認知症介護者のためのインターネットを用いた自己学習および支援プログラムの開発と有効性の検証

文献情報

文献番号
201917009A
報告書区分
総括
研究課題名
認知症介護者のためのインターネットを用いた自己学習および支援プログラムの開発と有効性の検証
課題番号
19GB1002
研究年度
令和1(2019)年度
研究代表者(所属機関)
大町 佳永(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部)
研究分担者(所属機関)
  • 横井 優磨(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部 )
  • 菅原 典夫(獨協医科大学 精神神経医学講座)
  • 山下 真吾(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部 )
  • 野崎 和美(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 看護部)
  • 松井 眞琴(国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター 病院 第一精神診療部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症政策研究
研究開始年度
令和1(2019)年度
研究終了予定年度
令和3(2021)年度
研究費
13,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
The World Health Organization(WHO)によって、介護者の知識や技術の向上、精神的ストレスの軽減、認知症の人と介護者双方の生活の質の向上を目指し、iSupportが開発された。iSupportは、問題解決技法および認知行動療法の技術を用いたオンライン自己学習支援プログラムであり、パソコン等から簡単にアクセスすることが可能である。WHO’s Mental Health Gap Action Programmeによるエビデンスに基づいた認知症介護者のためのガイドラインに準拠して作成されており、5つの章(第1章 認知症について、第2章 介護者であるということ、第3章 自分をいたわる、第4章 日常生活の介護、第5章 周囲を困らせる行動への対処)から構成されている。本研究では、日本の文化や介護環境等を考慮し日本語化したiSupport日本版を作成し、フォーカスグループによる試用評価の後に完成させ、ランダム化比較試験(RCT)を実施することで、iSupport日本版の有効性を検証することを目的とする。
研究方法
まず、日本の介護環境や制度等に合致するよう翻訳したiSupportの見直しを行い、iSupport日本版を開発する。認知症の人を介護している家族と、医療・介護の専門家等により構成される2つのフォーカスグループにおいて、iSupport日本版のパイロット版を試用・評価し、プログラムを完成させる。RCTを実施し、iSupport日本版の有効性を検証する。本研究は、公益社団法人認知症の人と家族の会、国立精神・神経医療研究センター「オレンジ(認知症)カフェ」、小平市地域包括支援センター等の協力のもとで行う。国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターと連携し、認知行動療法の技術を用いた項目について助言を得る。適宜、WHOに進捗と結果を報告する。
結果と考察
本年度は、iSupportの著作権契約をWHOと国立精神・神経医療研究センターとの間で正式に締結した。日本の介護環境や制度等に合致するよう、さらにiSupport日本版の内容の見直しを行った。リラクセーションのためのストレッチ等については、オリジナルでは文章だけであったが、利用者にとってわかりやすく飽きさせないものにするために、iSupport日本版独自のコンテンツとして動画や音声等を収録した。当初はWHOが提携している海外のサーバーを利用する予定であったが、動画や音声などのコンテンツが利用できないこと等が明らかとなったため、iSupport日本版(e-learning)に、心理評価やアンケート調査を行うシステム(ePRO)、個人情報管理システムを合わせたiSupport-Jシステムを作成した。被験者である認知症介護者及び被介護者のプライバシーへの配慮と共に、データの安全管理や漏洩対策を行う必要があるため、iSupport-Jシステムの開発と保守管理は、各種臨床研究支援とITシステム導入支援の実績がある企業に委託することとした。WHO主催のもとで開催された世界各国のiSupport研究チームとのweb会議に参加し、研究の進捗状況やRCTのデザイン等について情報共有した結果、対照群に割り付けられてもiSupportを使用することができるよう、ウェイティングリスト・コントロール・デザインに変更することとした。ウェイティングリスト群に割り付けられた場合、一定期間は心理評価とアンケート調査のみを受けることになるが、脱落率を減らすためには、その期間を可能な限り短縮することを検討する必要があると考えられる。このため、RCTを開始する前に、プロトコールについて更なる見直しを行う予定である。尚、当初の計画で対照群に電子書籍として配信予定であった『認知症の人と家族のケアのために』(原題:Help for care partners of people with dementia)は、翻訳したものを冊子としてインターネット環境のない介護者に配布することとした。RCTの評価尺度については、主要評価項目は介護負担度(Zarit介護負担尺度日本語版)、副次評価項目は介護肯定感、抑うつ症状、不安、介護者のパーソン・センタード・ケアの意識、QOL、アプリケーションの満足度、アンケートで聴取する社会資源利用の変化等とすることにした。
結論
iSupport日本版を作成することにより、家族等の認知症介護者が効率的に知識と技術を習得することを目指すと共に、孤立している家族等が認知症の専門医療機関や相談窓口、介護サービスなどの社会資源にアクセスするのを促進することが期待される。また、COVID-19感染予防のため、他者との接触を可能な限り減らさざるを得ない状況下で、インターネットを用いたツールは非常に有用と考えられる。

公開日・更新日

公開日
2020-08-04
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究成果の刊行に関する一覧表
倫理審査等報告書の写し

公開日・更新日

公開日
2020-08-04
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

収支報告書

文献番号
201917009Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
17,550,000円
(2)補助金確定額
17,473,000円
差引額 [(1)-(2)]
77,000円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,315,366円
人件費・謝金 329,315円
旅費 174,382円
その他 9,604,302円
間接経費 4,050,000円
合計 17,473,365円

備考

備考
「補助金対象経費実支出額」が千円未満の端数切り捨てのため、差額365円を自己資金より負担した。

公開日・更新日

公開日
2020-11-20
更新日
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