文献情報
文献番号
201917010A
報告書区分
総括
研究課題名
人工知能を活用した行動・心理症状の予防と早期発見、適切な対応方法を提案する認知症対応支援システムの開発と導入プログラムに関する研究
課題番号
19GB1003
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
小川 朝生(国立研究開発法人国立がん研究センター 先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野)
研究分担者(所属機関)
- 平井 啓(大阪大学 人間科学研究科 )
- 奥村 泰之(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
- 谷向 仁(京都大学 大学院医学研究科)
- 高橋 晶(筑波大学 医学医療系 災害地域精神医学)
- 中西 三春(公益財団法人東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野)
- 井上 真一郎(岡山大学 大学病院 )
- 上村 恵一(独立行政法人国立病院機構北海道医療センター 精神科)
- 深堀 浩樹(慶應義塾大学 看護医療学部 )
- 榎戸 正則(国立がん研究センター東病院 精神腫瘍科)
- 竹下 修由(国立がん研究センター東病院 大腸外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
13,077,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、全国の認知症ケアチーム・緩和ケアチームによる認知症高齢者への評価・対応を学習モデルとした人工知能を開発し、有効性の検証された教育プログラムと安全な運用プログラムとあわせて検証・実装することにより、病院を中心とする看護・介護の現場での認知機能の低下やせん妄の予防・早期発見、行動心理症状への適切な対応方法を確立する点にある。
認知症高齢者の多くは、身体的問題を持ちつつ過ごしている。そのため、認知機能の低下や行動心理症状の評価・対応を行う上で、身体疾患やせん妄、痛み等の身体的苦痛、薬剤を含めた評価が必要である。しかし、包括的な評価と判断は臨床経験に基づく個別判断が中心で、手法が確立していない現状がある。後期高齢者の増加を迎え、認知症高齢者の行動的な変化と共に、身体的な治療や身体症状の変化をとらえ、精神症状や薬物とあわせて評価判断する専門的知識と臨床経験の普及が緊急の課題である。
認知症高齢者の多くは、身体的問題を持ちつつ過ごしている。そのため、認知機能の低下や行動心理症状の評価・対応を行う上で、身体疾患やせん妄、痛み等の身体的苦痛、薬剤を含めた評価が必要である。しかし、包括的な評価と判断は臨床経験に基づく個別判断が中心で、手法が確立していない現状がある。後期高齢者の増加を迎え、認知症高齢者の行動的な変化と共に、身体的な治療や身体症状の変化をとらえ、精神症状や薬物とあわせて評価判断する専門的知識と臨床経験の普及が緊急の課題である。
研究方法
1. 認知症ケアチーム・病棟看護師に対するAI支援システムの開発
1) 深層学習教師データの収集を目指した認知症ケアチーム症例レジストリの構築 認知症の人の一般診療場面における身体症状・精神症状評価とそれに対応した介入・支援とその結果を包括的に収集し、機械学習に向けた症例レジストリを構築する。具体的には、認知機能低下、せん妄の予防・早期発見と対応、行動心理症状の対応を主たる標的とする。
認知症ケアチームを経験する専門医、老年看護・精神看護の専門家、介護専門職、AI技術開発チームによるパネルを作り、わが国の急性期医療における認知症対応の実態把握を行う。
特にせん妄・BPSDに関しては実態把握と併せて、AI視線システムの開発を行う。
AI開発は、AI機器開発の臨床研究の実績のある国立がん研究センター東病院NEXT臨床研究推進チームの協力を得る。
2. AIシステム支援を導入した一般病棟での認知症対応プログラムの試行
AI支援システムと、教育プログラムを連携させ、効果的なケアを実践するための運用プログラムを開発しその有効性を検討する。
1) 多職種による教育プログラムの効果検証
すでに開発済みである多職種教育プログラムの効果検証を行う。同時に教育後の実装過程を質的に評価し、運用上の課題を抽出し、AI支援システムの課題設計に反映させる。
1) 深層学習教師データの収集を目指した認知症ケアチーム症例レジストリの構築 認知症の人の一般診療場面における身体症状・精神症状評価とそれに対応した介入・支援とその結果を包括的に収集し、機械学習に向けた症例レジストリを構築する。具体的には、認知機能低下、せん妄の予防・早期発見と対応、行動心理症状の対応を主たる標的とする。
認知症ケアチームを経験する専門医、老年看護・精神看護の専門家、介護専門職、AI技術開発チームによるパネルを作り、わが国の急性期医療における認知症対応の実態把握を行う。
特にせん妄・BPSDに関しては実態把握と併せて、AI視線システムの開発を行う。
AI開発は、AI機器開発の臨床研究の実績のある国立がん研究センター東病院NEXT臨床研究推進チームの協力を得る。
2. AIシステム支援を導入した一般病棟での認知症対応プログラムの試行
AI支援システムと、教育プログラムを連携させ、効果的なケアを実践するための運用プログラムを開発しその有効性を検討する。
1) 多職種による教育プログラムの効果検証
すでに開発済みである多職種教育プログラムの効果検証を行う。同時に教育後の実装過程を質的に評価し、運用上の課題を抽出し、AI支援システムの課題設計に反映させる。
結果と考察
本年度は、わが国の急性医療における認知症対応の実態把握をDPCデータからすすめるのとあわせて、現状把握の方向性を専門家パネルで検討した。DPCデータより、認知症を有する患者は、認知症を有しない患者と比較して、退院時ADLが有意に低いこと、その背景に身体拘束も一因であることが明らかとなり、急性期医療においてADLの低下を防ぐための介入を開発する必要性が高いことが示唆された。
あわせて、認知症と併発することの多いせん妄に対する介入を進展させるために、AIシステムを用いたせん妄発症予測が可能かどうかの検討を開始した。
AIシステムを含めて、最終的には教育をあわせた臨床介入により診療の質の向上を図る必要がある。わが国においては認知症ケアに関する教育効果で確立したものがなかった。しかし、われわれの開発した行動科学の手法を用いた教育プログラムは、3時間の短時間介入ながら、3ヶ月後にも有意な知識の増加と自信の増加を認めた。今後、アウトカムへの影響についても検討を進める予定である。
あわせて、認知症と併発することの多いせん妄に対する介入を進展させるために、AIシステムを用いたせん妄発症予測が可能かどうかの検討を開始した。
AIシステムを含めて、最終的には教育をあわせた臨床介入により診療の質の向上を図る必要がある。わが国においては認知症ケアに関する教育効果で確立したものがなかった。しかし、われわれの開発した行動科学の手法を用いた教育プログラムは、3時間の短時間介入ながら、3ヶ月後にも有意な知識の増加と自信の増加を認めた。今後、アウトカムへの影響についても検討を進める予定である。
結論
本年度は急性期医療における認知症対応の実態把握をすすめながら、AIシステムの応用可能性、臨床介入の効果検証を行った。その結果、急性期医療において入院中のADL低下を防ぐための介入の必要性を明らかにした。今後、AIシステムを用いたせん妄の発症予測システムの開発を進め、臨床介入に組み込み、効果検証を進める予定である。
公開日・更新日
公開日
2020-07-14
更新日
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