障がい者が快適な日常生活を営むための食事提供等の実態把握及び改善手法の検証等のための研究

文献情報

文献番号
201918012A
報告書区分
総括
研究課題名
障がい者が快適な日常生活を営むための食事提供等の実態把握及び改善手法の検証等のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-011
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
中村 丁次(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大和田 浩子(山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部)
  • 藤谷 朝実(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 笹田 哲(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 田村 文誉(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 行實 志都子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 杉山 みち子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 高田 健人(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 飯田 綾香(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
2,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者及び障害児(障害児者)が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現をめざすためには、一人ひとりの健康・栄養状態の維持・改善や食生活の質の向上を図る必要がある。平成25年度障害者総合支援法の再編により、障害者の地域支援体制が強化され、通所事業所は重要な支援拠点となったが、通所事業所に栄養ケア・マネジメント(NCM)は導入されていない。
本研究は、通所事業所利用障害児者の身体状況、栄養状態、食事時の徴候・症状に対応した個別の栄養ケア計画に基づく食事提供や食事支援の体制やあり方等に資することを目的とした。
研究方法
訪問インタビュー調査:障害児者の通所事業所(5か所)の管理者及びスタッフを対象にインタビュー調査を実施し、実態調査にあたり課題としてとりあげるべき内容を検討した(神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査会承認番号:保大第71-55)。
事業所調査:障害児者の通所事業所(生活介護及び児童発達支援)における栄養障害(低栄養及び過剰栄養)や摂食嚥下障害の発生状況、事業所としてのその対応の実態、多職種による在宅で食べることの支援の状況を調査・検討した(保大第71-64)。
利用者個別調査:通所事業所利用障害児者における低栄養、過剰栄養、摂食嚥下障害の発生頻度と食事状況の実態、低栄養あるいは過剰栄養による入院発生や個別の自立支援目標の達成との関連、ならびに管理栄養士等の関わりや多職種によるミールラウンド等の関連について調査・検討した(保大第71-81)。
実施可能性調査:多職種により作成された通所事業所利用障害児者のための栄養アセスメント・モニタリングシート(AMS)試案の項目からデルファイ法を用いてコンセンサスを得た項目を選定し、チ-ムでのNCMへの活用について検討した(保大第17-67)。
結果と考察
訪問インタビュー調査:障害児者の通所事業所では、利用者一人ひとりの個別性が高く、食事・栄養に関する課題が多数存在していること、人員が限られていることもあり、多職種協働による障害児者の課題への対応の重要性が明らかとなった。
事業所調査:障害児者の通所事業所において、やせ及び肥満の栄養障害や摂食嚥下問題等がある利用者が一定の割合でいること、管理栄養士等と関わりがない事業所が多数あること、ミールラウンドを実施している場合でも管理栄養士の参加は非常に少ないことが明らかになった。
利用者個別調査:生活介護における「やせ」では摂食嚥下障害、「肥満」では生活習慣病の重度化が懸念された。児童発達支援においては、食事摂取量を含めた食べこぼし、偏食、丸呑み、年齢相応の摂食機能を獲得していない等の食事にかかわる課題が多く認められた。
実施可能性調査:AMS試案の項目からデルファイ法を用いてコンセンサスを得た項目を選定した。栄養専門職のASMでは5大項目35小項目、栄養以外専門職のASMでは6大項目小36項目(うち児のみ9小項目)が選定された。一方、これらの実施率は項目間で差が認められた。
障害者通所事業所(生活介護及び児童発達支援)において、やせ及び肥満の栄養障害の2重負荷が存在することが明らかになった。さらに、摂食嚥下問題がある利用者が一定の割合で存在していた。
生活介護における「やせ」では摂食嚥下障害、「肥満」では生活習慣病の重度化が懸念された。児童発達支援においては、食事摂取量を含めた食べこぼし、偏食、丸呑み、年齢相応の摂食機能を獲得していない等の食事にかかわる課題が多く認められた。
これらの課題に対応するには、管理栄養士等の役割は大きい。しかし、管理栄養士等と関わりがない事業所があること、関わりを望む事業所が少ないこと、管理栄養士等の雇用のある場合でも栄養状態を考慮した食事提供の課題が危惧された。
今後、通所事業所関係者へ管理栄養士の役割を啓発し、その重要性の意識を高める必要がある。さらに、通所事業所利用障害児者の栄養障害及び摂食・嚥下障害に対し、管理栄養士が積極的にミールラウンド等に参加できるNCMの導入を検討する必要がある。
また、本研究において、通所事業所利用障害児者の支援に関わる多職種によるコンセンサスを得て作成されたAMSは、今後の在宅障害児者の栄養障害に関わる問題把握に活用され、NCMの推進に寄与することが期待された。一方、各項目の実施率を高めるための啓発・研修等の実施が必要であると考えられる。
結論
障害者通所事業所において、やせ及び肥満の栄養障害の2重負荷ならびに摂食嚥下問題が一定の割合で存在することが明らかになった。
通所事業所利用障害児者の栄養・食事に関する課題に対応するためには、NCMの体制づくりが急務である。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-12-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201918012B
報告書区分
総合
研究課題名
障がい者が快適な日常生活を営むための食事提供等の実態把握及び改善手法の検証等のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-011
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
中村 丁次(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
研究分担者(所属機関)
  • 大和田 浩子(山形県立米沢栄養大学 健康栄養学部)
  • 藤谷 朝実(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 笹田 哲(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 田村 文誉(日本歯科大学 生命歯学部)
  • 行實 志都子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 杉山 みち子(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 高田 健人(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
  • 飯田 綾香(神奈川県立保健福祉大学 保健福祉学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者及び障害児(障害児者)が自立して快適な日常生活を営み、尊厳ある自己実現をめざすためには、一人ひとりの健康・栄養状態の維持・改善や食生活の質の向上を図る必要がある。平成25年度障害者総合支援法の再編により、障害者の地域支援体制が強化され、通所事業所は重要な支援拠点となったが、通所事業所に栄養ケア・マネジメント(NCM)は導入されていない。
本研究は、通所事業所利用障害児者の身体状況、栄養状態、食事時の徴候・症状に対応した個別の栄養ケア計画に基づく食事提供や食事支援の体制やあり方等に資することを目的とした。
研究方法
訪問インタビュー調査:障害児者の通所事業所(5か所)の管理者及びスタッフを対象にインタビュー調査を実施し、実態調査にあたり課題としてとりあげるべき内容を検討した(神奈川県立保健福祉大学研究倫理審査会承認番号:保大第71-55)。
事業所調査:障害児者の通所事業所(生活介護及び児童発達支援)における栄養障害(低栄養及び過剰栄養)や摂食嚥下障害の発生状況、事業所としてのその対応の実態、多職種による在宅で食べることの支援の状況を調査・検討した(保大第71-64)。
利用者個別調査:通所事業所利用障害児者における低栄養、過剰栄養、摂食嚥下障害の発生頻度と食事状況の実態、低栄養あるいは過剰栄養による入院発生や個別の自立支援目標の達成との関連、ならびに管理栄養士等の関わりや多職種によるミールラウンド等の関連について調査・検討した(保大第71-81)。
実施可能性調査:多職種により作成された通所事業所利用障害児者のための栄養アセスメント・モニタリングシート(AMS)試案の項目からデルファイ法を用いてコンセンサスを得た項目を選定し、チ-ムでのNCMへの活用について検討した(保大第17-67)。
結果と考察
訪問インタビュー調査:障害児者の通所事業所では、利用者一人ひとりの個別性が高く、食事・栄養に関する課題が多数存在していること、人員が限られていることもあり、多職種協働による障害児者の課題への対応の重要性が明らかとなった。
事業所調査:障害児者の通所事業所において、やせ及び肥満の栄養障害や摂食嚥下問題等がある利用者が一定の割合でいること、管理栄養士等と関わりがない事業所が多数あること、ミールラウンドを実施している場合でも管理栄養士の参加は非常に少ないことが明らかになった。
利用者個別調査:生活介護における「やせ」では摂食嚥下障害、「肥満」では生活習慣病の重度化が懸念された。児童発達支援においては、食事摂取量を含めた食べこぼし、偏食、丸呑み、年齢相応の摂食機能を獲得していない等の食事にかかわる課題が多く認められた。
実施可能性調査:AMS試案の項目からデルファイ法を用いてコンセンサスを得た項目を選定した。栄養専門職のASMでは5大項目35小項目、栄養以外専門職のASMでは6大項目小36項目(うち児のみ9小項目)が選定された。一方、これらの実施率は項目間で差が認められた。
障害者通所事業所(生活介護及び児童発達支援)において、やせ及び肥満の栄養障害の2重負荷が存在することが明らかになった。さらに、摂食嚥下問題がある利用者が一定の割合で存在していた。
生活介護における「やせ」では摂食嚥下障害、「肥満」では生活習慣病の重度化が懸念された。児童発達支援においては、食事摂取量を含めた食べこぼし、偏食、丸呑み、年齢相応の摂食機能を獲得していない等の食事にかかわる課題が多く認められた。
これらの課題に対応するには、管理栄養士等の役割は大きい。しかし、管理栄養士等と関わりがない事業所があること、関わりを望む事業所が少ないこと、管理栄養士等の雇用のある場合でも栄養状態を考慮した食事提供の課題が危惧された。
今後、通所事業所関係者へ管理栄養士の役割を啓発し、その重要性の意識を高める必要がある。さらに、通所事業所利用障害児者の栄養障害及び摂食・嚥下障害に対し、管理栄養士が積極的にミールラウンド等に参加できるNCMの導入を検討する必要がある。
また、本研究において、通所事業所利用障害児者の支援に関わる多職種によるコンセンサスを得て作成されたAMSは、今後の在宅障害児者の栄養障害に関わる問題把握に活用され、NCMの推進に寄与することが期待された。一方、各項目の実施率を高めるための啓発・研修等の実施が必要であると考えられる。
結論
障害者通所事業所において、やせ及び肥満の栄養障害の2重負荷ならびに摂食嚥下問題が一定の割合で存在することが明らかになった。
通所事業所利用障害児者の栄養・食事に関する課題に対応するためには、NCMの体制づくりが急務である。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-12-24
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201918012C

成果

専門的・学術的観点からの成果
通所事業所(生活介護・児童発達支援)の利用障害児者における「やせ」「肥満」の栄養障害の2重負荷、摂食嚥下機能低下、食事時に観察される徴候・症状の実態が初めて把握された。これらの課題に対応するには、管理栄養士による役割は大きい。しかし、管理栄養士と関わりがない事業所が半数以上を占め、関わりを望む事業所が少ないこと、管理栄養士等の雇用のある場合でも個別の栄養状態を考慮した食事提供が危惧され、栄養ケア・マネジメントの導入の必要性が明らかになった。
臨床的観点からの成果
通所利用障害者の「やせ」には、<20代若年><きざみ・軟菜食・嚥下調整食の提供><食事摂取6割以下><奥歯で噛みしめていない><食事中のむせ、咳き込み><口のなかの腫れ、痛み><食欲不振><食べこぼし>が把握され、<過去6か月間の入院>の割合が高かった。一方、「肥満」には、<生活習慣病><過食><早食い><丸呑み>が把握され、個々の特性に対応した多職種によるミ-ルラウンドを含めた栄養ケア・マネジメントの在り方が臨床的観点から明らかになった。
ガイドライン等の開発
本研究による上記の成果及び多職種によるコンセンサスを得て開発されたアセスメント・モニタリングシートにより、通所利用障害児者に対する栄養ケア・マネジメントの在り方のガイドラインの作成が可能となったことは、今後の在宅障害児者の栄養障害に関わる問題の早期把握と解決のための栄養ケア・マネジメントの推進に寄与するものである。
その他行政的観点からの成果
通所事業所利用障害児者の栄養障害の2重負荷のための早期スクリーニングやミ-ルラウンドを導入した新たな食事支援と食事提供の在り方についての栄養ケア・マネジメントの導入の必要性とその具体的な取り組みについての根拠の提示することができた。
その他のインパクト
本研究成果は、研究代表者の大学ホームページ掲載を通じて全国の関連事業所、職能団体における啓発教材に活用されることが期待できる。これらは、現在、施設間や養育者、また福祉職によってばらつきがみられる障害児者の個別の食事・栄養ケアに対する認識の格差を縮め、障害児者の健康維持やより豊かな日常生活を営むことに貢献するものである。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-

収支報告書

文献番号
201918012Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
3,000,000円
(2)補助金確定額
2,643,000円
差引額 [(1)-(2)]
357,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 876,878円
人件費・謝金 226,576円
旅費 290,163円
その他 750,297円
間接経費 500,000円
合計 2,643,914円

備考

備考
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、ノートパソコン(2台)の納品が研究年度内に行われなかった。同様に、2020年3月末に予定していた研究の総まとめであった全体会議(東京開催)が急遽中止になり、会議費及び旅費の支払いがなくなった。

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-