発達障害の原因,疫学に関する情報のデータベース構築のための研究

文献情報

文献番号
201918004A
報告書区分
総括
研究課題
発達障害の原因,疫学に関する情報のデータベース構築のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 土屋 賢治(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター)
  • 篠山 大明(信州大学 学術研究院医学系)
  • 内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部)
  • 野見山 哲生(信州大学 学術研究院医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究費
8,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,発達障害の原因や疫学に関する国内外の調査・研究等の収集と分析を行い,継続的に情報を蓄積・公表していくためのデータベースの仕組みを提案することである。
研究方法
以下の調査・研究を行った。
(1)原因に関する調査・研究の収集および分析(土屋)
(2)発達障害の疫学に関する情報の収集および分析(篠山)
(3)成人の発達障害に関する調査・研究の収集と分析(内山)
(4)地域において発達障害・知的障害の子どもの実態を定期的に把握する情報データベース構築に関するヒアリング調査(本田,野見山,篠山)
結果と考察
(1)自閉スペクトラム症(ASD)発症の原因候補(危険因子)として十分なエビデンスがあるものは,母の高年齢,母体の妊娠高血圧症候群,母体の過体重,胎生期抗うつ薬曝露,胎生期アセトアミノフェン曝露,父の高年齢であった。一方注意欠如・多動症(ADHD)発症の危険因子として一定以上のエビデンスレベルのあるものは見いだされなかった。
 発達障害の原因に関する情報を求める声は多いため,メタアナリシスによって得られたエビデンスリストをしかるべきウェブサイトにアップロードすれば,一定のニーズを充足することができる。エビデンス収集を業務とする人員を確保し,データベースを維持していくことが望まれる。
(2)長野県岡谷市で1歳半健診を受けた児1,067名のうち33名が,就学時までにASDの診断を受けていた。
 保険診療情報が格納されたナショナルデータベースのオープンデータを用いた知的能力障害,ASD,ADHDに対する年度ごとの都道府県,性,年齢階級の3次元集計表の作成について,レセプト情報等の提供に関する申出が承諾されており,データの提供は2020年9月頃を予定している。
 乳幼児健康診査と医療機関のデータを用いる調査では,調査地域における正確な有病率および発生率の算出やリスク因子の同定が可能である反面,既存の情報をデータベース化するためのシステム作りが必要である。保険診療情報を用いる疫学調査では,簡便に全国規模の有病率調査が実施できる可能性がある反面,診断名の不正確さ,居住地情報の欠如,海外流出,国内流入の未把握,患者IDの不確定など,データベースの限界を踏まえた上での解釈が必要である。
(3)知的障害のないASDの成人131名にM.I.N.I精神疾患簡易構造化面接を行い,77名の合併診断があり,不安障害群,抑うつ障害群が多かった。最も頻度が高かったのは全般性不安障害であった。現在のQOLはFIQ,PARS現在得点との相関は認められず,過去の逆境体験、レジリエンスと相関があった。M.I.N.I診断数は自閉症特性の強さより合併するADHD特性、過去の逆境体験やレジリエントな体験と相関していた。男性の方がQOLの平均値が高く,女性の方が併存疾患数やACEが有意に高かった。総じて女性のQOLのほうが低かった。
 ASDおよび統合失調症の成人の健康関連QOLは日本の国民標準値より低く,ASDの成人は統合失調症の成人よりも「社会生活機能」が有意に低かった。ICFを用いて測定した生活機能は,ASDおよび統合失調症では定型発達の成人より生活のしづらさを抱えていた。
 毎日新聞社生活報道部と発達障害当事者協会による調査では,定型発達の人に比べてASDやADHDの成人では精神疾患などが高頻度で合併しており,診断ではASDとADHDの合併群が,性別では女性の方が精神疾患や身体疾患を合併する割合が高かった。
(4)全国の12市の医療・保健・福祉・教育担当者に行ったヒアリング調査から,定期的に発達障害の実態を観測してデータを集約する仕組みを構築することは,支援ニーズを把握して施策の根拠とする意義があると思われた。
 一方で,共通の基準を用いた標準的な実態把握の手法の開発,個人情報保護,本人および保護者への説明などの課題があることが示された。
結論
・ASDについては,ある程度のエビデンスレベルの知見が出されているが,ADHDはエビデンスレベルが不明な知見のみであった。
・わが国では乳幼児健診を拠点とした疫学調査や保険診療情報を用いた発達障害の実態を定期的に蓄積できる可能性があることが示された。
・成人期の発達障害に関する研究は児童期に比してまだ少ないが,成人期特有の問題,特に他の精神疾患の合併に注目する必要があることが示された。
・定期的な実態調査は支援ニーズの把握や施策の根拠となる点で意義があるが,業務負担や個人情報保護などに課題があることが示された。文部科学省などがすでに毎年行っている実態調査を活用しながら,新たな調査の枠組みを作っていくことが望ましいと思われた。
・発達障害について信頼のおける情報データベースを構築し,維持するためには,相応の専門性のある人材と専属の部署が必要である。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

文献情報

文献番号
201918004B
報告書区分
総合
研究課題
発達障害の原因,疫学に関する情報のデータベース構築のための研究
課題番号
H30-身体・知的-一般-002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
本田 秀夫(信州大学 学術研究院医学系)
研究分担者(所属機関)
  • 土屋 賢治(浜松医科大学 子どものこころの発達研究センター)
  • 篠山 大明(信州大学 学術研究院医学系)
  • 内山 登紀夫(大正大学 心理社会学部)
  • 野見山 哲生(信州大学 学術研究院医学系)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 障害者政策総合研究
研究開始年度
平成30(2018)年度
研究終了予定年度
令和1(2019)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は,発達障害の原因や疫学に関する国内外の調査・研究等の収集と分析を行い,継続的に情報を蓄積・公表していくためのデータベースの仕組みを提案することである。
研究方法
2年間で以下の研究を行った。
(1)疾患・障害の情報データベースに関する先行事例の実態調査(本田,野見山,篠山)
(2)原因に関する調査・研究の収集および分析(土屋)
(3)発達障害の疫学に関する情報の収集および分析(篠山)
(4)成人の発達障害に関する調査・研究の収集と分析(内山)
(5)国内の複数の拠点における発達障害の定点観測システムの構築に関する研究(本田)
(6)学校における発達障害の支援ニーズ把握のシステム化の方法論の検討(本田)
(7)地域において発達障害・知的障害の子どもの実態を定期的に把握する情報データベース構築に関するヒアリング調査(本田,野見山,篠山)
結果と考察
(1)アメリカの疾病予防管理センター(CDC)のウェブサイトは,自閉スペクトラム症(ASD),注意欠如・多動症(ADHD),トゥレット症,神経発達症全体について,研究や統計に関するページを含んでいる。国立がん研究センターがん情報提供部では,がんに関連する情報や支援プログラムの作成,活用支援,普及/均てん化に関する活動を行っており,「がん登録・統計サイト」ではがん登録の情報が公開されている。
(2)ASD,ADHDの病因研究の両方に共通して,①論文の絶対数が経年的に増えている,②従来の主役であった遺伝学的研究や心理学的研究から神経科学的研究が主流になりつつあることがわかった。ASD発症の原因候補(危険因子)として十分なエビデンスがあるものは,母の高年齢,母体の妊娠高血圧症候群,母体の過体重,胎生期抗うつ薬曝露,胎生期アセトアミノフェン曝露,父の高年齢であった。ADHD発症の危険因子として一定以上のエビデンスレベルのあるものはなかった。
(3)ADHDの有病率に関して明らかな増加を示しているエビデンスはないが,ASDの有病率に関しては世界的に著しい増加が示された。長野県岡谷市で1歳半健診を受けた児1,067名のうち33名が就学時までにASDの診断を受けていた。保険診療情報が格納されたナショナルデータベースのオープンデータを用いた知的能力障害,ASD,ADHDに対する年度ごとの都道府県,性,年齢階級の3次元集計表の作成について,レセプト情報等の提供に関する申出が承諾された。
(4)文献レビューより,①地域をベースにした成人発達障害の疫学調査は海外においても少ないこと,② 精神科病院や司法施設における疫学調査が重視されていること,③精神科合併症についての議論が増大していること,④老年期の発達障害について関心が高まっていることなどが明らかになった。知的障害のないASDの成人131名にM.I.N.I精神疾患簡易構造化面接を行い,77名の合併診断があり,不安障害群,抑うつ障害群が多かった。最も頻度が高かったのは全般性不安障害であった。現在のQOLはFIQ,PARS現在得点との相関は認められず,過去の逆境体験、レジリエンスと相関があった。ASDおよび統合失調症では定型発達の成人より生活のしづらさを抱えていた。
(5)国内13市を対象に疫学調査を行った。うち12市は,共通のデザインで小学1年生から6年生までの縦断的な疫学データの推移をみることができた。
(6)発達障害に関する実態調査を毎年行っている長野県教育委員会にインタビュー調査を行った。また,全国連合小学校長会に連絡をとり,同会の資料を入手し,分析した。
(7)全国の12市の医療・保健・福祉・教育担当者にヒアリング調査を行った。定期的な実態調査が支援ニーズの把握や施策の根拠となる点で意義があるとの回答を得た一方で,業務負担や個人情報保護などに課題があることが示された。
結論
・発達障害に関する情報データベースは,国内外ともにまだ十分に整えられてはいないが,米国のCDCおよび国立がんセンターは参考になると思われた。
・ASDについてはある程度のエビデンスレベルの知見が出されているが,ADHDはエビデンスレベルが不明な知見のみであった。
・わが国では乳幼児健診を拠点とした疫学調査や保険診療情報を用いた発達障害の実態を定期的に蓄積できる可能性があることが示された。
・成人期の発達障害に関する研究は児童期に比してまだ少ないが,成人期特有の問題,特に他の精神疾患の合併に注目する必要があることが示された。
・学校における実態については,文部科学省がすでに毎年行っている実態調査を活用しながら,新たな調査の枠組みを作っていくことが望ましいと思われた。

公開日・更新日

公開日
2020-11-16
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

行政効果報告

文献番号
201918004C

収支報告書

文献番号
201918004Z