を求めたことにより、対策が定型化されていない困難が、特に障害者手帳非所持者で多く記載された。
c) 23年調査問31の記入を分類した結果、「将来」「生活での困難」への記入が多く、「重複障害」「進行」「調査方法」が注目された。
② 都道府県への事前調査では、データ管理に3パターンあると推測された。
③ 国保連データから年齢階級別・障害種別・障害支援区分別にサービスごとの支給決定人数・時間数・費用額を算出した。
④ 28年調査では、活動・参加・環境因子に分類された項目が多いことを示した。

結論
「認定分科会」
① 平成30年度に実施した調査における対象者の偏りを是正し、より妥当な基準案を考案するために。令和2年度に5機関で調査を実施する予定である。
② 1型糖尿病は、身体障害者福祉法の障害には当たらないと考えられた。
③ 脊髄損傷以外の中枢神経内因性疾患者で障害認定基準に該当する排泄機能障害を生じる者はごく少数であると推測された。
④ 障害認定基準の見直しに資するために、肢体不自由を伴わないか軽度の肢体不自由を伴う成人失語症患者(20~85歳)を対象とし、8機関から100名の回答を得る見込みである。

「データ分科会」
① 令和3年に実施予定の「生活のしづらさなどに関する調査」の自由記述の設問案と集計案を作成した。
② 都道府県における障害者手帳台帳の管理方法について次年度に調査により解明することとした。
③ 既存の行政データがサービス等利用計画の作成や評価といった個人レベルでの活用のほか、時系列変化、自治体間の比較、需給予測に基づいた計画立案といった集団レベルでの活用も可能になることを示唆した。
④ 「生活のしづらさなどに関する調査」の特徴は、ICF項目のうち「活動と参加」と「環境因子」による概念との親和性が高いことが示された。

公開日・更新日

公開日
2020-10-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-10-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201918013B
報告書区分
総合
研究課題名
障害認定基準および障害福祉データの今後のあり方に関する研究
課題番号
H29-身体・知的-指定-001
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
飛松 好子(国立障害者リハビリテーションセンター)
研究分担者(所属機関)
  • 岩谷 力(長野保健医療大学)
  • 江藤 文夫(国立障害者リハビリテーションセンター)
  • 伊藤 利之(横浜市総合リハビリテーションセンター)
  • 野々山 恵章(防衛医科大学校小児科講座)
  • 北住 映二(心身障害児総合医療療育センター・むらさき愛育園)
  • 有賀 道生(横浜市東部地域療育センター)
  • 上村 鋼平(東京大学大学院・情報学環)
  • 西牧 謙吾(国立障害者リハビリテーションセンター病院)
  • 北村 弥生(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
  • 今橋 久美子 (藤田 久美子)(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
  • 森尾 友宏(東京医科歯科大学・大学院医歯学総合研究科)
  • 西村 理明(東京慈恵会医科大学・糖尿病・代謝・内分泌内科)
  • 川村 智行(大阪市立大学大学院・発達小児医学分野)
  • 高橋 秀人(国立保健医療科学院)
  • 清野  絵(国立障害者リハビリテーションセンター研究所)
  • 三村 將(慶應義塾大学・医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成29(2017)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は、最新の医学的知見と各種要望等を踏まえた身体障害者認定基準の見直しの具体案を提言するとともに、障害福祉データの利活用を推進することを目的とし、「認定分科会」と「データ分科会」から構成される。「認定分科会」の4つの分担研究の目的は、①原発性免疫不全症候群(以下、PID)、②1型糖尿病、③失語症について、生活機能制限と医学的指標の関係を明らかにすること、及び④排泄障害の対象疾患の確認であった。「データ分科会」では、障害者数に関する2研究、障害行政データの活用に関する1研究、「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」(以下、23年調査、28年調査)に関する4研究の合計7つの分担研究を行った。
研究方法
大学病院による患者調査および既存データの分析を行った。
結果と考察
「認定分科会」
①PIDについては、平成30年度の調査では、設定した医学的指標では生活機能制限の程度を4割しか説明できなかった。また、対象者の年齢、生活機能制限の程度、疾患に偏りがあった。令和2年度の追加調査で結果の改善を目指す。
②1型糖尿病については、190名から回答を得て(回収率85%)、生活機能制限があると医師が判断した3名は合併症または他の疾患が原因であったことを明らかにした。一方、対象者の6割は病気による経済的損失を回答し、「医療費負担の軽減」という患者団体からの要望と一致すると考えられた。
③障害認定を受けていないが排泄機能障害をもつ疾患として、子宮がん等の婦人科領域の患者数を推計し、脊髄損傷者の困難を示した。また、それ以外の中枢神経内因性膀胱患者数は極めて少ないことを明らかにした。
④令和2年に調査を実施する8機関のうち1機関で研究倫理審査委員会の承諾を得た。
「データ分科会」
①障害者数の推計値と障害者手帳交付台帳登載者数について、視覚障害・聴覚障害の変化は近年少なかったが、肢体不自由・内部障害は過去10年間に約10%の増加があり、療育手帳所持者・精神保健福祉手帳交付数は2.3倍に増加したことを示した。
②市町村調査結果(回収率83%)では、96%の市区町村では障害者手帳台帳登載者について住民票の動態情報(死亡、転居)を反映していることを示した。都道府県への事前調査では、データ管理に3パターンあると推測された。
③国保連データから年齢階級別・障害種別・障害支援区分別にサービスごとの支給決定人数・時間数・費用額および経年変化を示した。
④23年調査と先行調査の比較では、領域別自由記述の記入率は、3調査の中で13年調査が最も高かった。
⑤平成28年調査は平成23年調査結果と比較して、調査票の配布率・回収率が低下したことを示した。
⑥23年調査から調査票を改変した10点のうち7点では意図通りの改善結果を得たが、支出に関する回答率の向上、高齢療育手帳所持者に関する疑義、将来に関する自由記述の分別は解決しなかったことを明らかにした。
⑦28年調査では、活動・参加・環境因子に分類された項目が多いことを示した。
 さらに、障害施策の国際動向調査として、韓国における障害等級廃止(6等級から2等級への変更とサービス支援総合調査の策定)、国連障害者権利条約締結国会議及び国連障害者権利条約委員会での障害統計に関する議論について調査し、背景と現状を明らかにした。
結論
「認定分科会」
①PIDについては、平成30年度の調査では生活機能制限と医学的指標の安定した関係は示されなかったため、令和2年度に5機関で修正した調査を実施する予定である。
②1型糖尿病は、身体障害者福祉法の障害には当たらないと考えられた。
③障害認定を受けていないが排泄機能障害をもつ疾患として、子宮がんを中心とした婦人科領域の患者数を推計し、脊髄損傷者の困難を示した。また、脊髄損傷以外の中枢神経内因性膀胱患者数は極めて少ないことを明らかにした。
④失語症については調査を設計し、令和2年度に8機関から100名の回答を得る見込みである。
「データ分科会」
①障害の種類による詳細統計の必要性が示唆された。
②障害者台帳登載数と動態情報の突合により正確な障害者手帳所持者数を把握する可能性を示唆した。
③国保連データを例として、既存の行政データから障害者のサービス受給状況を明らかにできることを示唆した。
④生活のしづらさなどに関する調査では、調査票の配布と回収に課題があることを示した。
⑤調査票における残された課題の他、ワシントングループ会議による設問の選択肢を原型の4段階に戻すことと、障害の原因疾患に関する設問の選択肢の改定などの課題が残っていることを指摘した。
⑥令和3年に実施予定の「生活のしづらさなどに関する調査」の自由記述の設問案と集計案を作成した。
⑦障害指標についてICF体系での比較方法を示した。

公開日・更新日

公開日
2020-10-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-10-12
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201918013C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究は、PID,1型糖尿病、失語症における生活機能制限の調査は前例が少なく、患者のみならず、担当医師による医学情報との対応ができる点で専門的・学術的意義が高い。それぞれの分野の学術誌に発表予定である。
臨床的観点からの成果
本研究は、障害認定の基準に反映できるか否かという制度への発展を見据えた研究である。今期においては、障害認定基準に反映すべ結果は得られなかった。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
平成23年、28年「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児者等実態調査)」の結果分析から、令和3年に予定されている同調査への提言がなされた。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
1件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
2件
過去の「生活のしづらさなどに関する調査」の自由記述を分析し、多いものについては選択肢とすることを次期調査に提言した。

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
井上美紀、飛松好子
脊髄損傷者の排便障害が生活に及ぼす影響
日本脊髄障害医学会雑誌 , 32 (1) , 80-82  (2019)

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201918013Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
5,000,000円
(2)補助金確定額
5,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 278,157円
人件費・謝金 950,270円
旅費 745,311円
その他 3,026,262円
間接経費 0円
合計 5,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-