障害者虐待防止研修の効果的なプログラム開発のための研究

文献情報

文献番号
201918007A
報告書区分
総括
研究課題名
障害者虐待防止研修の効果的なプログラム開発のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 まゆみ(白梅学園大学 子ども学部発達臨床学科)
研究分担者(所属機関)
  • 内山登紀夫(大正大学心理社会学部臨床心理学科)
  • 野村政子(東都大学ヒューマンケア学部看護学科)
  • 手嶋雅史(椙山学園大学人間関係学部)
  • 曽根直樹(日本社会事業大学福祉マネジメント研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
1,300,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者虐待防止法施行後3年が経過した中で対応状況調査を通じてその実態が明らかになってきている。特に虐待防止センターへの通報やその対応など自治体の役割が重要であることが示唆された。こうした状況を受けて、これまで都道府県向けに開催してきた障害者虐待防止指導者養成研修の内容等の見直しが必要となっている。
本研究では、①市町村虐待防止センターの現状にニーズと課題の分析を行い、研修の効果やプログラムおよび啓発の在り方について調査・検討を行った。②福祉施設における障害者虐待防止・権利擁護の実施体制を有効に実施するためには、虐待防止委員会の設置と活用が求められており、その構造について検討を行った。③研修プログラムを有効に実施するための研修カリキュラム構造の検討と新たな視覚教材・実施方法の開発を行うことを目的とした。
研究方法
1)障害者虐待防止対策および障害者虐待防止センターの取組に関する調査
―全国市町村虐待防止センターの現状と課題から-
自治体が適切にその役割と責務を果たすためのカリキュラム構造を検討するため、全国市区町村の現状と課題を把握することを目的として、市区町村障害福祉担当部局を対象に調査を実施した。
全国の市区町村障害福祉担当部局1414か所を対象に調査を実施した。有効回答数は268(回収率19.0%)であった。
2)施設内虐待の防止に向けた調査と研修の組み立てに関する研究
障害者福祉施設従事者による障害者虐待の防止を組織的に進めるための方法を検討するため、障害者虐待防止の取り組みを組織的に進めている法人の担当者にインタビュー調査を実施し、組織的な虐待防止策について分析した。
調査対象は、「障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修」に協力している法人のうち、障害福祉サービス事業所において、障害者虐待防止の取り組みを組織的に進めているA法人及び、過去に虐待事案が発生し、それを契機に障害者虐待防止の取り組みを組織的に進めているB法人を調査対象とした。
3)障害者虐待防止研修の効果的なプログラムのためのカリキュラムおよび視覚教材の作成
①研修カリキュラムの骨子構造は、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課 地域生活支援推進室「市町村・都道府県における障害者虐待防止と対応の手引き」に沿って検討を行った。
②講義科目は都道府県における伝達研修を想定し、基本的な内容を正確に適切に伝えられるような内容として精査した。演習科目は、研修内容が実務にできるだけ反映するように、事例分析をしながら個別支援計画の記入方法を学び、支援方針の立て方を学習するものや、施設内における虐待防止委員会の計画運営や推進計画が作成されやすいような実務的なシート記入などを取り入れた。
結果と考察
本研究では、障害者虐待防止研修のプログラム開発にあたり、自治体が適切にその役割と責務を果たすためのカリキュラム構造とプログラムを検討するため、全国市町村の現状と課題を把握することとした。市町村虐待防止センターの現状にニーズと課題の分析を行い、研修の効果やプログラムおよび啓発の在り方について調査・検討を行うことが必要であることを明らかにした。
また、障害者福祉施設及び障害福祉サービス事業所(以下、障害者福祉施設等)という。)における障害者虐待防止の取り組みの実態を調査し、その結果に基づいて、厚生労働省の委託事業による「障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修」の障害者福祉施設従事者による障害者虐待防止のプログラムを、より効果的に行うことができるよう見直すことができた。
こうした調査研究の成果をもとに、障害者虐待防止研修の効果的なプログラムのために、研修カリキュラムおよび講義演習の視覚教材に関して検討と作成を行った。研修カリキュラムの骨子構造は、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課 地域生活支援推進室「市町村・都道府県における障害者虐待防止と対応の手引き」に沿って検討を行うこととした。また、研修に向けた資料や視覚教材の検討と作成を行い、都道府県における伝達研修を想定し、基本的な内容を正確に適切に伝えられるような内容として精査することした。
これにより障害者虐待防止のプログラムを、より効果的に行うことができるよう見直すことができた。
結論
今後、全国研修に活用しながら、研修プログラムの効果測定と新たな視覚教材・実施方法の開発を進めることが必要となろう。
本研究の成果が全国の都道府県市町村の虐待防止センター担当者、および福祉従事者の虐待防止委員会等に適切に伝達され、研修効果の均質化・標準化を進めることができるようになることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-11-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201918007B
報告書区分
総合
研究課題名
障害者虐待防止研修の効果的なプログラム開発のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-005
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 まゆみ(白梅学園大学 子ども学部発達臨床学科)
研究分担者(所属機関)
  • 内山登紀夫(大正大学心理社会学部臨床心理学科)
  • 野村政子(東都大学ヒューマンケア学部看護学科)
  • 手嶋雅史(椙山学園大学人間関係学部)
  • 曽根直樹(日本社会事業大学福祉マネジメント研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
障害者虐待防止法施行後3年が経過した中で対応状況調査を通じてその実態が明らかになってきている。特に虐待防止センターへの通報やその対応など自治体の役割が重要であることが示唆された。こうした状況を受けて、これまで都道府県向けに開催してきた障害者虐待防止指導者養成研修の内容等の見直しが必要となっている。
本研究では、①研修課題の分析を行い、②市町村虐待防止センターおよび福祉事業所の現状とニーズと課題の分析を行い、研修の効果やプログラムおよび啓発の在り方について調査・検討を行った。③福祉事業所における障害者虐待防止・権利擁護の実施体制を有効に実施するためには、虐待防止委員会の設置と活用が求められており、その構造について検討を行った。④研修プログラムを有効に実施するための研修カリキュラム構造の検討と新たな視覚教材・実施方法の開発を行うことを目的とした。
研究方法
1)研修受講者の評価および課題の調査
過去2年間の国研修を受講した受講者 700名を対象に分析した。
2)全国の都道府県が行った障害者虐待防止指導者養成研修プログラムのアンケート調査と研修分析
全国の都道府県の虐待防止研修担当部署(47か所)に対し、研修課題に関するアンケート調査、および過去の研修プログラムと研修資料の収集を依頼した。
3)区市町村の虐待防止センターおよび都道府県の権利擁護センターに対するヒアリング調査
効果的であると思われる受理システムやバックアップシステムを実施している区市町村・都道府県を8か所、抽出し、ヒアリング調査を実施した。
4)事業所における虐待防止委員会の設置状況に関する調査(第一次)
全国の事業所1000か所に対し、虐待防止委員会の設置状況に関する調査を行った。
5)「不適切な対応」「性的虐待」に関する事例の収集
不適切な対応や性的虐待について事業者や法人および保護者に協力を得て事例収集と分析を行った。
6)障害者虐待防止対策および障害者虐待防止センターの取組に関する調査
全国の市区町村障害福祉担当部局1414か所を対象に調査を実施した。有効回答数は268(回収率19.0%)であった。調
7)施設内虐待の防止に向けた調査と研修の組み立てに関する研究
障害者虐待防止の取り組みを組織的に進めている法人の担当者にインタビュー調査を実施し、組織的な虐待防止策について分析した。
8)障害者虐待防止研修の効果的なプログラムのためのカリキュラムおよび視覚教材の作成 
研修カリキュラムの骨子構造は、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課 地域生活支援推進室「市町村・都道府県における障害者虐待防止と対応の手引き」に沿って検討を行った。研修カリキュラムを効果的に実施するための視覚教材の検討と作成を行った。
結果と考察
本研究では、障害者虐待防止研修のプログラム開発にあたり、自治体が適切にその役割と責務を果たすためのカリキュラム構造とプログラムを検討するため、全国市町村の現状と課題を把握することとした。市町村虐待防止センターの現状にニーズと課題の分析を行い、研修の効果やプログラムおよび啓発の在り方について調査・検討を行うことが必要であることを明らかにした。
また、障害者福祉施設及び障害福祉サービス事業所(以下、障害者福祉施設等)という。)における障害者虐待防止の取り組みの実態を調査し、その結果に基づいて、厚生労働省の委託事業による「障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修」の障害者福祉施設従事者による障害者虐待防止のプログラムを、より効果的に行うことができるよう見直すことができた。
こうした調査研究の成果をもとに、障害者虐待防止研修の効果的なプログラムのために、研修カリキュラムおよび講義演習の視覚教材に関して検討と作成を行った。研修カリキュラムの骨子構造は、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課 地域生活支援推進室「市町村・都道府県における障害者虐待防止と対応の手引き」に沿って検討を行うこととした。また、研修に向けた資料や視覚教材の検討と作成を行い、都道府県における伝達研修を想定し、基本的な内容を正確に適切に伝えられるような内容として精査することした。
これにより障害者虐待防止のプログラムを、より効果的に行うことができるよう見直すことができた。
結論
.結論
今後、全国研修に活用しながら、研修プログラムの効果測定と新たな視覚教材・実施方法の開発を進めることが必要となろう。
本研究の成果が全国の都道府県市町村の虐待防止センター担当者、および福祉従事者の虐待防止委員会等に適切に伝達され、研修効果の均質化・標準化を進めることができるようになることを期待したい。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表

公開日・更新日

公開日
2020-11-25
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201918007C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、都道府県や市町村の虐待防止センター、福祉事業所が抱える現実的な実践課題について、研究テーマごとに5つの質問紙調査や聞き取り調査を実施し、客観的なデータから検討を行った。研修カリキュラムをデータ根拠により効果的および構造的に構築できた点は、学術的な成果である。またデータ分析においても、量的分析のみでなく、インタビュー調査で得られた言及内容を質的研究方法によりカテゴリー抽出を行うなど、近年の新しい研究手法により分析するなど専門的成果を出すことができた。
臨床的観点からの成果
①虐待に至るまえの不適切な対応事例、および顕在化しにくい性的虐待の事例分析を行うことにより、無意識に起こしている権利侵害の対応や保護介入主義的な対応方法の中に、虐待の芽が潜在していることを示した。虐待を未然に防ぎ適切な対応を行うための実践的エビデンスを得ることができた。②福祉事業所において虐待防止対策が進みにくい点として、1年目に虐待防止委員会の未設置の問題を調査により明らかにし、2年目には虐待防止委員会の計画的な運用に関して具体的な提言ができた点、は臨床的な成果である。

ガイドライン等の開発
障害者虐待防止研修の効果的なプログラムのために、研修カリキュラムおよび講義演習の視覚教材に関して検討と作成を行った。研修カリキュラムの骨子構造は、厚生労働省 社会・援護局 障害保健福祉部障害福祉課 地域生活支援推進室「市町村・都道府県における障害者虐待防止と対応の手引き」に沿って検討し、実務的な研修とすることができた。研修に向けた資料や視覚教材の検討と作成を行い、都道府県における伝達研修を想定し、基本的な内容を正確に適切に伝えられるような内容として精査することができた。
その他行政的観点からの成果
厚生労働省の委託事業による「障害者虐待防止・権利擁護指導者養成研修」(国研修)において、都道府県・市町村の虐待防止センター担当者および障害者福祉施設管理者・従事者に向けて、効果的であり構造的な研修カリキュラムと伝達研修として活用できる視覚教材一式を提出できたことは、行政的な成果である。本カリキュラムと視覚教材一式はそのまま、各都道府県や全国各地の福祉事業所において活用することができるようになっている。このことにより、障害者虐待防止に向けて全国的に標準的な取り組みを啓発することができる。
その他のインパクト
全国的に、身体拘束の問題が各地で大きく取り上げられている。第三者委員会で津久井やまゆり園が従来行われてきた不必要な身体拘束に対して指摘をされ虐待が疑われているという報道やほか、監禁などの事例も近年指摘されてきている。本研究での研修カリキュラムや視覚教材の作成においては、こうしたマスコミで取り上げられる身体拘束事例に対して、どのように対応すればいいかなども丁寧に扱っている。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2020-11-25
更新日
-

収支報告書

文献番号
201918007Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
1,500,000円
(2)補助金確定額
1,500,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 616,024円
人件費・謝金 33,411円
旅費 327,434円
その他 324,797円
間接経費 200,000円
合計 1,501,666円

備考

備考
研究遂行上、必要な物品費が、配分された研究費を若干超過したため、差額の1666円について、自己資金で支出した。

公開日・更新日

公開日
2024-03-26
更新日
-